第46話 高級食材ヤマイモ

 俺たちは、森の中を探索していた。


 目当ての食材を見つけるまで時間がかかる可能性があるので、全員、オヤツとして、リンゴを囓っている。


「リンゴ、美味しいにゃ♪」

「シャクシャクした歯ごたえが最高なの♪」


 フローラとミネルヴァの食いしん坊コンビが笑顔でリンゴを囓っている。

 幸せそうだ。


 俺もつられて微笑む。

 なんか、林檎を囓りながらの森の散歩って気持ちが良いな。


 天気も良いし。

 風も心地良い。


 歩くと筋肉痛で痛いが、軽く運動した方が、早く回復するしな。

 俺たちは和気あいあいとした雰囲気で、森の散歩を楽しみながら、食材を探した。 


 30分後。

 お目当てのモノが見つかった。


「ん。師匠。もしかしてこれでは?」


 エルフリーデが、指さす。


「ああ、間違い。ヤマイモだ」


 細長い細長いハート型の葉っぱが生えたツルがあった。


「ここを掘ればよろしいのですね?」


 ルイズが、腕まくりをする。

 細くて綺麗な二の腕があらわになった。


「ん。土を掘るのが面倒。魔法で地面を吹き飛ばす?」

「にゃー!! ダメだよ、エルフリーデ! 地中に埋まっているヤマイモまで吹き飛ぶにゃー!!」


 フローラが、慌てて止める。


 いや、下手をすると、ヤマイモが吹き飛ぶどころか、また火炎地獄の再来になりかねない。


 あの地獄絵図だけは、もうゴメンだ。 


「地道に掘ろう」


 俺は無限収納のカバンから、スコップを取り出した。


 全員で掘ると逆に作業効率が悪いので、俺とルイズだけで地面を掘る。 自分でいうのもなんだが、俺もルイズも力が強いので、軽々と地面を掘り、すぐにヤマイモを地中から取り出せた。


「わあっ、けっこう。大きいにゃー♪」

「太くて、細長いの。見た目が美味しそうなの♪」


 フローラとミネルヴァが目を輝かせる。

 二人の言うとおり、中々、良いヤマイモだ。


 長さが1メートル程もある。

 大当たりだ。

 さて、料理をはじめるか。









 俺たちは森から出て宿営地にむかった。

 ミネルヴァが、俺になついて手を握ってきた。

 俺はミネルヴァと手を繋ぎながら森の中を歩く。


「ご飯が楽しみなの♪」


 ミネルヴァが、鼻歌を歌う。

 楽しそうだ。

 だが、少し聞かないといけない事がある。


「なあ、ミネルヴァ」

「なに? お兄ちゃん?」


 ミネルヴァが、純粋無垢な笑顔で俺を見上げる。


 俺は心配している事がある。

 ミネルヴァは、200年間も監禁されていた。

 普通の人間なら、トラウマになり、精神が壊れているだろう。


 はたして、ミネルヴァは大丈夫だろうか?


 叔父さんからの受け売りや、本で得た知識しかないが、精神的な苦しみがあるなら、癒やしてやりたい。


 もし、心の病の専門家が必要なら、見つけてやるつもりだ。


「よく眠れたか?」

「はいなの♪」


 嘘をついているようには見えない。

 熟睡できたらしい。


「怖い夢とか見なかったか?」

「楽しい夢を見たの♪」

「どんな夢なんだ?」

「お兄ちゃんやお姉ちゃん達と冒険する夢。世界中を旅するの♪」

「そうか」


 ミネルヴァが、屈託の無い笑みを咲かせる。


「ミネルヴァは可愛いにゃ♪」


 フローラが、ミネルヴァの赤髪の頭を撫でる。


「そうですね。外の世界を沢山見ましょう」

「ん。エルフリーデお姉さんが、案内してあげる」


 ルイズとエルフリーデが言う。


「精神的に苦しかったりしないか?」

「せいしんテキ?」

「心が苦しくないかって事だ」


 俺が、心配しながら問う。


「全然ないの♪ カインお兄ちゃんたちに会えたから、ハッピーなの♪」


 ミネルヴァが、俺の手に頬を擦り寄せた。       


「そうか……」


 どうやら、天竜族は肉体だけでなく、精神もタフなようだ。

不老不死の天竜族と、俺のような人間族だと、やはり違うものがあるのかな?


 とりあえず、今の所、ミネルヴァは大丈夫そうだ。

ミネルヴァは、とても良い子だ。


 こういう子は、幸福になって欲しい。

 いや、ミネルヴァだけじゃない。


 ルイズ、フローラ、エルフリーデ。

 俺の仲間は、みんな善良で良い子たちばかりだ。


  彼女たちの幸福に、少しでも貢献できるよう、もっと強く、もっとしっかりとした男になりたい。

 そう思った。


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