第45話 裸体

 朝。 

 テント内に朝日が差し込んでいた。 


 意識が眠りの世界から、現実の世界に移っていく。

 瞼をうっすらと開けた。


 ミネルヴァが、一糸まとわぬ裸体のままで、俺にべったりと、おおい被さっていた。


 スヤスヤと心地良さそうに寝ている。

 わずかに身じろぎすると、ミネルヴァがパチリと目を開けた。


「あ、お兄ちゃん♪ おはようなの♪」


 俺に微笑をむけると、まだ少々眠たいらしく、瞼をこすっている。

 そして、もそりと起き上がり、俺の胸の上にまたがった。

 そして、ふわぁ~っと欠伸をする。


 毛布がズリ落ちて、ミネルヴァの裸体が俺の目に映り込む。


 10歳ほどの外見の少女の裸身は、芸術品のように美しかった。

 シミもホクロもない、真っ白な雪のような肌。

 朝日で、輝いた裸身は、光り輝く宝石のようだ。


 まだ幼い少女なので、官能性は感じないが、綺麗だな、と思った。


 いや、ダメだ。ダメだ。

 小さくても、一応は女の子だ。見るのは失礼だ。

 俺は目をかたく閉じた。


「ミネルヴァ、すまない。身体を隠してくれ」

「? なんでなの?」


 その答えは予想外だ。


「ミネルヴァは一応、女の子だから。あんまり裸体を男に見せたらダメだ」


 俺は父親が、娘に注意するような口調で言う。


「? 私は見られても気にしないの。それにスッポンポンの方が気持ちが良いの♪」


 困った。


 これは俺の手に余るかもしれない。


 俺は、左右でまだ寝ているフローラ、エルフリーデ、ルイズを起こすことにした。

 女性陣の助けが必要だ。


 全員、麗しい下着姿なので、目のやり場に困りながら、女性たちを起こした。


 起床したルイズに、事情を説明すると、お母さんのような口調で、ミネルヴァを説得した。


 本当にルイズは頼りになる。

 フローラ、エルフリーデは、


「にゃー♪ 確かに裸で寝ると気持ち良いよね♪」

「ん。今夜は全裸で寝る」


 と言っていたから頼れない。





 







 その後、着替え終わると、馬に飼い葉と水を与えた。

 そして、馬車の点検をする。


 レンタルした馬たちは元気で、馬車にも故障はない。

 よし。

 王都に帰る前に、朝食にするか。


 いや、これから作るから、時間的にはもう昼食か。


 俺は、自分の右手の手の平を開閉させたり、腕を回したりして、回復具合を測った。


 全快を100とすると、20程度しか回復していない。

 でも、料理くらいはできる。


「何か食べたいものはあるか? 料理ができる程度には、回復したから俺が作るぞ?」

「先生が、作って下さるものなら、なんでも食べます」


 ルイズが、即答する。

 う~ん。

 一番困る回答だ。


 何を作れば良いのか迷う。

 それにルイズの黄金の瞳には、俺に対する絶大な信頼がある。

 期待を裏切れないのでハードルが上がる。


「お肉が食べたいにゃ♪」

「お肉を、たくさん食べたいの♪」


 猫神族と天竜族の少女二人が、元気よく言う。

 肉食系だなー。


「私は、野菜が食べたい。上品でコクがあるヤツ」


 エルフリーデが、難しい注文を出した。

 お前は、王族か?


「上品でコクがある野菜か……」


 随分とグルメなご所望だな。


 仲間からのお願いだし、叶えてやりたいが、さて、どうしようか?

 顎に手を当てて考える。


「エルフリーデで、あんまり難しい事を言ってはダメですよ? 先生が困っているじゃないですか」

「大丈夫。師匠は万能だから、何でもできる」


 ルイズが注意をすると、エルフリーデが期待を込めた眼差しを、俺にむける。

 いつの間にか、俺は万能の存在にまで成り上がっていたらしい。


 さすがに何でもは出来ないぞ?


 さて、どうしようかな?

 肉は良い豚肉を王都で買っておいたので問題ない。

 野菜もあるにはあるが、キャベツやレタス、タマネギ、白菜と、普通の野菜しかない。


 上品でコクがある野菜料理となると、少し難しい。

 待てよ。

 ふと、俺の故郷の村の郷土料理を思い出した。


「うん。何とかなるかもしれない。手伝ってくれないか?」

「もちろんです」

「にゃ♪」

「ん」

「はいなの♪」


 俺は、四人に森の中で、探して欲しい植物の特徴を話した。



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