第43話 この世の何よりも

 目を閉じても、フローラとエルフリーデの可愛らしい下着姿と、ミネルヴァの裸体が、眼に残る。


 ミネルヴァは子供だから、ともかく、フローラとエルフリーデの下着姿は、少々、刺激が強すぎる。


「ちょっと貴女たち、少しは恥じらいをもって下さい!」


 ルイズが、頬を染めて注意する。


「にゃー? でも寝るんだよ? 服を着たままだと熟睡できないにゃー」

「ん。本当は寝る時は、全裸が良い。師匠がいるから、遠慮して下着をつけている」

「? 寝る時は、全裸が普通なの」


 フローラ、エルフリーデ、ミネルヴァが、主張する。


「先生が、困っておられるじゃないですか……」


 ルイズが、あきれた口調で言う。


「先生、すみません。目を閉じたままでいて下さいますか? 私も服を脱ぎますので……」


 衣擦れの音がした。 

 ルイズが、服を脱いで下着姿になっている音だ。


 ものすごく、緊張する。

 やがて、誰かが魔法光を灯したランタンの照明を弱くする。

 ほのかな淡い光だけが残る。


「さて、寝ましょうか」


 ルイズが、布団に潜り込む音が聞こえる。

 バサリと毛布がかかる音。


「綺麗なお布団なの♪」


ミネルヴァが、俺の左隣に寝た。


「にゃー、なんだか安心するね♪ ダンジョンと違って、ほっとする」


 フローラが、俺の右側に寝て、毛布をかける。


「ん。同意」


 エルフリーデも毛布をかける。

 美少女三人が下着姿。

 美幼女一人が、全裸の状態で俺のすぐ近くにいる。


 彼女たちの柔らかい感触がつたわる。

 腕、足、全身に柔らかいものが接触してくる。

 信じがたい程、官能的で良い匂いが、テント内に立ち込める。


「カインお兄ちゃん。今夜は寒いから、抱き合って寝るの♪」


 ミネルヴァが、俺の上に全裸のまま覆いかぶさってきた。

 天竜族の少女は、俺の胸に頭をおいて、全身を俺の上におく。


「にゃー。私も♪ 寒い時はこうするのが一番だよね♪」


 フローラが、俺の右腕を取り、足を絡ませてきた。


「ん。じゃあ、私も」


 エルフリーデが、俺の左腕をとり、足をからませてくる。


 フローラとエルフリーデ、そして、ミネルヴァの柔らかい肉体の感触が、ダイレクトに俺の全身につたわる。


 ……。


 密着し過ぎでは?

 信用されているのか?


 それとも、男として認識されていないのだろうか?

 それはそれで、少し微妙な気持ちになるなぁ。


「ふっふっふ。師匠、美少女たちを、肉布団(にくふとん9として扱う愉悦はどう? 気分は王様?」


エルフリーデが、俺の耳元で、艶っぽい声を出した。


「やめろ」


 返答に困る事を言うな!

 そして、耳に息を吹きかけるな。


「カインお兄ちゃんは王様なのー? 凄い♪」

「エルフリーデ、先生に失礼ですよ。それにミネルヴァの教育に悪いです」


 ルイズが、たしなめる。


 完全にお母さんのポジションを確立してるな。

 その時、ビュォオオ、と寒風が、吹きすさぶ音がした。


 寒気がする。

 今夜は、これからもっと冷えていくだろう。


「にゃー、今夜は本気で寒いにゃー。ルイズも、もっとくっついた方が良いよ?」

「あっ、はい」


 フローラとルイズが、もぞもぞと動く気配がする。

 身体を密着させているのだろう。


「お兄ちゃんの身体、温かいの♪」

「にゃー♪ カインの身体は確かに温かいにゃー♪」


 ミネルヴァと、フローラが、猫が身体をすり寄せるように、俺の身体に自分の身体を擦り付けてくる。  


「ん。抱きしめ合ってると温かい」


 エルフリーデが、気持ちよさそうな声を出す。

 確かにそうだな。

 温かくて、気持ち良い。


 そう思っていると、段々、眠気が襲ってきた。

 トロンとしてくる。


 夢見心地の中、俺は、ふと懐かしさを覚えた。

 脳裏に、両親との記憶がよぎる。


 そういえば、俺も、幼少の頃、こうして両親と一緒に、同じベッドで寝ていたっけ。


 俺の故郷の村は冬は、すごく寒いから、俺が5歳くらいになるまでは、両親は俺と一緒に寝て、暖めてくれた。


 久し振りだな。

 こんな記憶を思い出すなんて……。

 俺の家族は、既に他界した。 


 だが、今の俺には、ルイズたちがいる。

 手放したくない。

 無くしたくない。


 この世の何よりも代えがたい存在が、彼女達なのだから……。

 やがて、強い睡魔が俺を襲い、眠りに落ちた。


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