第4話 元弟子の美少女3人のパーティーに入る!

 馬車に揺られながら、俺は勇者パーティーを追放された事をルイズたちに説明した。


 思い出すだけでも苦しくなる事を、なぜか俺はあまさずルイズたちに告白していた。


 なぜ、そうしたのか分からない。


 多分、ルイズたちの人柄がそうさせたのだろう。


 彼女たちは、明るく純粋であり、そうである故に俺も純粋に……、素直な気持ちになれた。


 話を聞いたルイズたちは怒りだした。


「信じられません。先生にたいして何て無礼な!」


 ルイズが、美しい顔を怒りで赤くそめる。


「にゃー! 酷い連中だよ! 先生はそんな奴らから離れて正解だよ!」


フローラが猫耳と尻尾を逆立て、怒りに震える。


「最悪な奴ら。先生のような凄い人と一緒にいる資格はない」


 エルフリーデが、水色の瞳に怒りを宿す。


俺の為に怒ってくれる三人の美少女の態度にジンと来た。


 勇者ハーゲンたちから辛辣な事を言われた後なので、なおさら心に染みる。


「いや。でも、俺が役立たずというのは事実でもあるんだ。俺の模倣コピー恩寵者ギフターも彼らにとっては、あまり役に立たなかったしな」


 『模倣コピー』は、文字通り能力を模倣コピーする能力。


 『恩寵者ギフター』は、対象者の潜在能力を引き上げ、同時に対象者にまつわる全ての能力を底上げする機能がある。


「役に立たない何て……、どちらも非常に有能な能力です」

「うん、ルイズの言うとおりだにゃ。先生は凄く強いしね。鷲頭獅子グリフォンを一刀両断だもん♪」


 ルイズの言葉にフローラも頷く。


「圧倒的な能力だと思う」


 エルフリーデも褒めてくれた。


「いや、それでも勇者パーティーのメンバーと比べると実力不足なんだ……」


 俺は本音で言った。


 俺は模倣コピーの能力で、勇者ハーゲンの『剣聖』。

 戦士グスタフの『攻撃力』『防御力』。

 神官アリアの『治癒魔法』。

 魔導師ベアトリスの『多彩な魔法』。


 これらを模倣コピーして自分のモノとした。


 だが、俺自身の実力不足のせいで、その能力はどれも劣化したものに過ぎなかった。


 例えば、勇者ハーゲンの『剣聖』の能力のお陰で、剣の技量は高い方だが、勇者ハーゲンの技量には遠く及ばない。


 勇者ハーゲンの『剣聖』の能力を100とすると、俺はせいぜい40くらい。


 つまりオリジナルである勇者ハーゲンと比べると、俺の剣力は4割程度だ。


 他の勇者パーティーのメンバーから模倣コピーの能力も、同じく3割から4割前後だ。


劣化版と罵られたが、それは事実でもある。


必然的に、俺は彼らよりも戦闘能力に劣る。


 それに恩寵者ギフターの効能も彼らのような猛者には必要ない。しかも、とある理由で使用できなくなっていた。


「だとしてもあんまりです!」

「腹が立つよ! イライラする!」

「怒りがおさまらない」


 元弟子の美少女三人が怒りで震えている。

 なんだか嬉しいな。

 俺のために怒ってくれるとは。


「先生! だったら、先生は今一人なんだよね?」


 フローラが、俺の腕を両腕で抱きしめて顔を近づける。


 紅茶色の髪と、翠緑色エメラルドグリーンの瞳を持つ、猫神族の美少女の胸が俺の腕にあたる。


「あ、ああ」


 俺は頬を赤らめて答えた。フローラの大きな胸が当たっていて、その感触でドギマギしてしまう。


「じゃあ、私達のパーティーに入れば良いよ♪」


 フローラが、無邪気な笑顔を見せる。

 俺は目を瞬かせた。

 俺が彼女たちのパーティーに?


「それは名案です。フローラは、たまに賢くなりますね」


 ルイズが言う。


「でしょう? んにゃ? なんか馬鹿にされた気がするよ?」

「気のせい。名案。フローラは賢い子」


 エルフリーデがフローラの頭をなでる。猫神族の美少女は目を細めて、嬉しそうな顔をした。チョロいな。


「先生は私達の仲間になるべき」


 精霊族の美少女の水色の瞳が、俺をまっすぐに見る。


「先生、私からもお願いします。ぜひとも私達のパーティーに入って下さい」


 ルイズも、俺の腕を両腕で抱きしめる。

 ルイズの胸が俺の腕に密着した。

 両腕に美少女二人の胸の感触がする。君たち、もう少し自分が美少女だと自覚してくれ。


 俺はドキドキしながらも、仲間に誘われた件について、考える。


 彼女たちの仲間になる……か……。


(良いかもしれない)


 と、俺は思った。


 勇者ハーゲンたちとは違い、彼女たちは善良だし、一緒にいて楽しい。


 元々冒険者は続けるつもりだったし、だったら彼女たちと冒険した方が効率が良い。 


 冒険者という職業は一人よりも、複数の方が断然有利だ。


 補給や事務処理、ダンジョンの探索、魔物との戦闘。

 どれも一人よりも複数の方が有利なのは当然だ。

 彼女たちは潜在能力も凄く高いし、これからドンドン強くなるだろう。


 俺でも教えて上げられることは、まだ沢山ある。彼女たちの力になれればこんなに嬉しい事はない。 


 黙って、考え込む俺を心配するようにルイズが口を開く。


「すいません。ご迷惑とは承知しています。ですが、私達には先生の力が必要です」

「うん。それに先生といると楽しそう。なんか良い事がありそうな気がするにゃ♪」


 フローラが言う。


「肯定。楽しいのは確か」


 エルフリーデが、無表情のまま頷く。

 俺は数秒、沈黙した後、口を開いた。


「分かった。君たちのパーティーに入れてくれ」


 俺は快諾した。


 『冒険者稼業は即断即決が大事』『冒険者は迷ってはならない。すぐに行動しろ』という冒険者の格言がある。


 何せ冒険者稼業は早い者勝ち、奪い合いが日常茶飯事だ。


 魔物との戦闘では、わずかな迷いが命取りになるがある。


 5年も冒険者稼業をしている内に俺もすっかり染まって、即断即決が癖になっていた。


 俺を即座に仲間に誘うあたり、ルイズたちも冒険者らしくなってきたなぁ、と思う。


「ありがとうございます!」

「にゃー♪ やった!」  


フローラが、手をあげるとエルフリーデが手を打ち合う。


「最高。今日は良い日」


 精霊族の美少女が、わずかに微笑む。


「魔物に殺されそうになりましたけどね」


 ルイズが苦笑する。


「でも、先生と仲間になれたから結果オーライだよ♪」

「ん。結果が大事」


 フローラとルイズが言う。


「これから、よろしくお願いします。先生」


 ルイズが頭を下げる。ハイエルフの少女の銀髪がサラリと流れた。 


「ああ、よろしく。もう仲間なんだから、先生とは呼ばなくていいよ。カインで良い」

「いえ、私にとっては先生はずっと先生のままです」


 ルイズが、生真面目な顔で言う。


「じゃあ、私はカインと呼ぶね。友達みたいで楽しいし♪」


フローラが、楽しそうに言う。


「私は師匠と呼ぶ」


エルフリーデが、無表情で言う。


「? なんで師匠?」

「師弟関係に憧れていた。なんか師匠と弟子とかカッコイイ」


 精霊族の美少女が無表情でドヤ顔をした。

 というか、カッコイイから『師匠』と呼ぶのか。やっぱり不思議な子だなぁ。


「分かった。まあ好き呼んでよ」

「ん。勝手にする」


 どこまでもフリーダムな精霊族の美少女が頷く。


「王都についたら、カインの歓迎会をしよう♪」


 フローラの猫耳がゆれる。嬉しいと耳が動くらしい。


「良いですね。楽しみです」

「賛成」 


 ルイズとエルフリーデが楽しそうに答える。

 俺も楽しみになってきた。

 こうして、俺はルイズ、フローラ、エルフリーデという新しい仲間を得た。





 まさか後年になって、この事が『運命の再会』と吟遊詩人に歌われるようになるとは思いもしなかった。

 

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