第5話 王都ベルンに到着。ご飯を食べる。


二日後の朝。

 エルドラス王国の王都ベルンに到着した。


 まずは全員で冒険者ギルドに行き、鷲頭獅子グリフォン赤大蛇レッド・スネークの遺骸の一部を買い取ってもらった。


 元々、ルイズたちはあの森で魔物狩りをして、お金を稼ごうとしていたそうだ。


 ならば目的達成といった所だろう。

鷲頭獅子グリフォンの素材は、特に高く売れた。


 総額500万クローナだ。ちなみにクローナとは、このエルドラス王国の通貨単位である。


 500万クローナという金額は、一年間は人間一人が、余裕で暮らせる金額だ。

 その後、食堂に行った。


「さあ、カインの歓迎会だよ♪ たっぷり食べよう」


 フローラがこれ以上ないほど嬉しそうな顔をした。食欲旺盛なんだよなぁフローラは。


「フローラ、その前にお金の配分を決めよう。魔物の素材の取り分を決めないと」


 俺が提案する。


「? 配分?」


 エルフリーデが小首を傾げる。外見年齢が13歳くらいだから、なんだか、小さな子供みたいで可愛いな。


「先生。鷲頭獅子グリフォン赤大蛇レッド・スネークも全て先生が倒したのですよ? お金は全部先生のモノでしょう」


 ルイズが生真面目な顔で、生真面目に言う。相変わらず、このハイエルフの美少女は、純粋で欲がない。


 だが、それではダメだ。


「冒険者なんだから、お金に関してはもっとシビアにならないとダメだよ。こういう時は、俺にゴネてでも分け前を寄越せと要求しないと」


 まあ、俺もあんまり、ゴネたり金の交渉事は得意ではないから、本来偉そうに言える立場ではないが。


「は、はい。申し訳ありません」


 ルイズが恐縮して、謝罪する。


「そこまで気にしなくて良いよ」


俺は柔らかい声を出す。


「うにゃ~、でも、カイン。ルイズの言うとおり、全部カインの手柄だよ? カインが総取りするのが常識じゃないのかな?」

「肯定。フローラの言うとおり」


 フローラの言葉をエルフリーデが指示する。


「いや、パーティーを結成した以上、お金は全て共有財産だ。だから、今回は貯金して、全員が使えるお金にしておく。ここの食事代も、さっきのお金から出す」

「なんだか申し訳ないです……」


 ルイズの端正な美貌がわずかに陰る。

 真面目で誇り高い彼女は罪悪感があるのだろう。

 俺が倒したのにお金を貰うのはフェアじゃないと考えているのだ。


「申し訳なくなんかないさ。活動していく上で、宿代や食事代。雑費、物資調達、その他もろもろ諸経費がかかる。こういう風に貯金して、みんなで有意義に使った方が冒険は円滑に行くものなんだ」


 何事もお金がないとどうしようもないからな。

 勇者パーティーで、財務処理をしていたから、お金の管理は、結構得意だ。


「難しいからよく分からないけど、カインがそう言うなら正しいんだと思うよ」


フローラが言うと、エルフリーデも賛同する。


「ん。師匠は常に正しい」


 いや、さすがにそれは過大評価だぞ、精霊族の我が弟子よ。

 俺も間違えることはあるだろうから、ちゃんと指摘してくれよ?


「まあ、難しく考える事はないよ、ルイズ。俺もパーティーメンバーになったばかりで少しは貢献したいしさ」

「は、はあ……」


 銀髪金瞳のハイエルフの美少女は、なおも躊躇った。


「男は、可愛い女の子の前で格好つけたがる馬鹿な生き物なんだ。俺の面子を立ててくれよ」


 俺がダメ押しをする。


「わ、分かりました。先生に従います」


 ルイズが何故か頬を染めた。黄金の瞳をそらしてモジモジとする。

 どうしたんだろうか?


「にゃ~、カイン。私とエルフリーデも可愛いの?」

「ん。興味津々」


 猫神族と精霊族の美少女がニヤニヤしながら俺に尋ねる。


「? ああもちろんだよ。ルイズもフローラもエルフリーデも、可愛いし、本当に綺麗だと俺は思うよ」


 俺は素直に本心を告げた。事実、三人とも絶世の美少女だ。


 100人中100人が、彼女たちを『美しい』というだろう。

 ふいにルイズたちの身体が固まった。

 そして見る見るうちに顔が赤くなり、耳まで真っ赤になる。


「あ、あの……ありがとうございます……」

「う、嬉しいけど恥ずかしにゃー、なんか変な気分……」

「予想外の攻撃……、さすが師匠……。恐ろしい人」


 三人の美少女たちが、顔を赤くしたまま俯く。


 俺は微苦笑した後、


「そろそろ食事を注文しようか?」


 と提案した。

「そ、そうしましょう。気分を変えないと……」

「う、うん。食べよう」

「今日は沢山食べる。あっ、お酒も良いかも」


 いやいや、エルフリーデ。君は酒は飲むな。

 絵的にマズイ。







食事が始まると驚いた。


 フローラの食欲が、尋常ではない。


 二年前も、この紅茶色の髪の少女の食欲に驚いたのを思い出した。


 「パクパクパクパク、もぐもぐもぐ、ごっくん。……パクパク。美味しい♪ 幸せ♪ パクパクもぐもぐ♪」 


 こんな感じにエンドレスで食べまくる。


 もう10人前は食べたのに、まだおさまる気配がない。


 しかし、フローラはこんなに食べて、どうしてこんな見事なプロポーションを維持しているのだろうか?


 フローラは胸は大きく、腰は細い。

 手足もすらりと均整が取れている。


 そして、どこにも余分な脂肪がついているようには見えない。

 それでいて健康的な筋肉がちゃんとついている完璧で美しい肉体だ。


「猫神族って凄いな……、どうして太らないんだろ?」


 俺が呟くと、ルイズも同意する。


「もしかしたら、猫神族特有の能力かも知れません……」

「羨ましい」


 エルフリーデが、本気で羨ましそうにフローラの美しいプロポーションを見る。


「羨ましいの?」


 精霊族の美少女に耳打ちしてみる。


「女の敵……」

「敵なの?」 


 驚いた。 


そこまで羨望されるのか。まあ、いくら食べても太らないなんて、女の子の夢だよね。


 その後、たっぷりと食べたフローラが、死ぬ程幸福な顔をして椅子にもたれた。


「もう食べられない。幸せ~。ご飯を食べるのって最高だね~♪」


 フローラが、お腹をさすりながら言う。

 満足してくれたようで何よりです。

 その後、食後の紅茶を飲みながら、今後の方針を話し合った。

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