第8話 カインは、希少種の強さに驚く。


 二時間後。

 俺たちは、一角猪ホーン・ボアの群れに遭遇した。


 一角猪ホーン・ボアは猪型の魔物で、牛の2倍くらいの巨体を持つ魔物だ。

 一角猪ホーン・ボアの数は、10体。


 俺たちを包囲するように取り囲んでいた。


「俺は出来る限り手出しはしない。三人だけで闘ってみろ」


俺が全部倒す事も可能だが、今回はルイズたちの成長を見たい。だから、ピンチにならない限りは見守る事にした。


「了解です」

「分かった!」

「ん」


 ルイズたちが、俺の意図を察して一角猪ホーン・ボアに立ち向かう。


(さて、どの程度、強くなっているかな?)


 俺は美少女三人を見た。


 まず最初にルイズが、弓矢をつがえて、一角猪ホーン・ボアめがけて射放つ。


 『風の加護』が付与された矢が、強大な風属性の魔力をまとう。

 鋭い音をたてて矢が宙空を飛び、一角猪ホーン・ボアの額に命中する。


 だが、命中するだけでは終わらなかった。


 なんと矢は、一角猪ホーン・ボアの額から尻まで貫通した。

そして、貫通した弓矢は後ろにある大木さえも貫通して飛び視界から消えた。

 大木が、ミシミシと音を立てて倒れる。


「「「え?」」」


 俺を含めた全員が、驚いて呟く。


 なんて威力だ。


 こんな貫通力と破壊力を持つ弓矢は見た事がない。


(これが『風の加護』の真の力か!)


 俺は心の中で驚嘆した。


「すごいよ、ルイズ。私に負けてられないにゃ!」


 フローラは、手近の一角猪ホーン・ボアめがけて突撃し、戦斧を一角猪ホーン・ボアめがけて振り下ろした。


 フローラの戦斧が一角猪ホーン・ボアに命中する。

 一角猪ホーン・ボアの頭が爆発したように爆ぜた。 


 爆発音が響き、地震のように地面が揺れる。

 フローラの戦斧が、勢い余って地面に突き刺さったのだ。

 クレーターのように地面が陥没した。


「嘘でしょ?」


 フローラが、自分の力に驚く。

 そして、自分の戦斧に目を向けると、


「にゃ~! 私の戦斧がぁ!」


 と悲鳴を上げた。


 戦斧が、折れていた。

 フローラの怪力が凄すぎて、武器が絶えられなかったのだ。


「負けてられない」


 エルフリーデが、そう呟く。

 その時、なぜか嫌な予感がした。


 大気が凍り付くような恐ろしい気配を感じる。

 エルフリーデの背中には、美しい半透明の羽根が生えていた。 


 二年前にも見た光景だった。


 精霊族のエルフリーデが魔法を使う時、その背中には大気中の魔力を吸収する為に、半透明の昆虫のような美しい羽根が魔力によって構築されるのだ。


大気中の魔力がエルフリーデの羽根を通して、彼女の体内に吸収されていく。


 大気が震えるような感覚がした。膨大な魔力が、エルフリーデの小さな身体に集まっているのが分かる。


 恐ろしい程の魔力量に、思わず息を呑む。

 エルフリーデは、


火球ファイヤーボール


 と唱えた。

 火炎の球を敵に放つ初級魔法だ。


 だが、その威力は初級魔法という可愛らしいものではなかった。

 まるでドラゴンが吐き出す業火だ。

 火球を放った反動で、エルフリーデは後ろに吹き飛んだ。

 俺があわてて青髪の精霊族の美少女を抱きとめる。


 ドラゴンの吐き出す炎のような『火球』が、一角猪ホーン・ボアたちに直撃した。


 一角猪ホーン・ボアの群れが、業火に包まれて瞬く間に焼殺される。

 ついでに森の大木も地面も焼け焦げて燃え上がる。

残りの一角猪ホーン・ボアたちは怯えて逃げ出した。

 木々や草花に火が燃え移り、火がドンドン広がっていく。


「大変だ。このままだと森林火災になる!」


 俺はあわてて水魔法を使って、消火活動をする。


「ひ、火を消さないと!」


ルイズが叫ぶ。


「にゃー! 地面まで焼けてるよ! ここは地獄?」


 フローラが悲鳴をあげる。


「正確には灼熱地獄しゃくねつじごく

「どっちでも良いにゃー!」


 エルフリーデのツッコミに、フローラが叫ぶ。

 俺たちは大慌てで、消火活動を行った。

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