第11話 能力の分析

 ルイズたちと稽古をしてみて、彼女たちの能力をかなり分析できた。


 ルイズがハイエルフの種族的特性として、生来持っている『風の加護』は、弓矢や剣などの武器を使う時に大きな力を発揮する。


 たとえば矢を射る時、矢に風属性の強大な魔力が付与される。

 その力で圧倒的な貫通力と攻撃力が出る。


 剣を振るう時にも風属性の魔法が付与されるので、殺傷力が増す。

風を使って、敏捷性を上げる事も可能だ。


 空気抵抗が、減少するので、この点も有利だ。


 猫神族のフローラは、自身の鬼神のような怪力を上手く操作できるようになった。


 そして、模倣コピーした俺も、神懸かり的な身体能力を得た。

 精霊族のエルフリーデの能力は最初は持て余したが、訓練を繰り返して、エルフリーデも俺も、かなりコントロール出来るようになった。


 この精霊族の魔力吸収で、俺は模倣コピーする前の数十倍の魔力を使用できるようになった。


 お陰で、ハイエルフと猫神族の能力も十全に活用できる。


 ハイエルフの『風の加護』も、猫神族の『超人的な身体能力』も、魔力を利用したものであり、エネルギー源である魔力が大量にあると十全に活用できるのだ。


俺の模倣コピーはオリジナルの4割が限界だったが、精霊族の能力のお陰で、オリジナルの彼女たちに等しい力を発揮できるようになった。


「カイン。質問して良いかにゃ~?」


 フローラが、あごに指をつけて質問する。


「ああ、もちろん」

「あのね。私が力持ちなのも、魔力を利用しているからなの?」

「その通り。猫神族は魔力を利用して身体能力をアップさせているんだ。まあ、魔力による身体能力の強化は他の種族もできるけど、猫神族は別格の存在だ」


 俺が説明する。


 猫神族が、超人的な身体能力を持っているのは、生まれつき肉体が強い事もあるが、それだけではない。 


 最小限の魔力で圧倒的な身体能力を発揮出来る術式が、生まれつき肉体に刻まれているからだ。


 ようは魔力の変換効率の問題だ。

 人間族も魔力を使って、身体能力を強化できるが、猫神族のような優秀な身体強化の術式がないので、魔力の変換効率が悪い。


 やや乱暴に数式化すると、人間族は100の魔力で、100の身体能力しか得られない。


 だが、猫神族は、10の魔力で、1000の身体能力を得られる。


 だから、人間族と猫神族が同じ魔力量を保有していても、発揮できる力には大きな差が出る。


「これはルイズの風の加護も同じだな」


 俺は銀髪金瞳のハイエルフの少女に視線を投じる。

 ハイエルフのルイズは生来、『風の加護』が刻まれている。


 このせいで、風属性の魔法や風との相性が良く、風の恩寵も得られる。

 少ない魔力量で、強大な風属性の魔法を使えるし、風の付与を得られる。


「そうだったのですね。勉強になります」


 ルイズが笑顔になる。勉強が好きなんだな、偉い子だ。

 おっと、元弟子だったせいで、つい教え子として子供扱いしてしまうな。

 今はもう、ルイズも立派な淑女だから気をつけないと。


「ん~。なんだか難しくてサッパリ分からない……」


 紅茶色の髪の猫神族の美少女は腕を組んで、クビを捻っていた。

 分からないのか。


 これは教師役である俺の責任だな。

 なんとかしないと……。


「つまりだ。フローラは猫神族だよな?」


 俺は簡単な言葉で説明することにした。


「うん♪ そうだよ」

「だから、生まれつき力持ちになれる術式が身体に刻まれている」

「うん。それは分かる」


 フローラが強く頷く。


「その力持ちになれる術式を、さらに強くするのが魔力だ」

「うん、うん。理解できる」


 フローラが真面目に聞く。


「そして、フローラは俺の『恩寵者ギフター』で、さらに力持ちになった」

「カインのお陰だね♪」


 フローラが、尊敬の眼差しを俺にむける。


「自画自賛になるけど、そうだ。そして、俺も精霊族の能力で魔力総量があがったから、魔力が多くなった分だけ猫神族の能力を利用して力持ちになれた、という事だ」   

「ああ、分かった! カインのお陰で分かったよ♪ カインは凄いね。説明が上手なんだね♪」


 フローラが翠緑色エメラルドグリーンの瞳に喜色を浮かべ、綺麗な笑顔を咲かせた。


「理解できたのは、フローラが優秀な生徒だからだよ」


 俺は無意識にフローラの頭を撫でた。


 嫌がれるかと思ったが、フローラは嬉しそうに目を細めて、されるがままになっている。

 そういえば、二年前もこうして頭を撫でてあげたら喜んでいたっけ。


「ん。師匠」 


 エルフリーデが俺の服のすそをつまんだ。

 そして、もう一方の手で自分の頭を指さす。


「撫でろって事?」

「そう。私も優秀で美しく、可憐。師匠に撫でられる権利がある」


自画自賛が少し多くないか?

 と、思ったが、俺は苦笑して、


「分かった。分かった」


 と、青髪の精霊族の頭を撫でた。

 エルフリーデは嬉しそうな顔をした。

二年前と変わらないな。


「フローラもエルフリーデも先生に甘え過ぎですよ」


 ルイズが、呆れた顔で注意する。


「にゃ~、でも頭撫でられるのが好きなんだよ~」

「ん。師匠は撫でるのが上手い」


 エルフリーデが、なぜかドヤ顔をする。

 俺は微笑して、ルイズ、フローラ、エルフリーデを見た。

 彼女たちと一緒にいると常に心が明るく満たされる。

ルイズたちと再会できて、本当に良かった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る