「モノマネだけの無能野郎は追放だ!」と、勇者パーティーをクビになった【模倣】スキル持ちの俺は、最強種のヒロインたちの能力を模倣して、気付いたら魔王を倒していた。
第27話 エルフリーデVS魔導師ベアトリス
第27話 エルフリーデVS魔導師ベアトリス
「覚悟は出来ているだろうなァ、小娘」
魔導師ベアトリスが、対峙するエルフリーデを睨みつける。
「覚悟? 貴女を倒す覚悟なら出来ている」
エルフリーデは、無表情で答えた。
「舐めやがってェ! すぐに後悔させてやるぜェ」
魔導師ベアトリスは、エルフリーデにむけて杖を向ける。
「『
魔導師ベアトリスの杖から、黒い炎が発射された。
火炎属性の上級魔法だ。
岩を溶かす業火が、エルフリーデめがけて飛ぶ。
だが、エルフリーデは冷静に杖を動かして、無詠唱で『火球』を唱えた。
火炎属性の初級魔法である『火球』が、エルフリーデの杖の先端から放たれる。
魔導師ベアトリスの『黒炎』と、エルフリーデの『火球』が宙空で衝突した。
ゴアっ!
と業火が爆ぜる音がした。
熱風があたりに吹きすさぶ。
やがて、二つの火炎魔法は、相殺されて消滅した。
「ちィ! まさかアタシの魔法を打ち消しやがるとは、少しはやりやがるなァ」
魔導師ベアトリスが、舌打ちする。
だが次の刹那、魔導師ベアトリスはエルフリーデの背中に、半透明の羽根が生えている事に気付いた。
「て、てめェ! そ、その羽根はなんだ!」
魔導師ベアトリスが、叫ぶ。
「精霊族の羽根。魔法を使う時に出る」
エルフリーデが、薄い胸をはって威張る。
「せ、精霊族だと!?」
魔導師ベアトリスが叫んだ。
ありえねェ、精霊族がなんでエルドラス王国にいるんだよ!
博識なベアトリスは、精霊族を知っていた。
全種族の中でも、魔法においては最強クラスの種族。
それが精霊族だ。
その魔法は、自然災害にも匹敵すると言われている。
「嘘をつくんじゃねェ! 精霊族は絶滅危惧種と言われるほど個体が少ない希少種だ! こんな所にいるわけがねェ!」
魔導師ベアトリスが、冷や汗を流しながら叫ぶ。
「なら、試して見れば良い」
青髪の精霊族は、無表情で魔力を集め出した。
背中の美しい羽根を通して、大気中から魔力が集まっていく。
大気が振動し始めた。
エルフリーデの体内に膨大な魔力が蓄積されている。
「う、嘘だろ……」
魔導師ベアトリスは顔面蒼白になった。
彼女も一流の魔法使いだ。
だからこそ、エルフリーデの小柄な身体にあつまる魔力がどれだけ巨大かが理解できた。
魔導師ベアトリスの魔力総量を遙かに超えている。
「あ、あああ……」
魔導師ベアトリスは、後退った。
こんな巨大な魔力総量を持つ敵を見たのは初めてだった。
どんな魔物や魔獣よりも恐ろしい敵が、魔導師ベアトリスの前にいた。
しかも、ドンドン魔力が増えている。
(こ、こんな魔力で魔法を撃たれたら、確実に殺されちまう……)
魔導師ベアトリスの足がガクガクと震える。
「カインを侮辱した罪を地獄に落ちて詫びるがいい」
エルフリーデが、水色の瞳に冷たい光を浮かべて、
「『
と唱えた。
巨大な魔力がエルフリーデの小柄な身体から吹き出た。
「ひ、ひぃいいいい!」
ベアトリスが、圧倒的な魔力量に気圧され、悲鳴をあげる。
次の瞬間、ベアトリスの足下の地面に、赤黒く光る不気味な魔法陣が展開された。
そして、地面から数十匹の悪魔が這い出てきて、ベアトリスの肉体を腕でつかんだ。
「ぎゃあああああ!」
ベアトリスは泣き叫んだ。
ベアトリスは数十匹の悪魔に取り囲まれ、無数の腕で肉体を押さえつけられる。
「これは精霊族の禁術魔法『地獄の扉』。対象者を生きたまま地獄に引き摺り込む、極悪無比な暗黒の魔法……。クックック……」
エルフリーデが、邪悪な微笑を浮かべた。
「い、いやああああああ!」
ベアトリスが、泣きじゃくる。
「地獄に落ちるなんて嫌アアアアああ!」
「泣いても無駄だ人間族の小娘。地獄でカインを侮辱した罪を永遠に贖うがいい」
エルフリーデは悪魔のような台詞を吐いた。
精霊族の美少女の水色の瞳が、悪魔そのもののように紅く光る。
あまりの恐怖にベアトリスは失禁して気絶した。
その瞬間、悪魔達が消滅し、魔法陣も消え去った。
ベアトリスはドサリと仰向けに倒れた。
ブクブクと口から泡を吹いて、失禁しながら身体を痙攣させている。
『地獄の扉』という魔法はエルフリーデの嘘だった。
エルフリーデは、無詠唱で『幻影魔法』を唱えて、悪魔の幻覚をベアトリスに見せたのだ。
「あんまりやり過ぎると、師匠が怒るだろうから、このくらいで勘弁してあげる」
エルフリーデは、フンっと鼻を鳴らした。
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