第2話 元弟子の美少女3人と再会する。 

 俺は荷物をまとめると宿屋を出た。

 

 そして、エルドラス王国の王都に行く馬車に乗った。


 一刻も早くここを去りたかった。

 色んな感情が、俺の胸に渦巻いた。


 怒り、悲しみ、諦め。


 複雑な感情の波がある程度おさまると、


(これから、どうしようか……)


 と考えはじめた。


 俺は現在、20歳。


 一応、Bランク冒険者だ。


 勇者たちには及ばないが、そこそこに腕は立つ。


 冒険者として生計を立てるぐらいは可能だ。

 というか、他にできる仕事がない。


 幼少時に両親を魔物に殺害され、復讐の為に15歳で冒険者になった。

 以来、5年間、冒険者として活動してきた。


 冒険者になりたての頃は、魔物に殺された両親の復讐の為に、魔王を倒すのが夢だった。


 自分が、魔王を倒す器量がないと分かった時、せめて魔物を一匹でも多く倒して、世の中を平和にしたいと考えた。


 勇者ハーゲンの仲間になれた時は、誇らしさに胸が熱くなった。

 この数年間、全身全霊で勇者ハーゲンとともに魔物と闘ってきた。


  勇者ハーゲンのパーティーからは追放されたが、冒険者として魔物を倒して、少

しでも平和な世の中を作りたいという熱意だけは消えていない。


(再出発だな)


 俺は空を眺めながら思った。 




◆◆◆◆




 三日後の正午。

 快晴の中、馬車が街道を進んでいた。

 民家はなく、見渡す限り、草原と森しかない。


 美しい自然の中を馬車がゴトゴトと進み続ける。


 やがて、俺は異変に気付いた。

 前方にある森から、嫌な気配を感じた。

 これは魔物の魔力だ。

 

 しかも相当に強力だ。

 やがて、女性の悲鳴が聞こえた。


「馬車を止めてくれ!」


 御者運転手のオジサンが慌てて馬車を止める。


 俺は馬車から飛び折ると、御者のオジサンに警告した。


「あの森には魔物がいる。近づいたら危険だ。俺が退治してくるから、ここで待機していてくれ!」

「わ、分かりました!」


 御者のオジサンが怯えながら答える。

 俺はすぐに駆け出した。


 前方の大きな森の奥で、おそらく女性が魔物に襲われている。

 俺は魔力で身体能力を向上させて疾風のような速度で森に入った。


 戦闘音が聞こえてくる。


 そして、女性の悲鳴が何度か聞こえた。

 どうやら、ピンチのようだ。


(間に合え!)


 俺は全力で駆けた。

 やがて、森の開けた場所に出た。

 複数の魔物が3人の女性を包囲していた。


鷲頭獅子グリフォンか……」


 俺は瞳に映る魔物を見て驚いた。


 王都の近くの森に、鷲頭獅子グリフォンのような高レベルの魔物が出るなど珍しい。


鷲頭獅子グリフォンは、ワシの頭に獅子の胴体を持つ怪物で、五メートルちかい巨体をしている。


 鷲頭獅子グリフォンの他にも、赤大蛇レッド・スネークがいた。


 赤大蛇は猛毒を持つ赤い大きな蛇の魔物だ。


 赤大蛇レッド・スネークは全部で、五匹。


 鷲頭獅子グリフォンが親玉として、赤大蛇レッド・スネークという子分を統率して、三人の女性を襲っている。


 俺はロングソード(長剣)を抜刀すると、鷲頭獅子に横合いから襲い掛かった。


 奇襲攻撃なので無言で斬りかかり、一撃で鷲頭獅子グリフォンの胴体を切断した。


 鷲頭獅子グリフォンが真っ二つになって、地面に倒れる。


 赤大蛇レッド・スネーク五匹が驚いたような声を出した。 


 自分達の親分である鷲頭獅子グリフォンがあっさり倒されて、驚いているのだろう。


 赤大蛇レッド・スネークが口を開けて、毒の霧を俺に吹きかけようとした。


 俺は先手を打ち、魔法を唱えた。

 無詠唱で魔法が発動する。


 『業火ゲヘナ』の魔法だ。


 赤大蛇レッド・スネーク五匹が、魔法の炎で焼かれ、悲鳴を上げてのたうちまわる。


 やがて、焼死して、赤大蛇レッド・スネークの死体が5つ地面に転がった。

 魔物を倒した事を確認すると俺は長剣を鞘にしまった。


 そして、三人の女性に駆け寄る。


「大丈夫か?」 


 俺は素速く三人を見る。


 全員負傷し、毒に侵されている。


 一人は、腹部から大量の失血をしていた。

 一人は、毒のまわりが一番酷く、女の子座りして地面にへたり込んでいる。

 一人は、左腕から血を流していた。 


 俺はすぐに治癒魔法を使って、全員の治療をした。

  神官アリアから、模倣コピーした治癒魔法だ。


 見る見るうちに三人の怪我が治っていく。


「よし、大体大丈夫だろう」


 俺はほっと安堵の息を吐いた。


 手遅れになる前に駆けつけられて良かった。


 あと30秒遅かったら、全員死んでいたかも知れない。


「嘘……。体内の毒が完全に消えたいるにゃ。みんなの怪我も全部治ってる」


 女の子座りしていた少女が驚く。


 ふと少女の一人が俺の顔を見て驚きの声を浮かべた。


「先生?」


 俺と少女の目があう。


 少女は美しかった。


 年齢は16歳前後だろう。

 腰まで流れる銀色の髪。

 黄金の瞳。

 雪のように白い肌。

 完璧に整った彫像のような美貌。

 耳は細く尖り、彼女がエルフである事を示していた。


俺は彼女に見覚えがあった。


「……ルイズか?」

「はい! ルイズです!」


 銀髪金瞳の美少女が嬉しさと驚きの笑みを浮かべる。


「にゃっ! 本当だ。先生だよ!」

「ん……」


 他の二人の少女も驚いた顔をし、同時に嬉しそうに顔を輝かせた。


ルイズ、フローラ、エルフリーデ。


 俺は元弟子の三人の美少女と思いがけない再会をした。

 

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