第40話 エルフリーデ

【エルフリーデの視点】



 エルフリーデは、ダンジョンの帰路で、時折、チラチラとカインを見た。


 その度に、


(どうしてなんだろう?)


 と、自問する。


 最近、カインを意識する事が、多くなった。 

 いつも、自然とカインを目で追ってしまう。

 今、カインはフローラの背におぶってもらっている。


 自力で歩けない程、疲労している。


 それは、私達を守ってくれたからだ。

 あの恐ろしい多頭蛇ヒュドラを、カインは圧倒的な力で打ち倒した。


 カインは、謙虚だから、私達みんなのお陰というだろうけど。


 多頭蛇ヒュドラ討伐の功績は、ほとんどカインの力のよるものだ。 私や、フローラ、ルイズだけでは、とてもの事、多頭蛇ヒュドラには勝てなかった。


 いつも、カインは私達を護ってくれる。


 3年前も、駆け出しの冒険者だった私達を、カインは護ってくれた。


 そして、再会しても、いつもカインは私達を助けてくれる。

 なんだか、いつも護られてばかりで申し訳ない気分だ。

 何か、お返しがしたいと思う。


 恩を返したい。


 だが、私にできる事はあまりない。

 カインは、頭が良く、強く、そして優しい。


 私なんかの助けは、カインには必要ない気がする。

 カインは、大抵の事が出来てしまうから……。


私なんかには、もったいない仲間だ。


 さっき、多頭蛇ヒュドラを見た事もない技で倒した時も、凄く格好良くて、まるで物語の英雄のようだと思った。


 ……ああ、まただ。


 胸の奥が変な感じになる。


 胸がキュンと痛む。

 カインの事を考えると、甘い、切なくなるような疼きを胸に覚える。

 甘い痛みなんていうものが、この世にある事を、初めて知った。


 カインの優しい微笑を見たり、頭を撫でてもらう度に、胸の奥が、甘く痛む。

 そして、言い知れない幸福感が、全身を満たすのだ。


 この想いはなんだろう?


 親愛か、友情か、それとも……。

 ……。


 ダメだ。

 分からない。

 ん。


 でも、いいや。

 今は、この幸福と切なさと、甘い痛みを大切にしよう。

 きっと、いつか答えを見つけられる。

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る