第39話 帰路

俺はルイズたちと相談して、ダンジョンから出る事にした。


莫大な金銀財宝や、魔導具(マジックアイテム)は得られなかったが、多頭蛇(ヒュドラ)を倒したので、その素材と魔石だけでも、かなりの収入になる。


 採算は十分に取れた。


 それに『虚神ゲヘナ牢獄プリズン』を使用した反動で、俺は現在、体力も魔力も使い切り、自力で歩く事も出来ない。


しかし、『虚神ゲヘナ牢獄プリズン』は、やっぱり難点が多いな。


 発動時間が、一分に満たない上に、能力の解除後は、反動で身体がボロボロになり、歩く事も出来なくなる。


とてもじゃないけど、多用できない。

 全身に強い筋肉痛が走り、痛くてしょうがない。


 俺とミネルヴァは、仲良く床に仰向けになり、身体を休ませていた。

 その間に、多頭蛇ヒュドラの素材と魔石の回収を、ルイズたちが行った。


 素材の回収が終わると、ルイズたちは室内を探索した。

 フローラが、リッチーの研究所を見つけた。


 残念ながら、財宝はなく、めぼしい魔導具マジックアイテムもなかった。

 あるのはガラクタのような実験機材と、大量の書物だけだ。


 一応、書物だけは無限収納のカバンに入れて、持ち帰る事にした。

 もしかしたら、価値ある書物があるかも知れないからな。


 俺は、フローラの背におぶってもらった。

 女の子の背におぶってもらうとは、なんだか情けないが、まあ、しょうがない。

 なにせ、歩けないし。


「フローラ、すまない」

「大丈夫だよ♪ カインは大活躍したんだから、いくらでもおぶってあげるにゃー」

「師匠。猫耳美少女に、背負ってもらう気分は? 柔らかい? 良い匂い?」

「にゃっ!? エルフリーデ?」


 エルフリーデが冷やかし、フローラが頬を染める。


「黙れ」


 疲労困憊なのに、ツッコミをさせるな。

 たしかに柔らかいし、良い匂いだけど、そんな事で嬉しがる余裕はない。

 全身をおそう激烈な筋肉痛で、それどころじゃない。


 時折、意識が朦朧とする。

 ちなみにミネルヴァは、ルイズが背負っている。


「すまん、ルイズ。もしかしたら、俺は気絶するかもしれない。俺がいなくても、トラップを避けてダンジョンから出られるか?」

「大丈夫です。トラップの位置は全て暗記しました。それに帰るだけなら、元の道をたどれば良いので、行きよりも何倍も楽です」


 頼もしい。

 ルイズの記憶力は、凄いな。

 俺たちは、帰路についた。


 ルイズが、リーダー役を務め、トラップをかわしながら、迷いなく進んでいく。


 フローラもエルフリーデも周囲を警戒し、俺とエルフリーデを労りながら進んでくれた。


 俺は今、歩く事すら出来ないくらい疲労している。


 一人でダンジョンに入り、もし、こんな状態だったら、確実に死ぬだろう。 

 だが、ルイズたちのお陰で安心していられる。


 仲間がいるって、素晴らしいな。

 勇者ハーゲンたちと一緒にいた時は、こんな安心感を持てた事はなかった。

 

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