第17話 大鬼(オーク)との戦闘

 森についた。


 今回は、前回よりも森の奥深くに入り、魔物と実戦を重ねる予定だ。

俺たちはまだ自分達の能力を使いこなせていない。 


 実戦を繰り返して、能力に慣れないといけない。


 魔物を倒せば報酬も手に入るし、一石二鳥だ。


 三十分後。

 大鬼オークと遭遇した。

 大鬼オークは、3メートル以上もある巨大な体格を持つ。

膂力が強く、知能が高いので武装している。


「ルイズ、フローラが前衛で闘え! エルフリーデは後方で待機!」


俺が指示を飛ばすと、元弟子の美少女三人はすぐに答えた。


「はい!」

「了解!」

「承知!」


 ルイズが、剣を抜いて大鬼オークに飛びかかった。刹那、風がハイエルフの少女の身体を包み込んだ。


 『風の加護』が発動したのだ。

 疾風のような速度でルイズが動く。


 大鬼オークの振り回す棍棒をいとも容易く回避して、剣を袈裟斬りに振った。


 キンッ! 


 という金属を砕いたような音が鳴った。


 ルイズの剣に『風の加護』が付与され、風属性の魔力で、切断力が上がっていた。

 大鬼オークは鉄の鎧ごと両断されて即死した。

 ハイエルフの『風の加護』で、ルイズの敏捷性は、まさに疾風のようになった。 

 同時に攻撃力も段違いに強化されている。


「私も負けてられないにゃ!」


 フローラが、戦斧を横薙ぎに薙いだ。

 ブオォン! という暴風のような音がした。

 アダマンタイトの戦斧が、大鬼オークの上体を吹き飛ばした。

 爆発したように大鬼オークの巨体が爆散する。


「しぃッ」


 ルイズが鋭い呼気を発して、2匹目の大鬼オークめがけて剣を振る。

 真空の刃がルイズの剣から飛び出て、大鬼オークの首を飛ばす。


「にゃ!」


 ルイズが、自分の背丈ほどもある戦斧を暴風のように操った。

 2匹の大鬼オークが粉微塵に吹き飛ぶ。

 猫神族の圧倒的なパワーに、俺は口笛を吹いた。


「何度見ても、凄いな」


 希少種の能力の凄さは何度見ても驚嘆してしまう。

 まあ、これだけ凄い力は、そう簡単に見慣れるものじゃないよな。


 俺はロングソードを両手で持ちながら、大鬼オークめがけて跳躍した。


 ハイエルフの『風の加護』で、風が俺を包むようにして移動させてくれる。同時に猫神族の圧倒的な身体能力で、速度が桁違いが上がっていた。


 俺の動きは他人から見ると稲妻のようだろう。

 全部、彼女たちのお陰だ。

 一瞬で距離を潰して、大鬼オークの右横に出る。


 大鬼オークは俺の速度にまったくついてこれていない。

 目視すら出来ていないだろう。

 俺はロングソードを横薙ぎにふった。


 ギンッ!

 という小気味良い音が弾ける。


 ロングソードに付与された『風の加護』の魔力で大鬼オークの胴体を一刀両断した。


「先生、さすがです」

「カイン、速すぎる。目で追いつけないにゃー」


 ルイズとフローラが、称賛してくれた。

 俺は微笑で応じようとした。

 次の刹那、殺気を感じた。

 後方から、何かが飛んでくるのが分かる。


「伏せろ!」


 俺は怒鳴った。

 ルイズ、フローラ、エルフリーデが、俺の指示通り一斉に伏せる。

 後方から、矢が飛来した。

 全部で4本。


 俺たち四人の頭部めがけて飛んでくる。

 俺は冷静にロングソードで叩き落とした。

 残りの矢は、ルイズたちの上を通り過ぎる。

 俺は黒瞳を矢が飛んできた方に向けた。


「ゴブリンの狙撃手が4匹いる! エルフリーデ、威力を抑えた電撃魔法で倒せ!」


 俺が指先でゴブリンたちがいる方向を示す。

 ゴブリンたちが慌てて背を向けて逃げ出す。

 エルフリーデが魔法を唱えた。


「『電撃サンダー』」


 宙空に稲妻が走った。

 青い稲妻が森の中を走り抜ける。

 そして、逃げるゴブリンたちに直撃した。

 2匹のゴブリンが電撃で即死した。


「残り、3匹。ルイズ、フローラ! 狩るぞ!」

「了解です」

「にゃ!」


 俺たちはゴブリンめがけて走り出した。

 あっと言う間に追いついて、ゴブリンたちを背中から打ち倒す。


 ゴブリンたちを倒した後、すぐに周囲を確認した。

 気配はない。

 よし、大丈夫だ。


「警戒を解いて良いぞ。もう付近に魔物はいない」


 俺が言うと、ルイズたちはほっとした顔で緊張を解いた。


「ありがとうございます、先生が注意して下さらなければ、私達は死んでいました。まさか後方から矢が飛んでくるとは……」


 ルイズが、少し青ざめた顔をした。


フローラが、ゴブリンの持っていた矢筒を見た。そして、ギョッとした顔を浮かべる。


「嫌な臭い。これ、毒矢だにゃ!」

「師匠のお陰で命拾いした……」


 フローラとエルフリーデが、わずかに身震いする。怖かったのだろう。当然だ。


「師匠は凄い。戦闘中に後方の気配に気付くなんて達人レベル」


 エルフリーデが尊敬の眼差しを俺にむける。


「うん。それに戦闘中の命令も凄かっにゃー♪」

「ええ、とても動きやすかったです」


 フローラとルイズが微笑する。


「たんなる経験の差だよ。すぐにルイズたちにも出来るようになる」

「……出来るようになるでしょうか? 先生ほどの観察眼を身につける自信がありません」


 ルイズが首をかしげる。


「難しい気がするにゃ~」


 猫神族の美少女も首をかしげる。


「師匠じゃないと何年経っても無理そう」


 青髪の精霊族が言う。

 そんな事はないと思うけどな。

 俺たちは魔物の死体から魔石と素材を回収した。

 そして、無限収納のカバンに入れる。


「三人とも能力をずいぶん使いこなせるようになっているな。この調子でドンドン魔物を狩ろう」

「はい」

「沢山、魔物を倒したら、報酬が沢山! ご飯が沢山食べられるにゃ~♪」


紅茶色の髪の猫神族が、嬉しそうに鼻歌を歌い出す。ノリノリだな。


「ん。デザートを10人前食べる」


 エルフリーデが水色の瞳を輝かせる。 

食べても良いけどお腹を壊さないようにね。


「武器の点検をしたら、森の奥に入る。良いな?」


 俺が言うと、希少種の美少女たちが力強く返事をした。





 

 その後、50匹を超える魔物を倒した。

 元弟子の美少女三人は、恩寵者ギフターで開花した能力を十全に使えるようになった。


 生来の格闘センスが並外れている。

 正午になり、昼食を取ることにした。

 森の開けた場所で焚き火をする。

 そして、調理道具を無限収納のカバンから出して料理をした。


「先生、何か手伝える事はありますか?」


 ルイズが聞く。


「大丈夫だ。俺は料理ならプロレベルだからな」


 俺は冗談で言った。

 まあ、プロというのは大袈裟だが、そこそこ料理は得意だ。

 というか、料理をするのが好きだ。


「さすが先生です。なんでもお出来になるのですね」

「カインはプロの料理人なんだね♪ 凄いにゃー♪」

「調理道具もプロらしく、すごく立派。楽しみ」


 美少女たちが、俺がプロの料理人だと信じてしまった。

 いかん。ハードルが上がった。

 あんまり、簡単に信じないで欲しい。


 まあ、期待させたのは俺の責任だ。

 頑張って美味しいものを作ろう。

 

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