第23話 永久機関(下)


『うおおおおすげええええ!』

『またサブマリンアタックか!』


「ヒュゴ……!?」


 そして、今度はそのまま、ヒュドラの首に噛みついた。


「うおおおおおお!!!!」


 ガブリ。


 【嚙み千切る】スキルの発動だ。

 僕はヒュドラの首をそのまま噛み千切った。

 そしてもぐもぐ、飲み込んでしまう。


「おりゃああああヒュドラの踊り食いじゃああああ!!!!


『うおおおおおおすげえええ!』

『それは草』

『ヒュドラ踊り食いは草』

『後ろとったの賢いな』

『こうなりゃこっちのもんよな』


 ヒュドラを食って、僕は体にさらなる力が湧いてくるのを感じていた。

 たしかに僕のステータスはすでにカンストしている。

 だけど、ヒュドラを食うとなんだかパワーアップした感じがある。

 もしかしたら、ステータスだけではわからない力があるのかもしれない。

 僕がヒュドラを食った直後、またヒュドラの首はにょきにょきっと生えてくる。

 だが――。


「だったら、もう一回食えばいいだけの話だ! こっちはお腹が減って、たまんないんだから……!!!!」


 生えてきたばかりの首に、僕はまた噛みついた。

 んで、食う。

 もぐもぐむしゃむしゃ。


 すると、また首が生えてくる。

 だけど、それもまた食べる。

 これもう、無限おかわりバイキングじゃないか!


『草wwwwwww』

『無限おかわり編はじまったwwww』

『どんだけ食うんだよwwww』


「うおおおおお! 食の永久機関が完成しちまったなああああ!!!!」


 ヒュドラを食うたびに、僕のなかでさらに力がみなぎっていくのを感じる。

 ステータスにはもう反映されてないはずだけど、でも、なんだか力を感じるのだ。

 それに、ヒュドラうめえ!

 こっちは【空腹】のせいで、ずっとお腹が空いているんだ。

 それにいくら食べても、お腹がふくらまない。

 それどころか、気持ちはどんどん強いモンスターの肉を欲してしまう。

 もしかしてこれが【暴食】の副作用?

 とにかく、僕は無我夢中でヒュドラを喰らい続けた。


「うおおおおおおおおお!!!!」

「ヒュゴオオオオオ!!!?」


 生きたまま何度も首をむしられているせいで、ヒュドラも苦しそうだ。

 だが、ヒュドラは不死身で、一向に死なない。

 苦しみだけがヒュドラを襲う。


「死なないんだったら、痛みで自殺したくなるまで、延々に喰らってやらぁ!」

「ヒュゴオオオオオ!!!!」


 僕は何度もヒュドラを喰らった。

 そのたび、ヒュドラは死にそうな顔をして、悶絶する。

 だが、ヒュドラはまた生えてくる。


『いつまで食うんだよwwww』

『画面ずっといっしょwww』

『もうヒュドラかわいそうw』


 いったいあれから何時間喰い続けたのだろうか。

 僕はヒュドラを食いまくった。

 すると、だんだんと、ヒュドラの再生スピードが遅くなっていってるのを感じた。

 ヒュドラが再生するよりも、僕の食べるスピードが速い。

 

「おらぁ! おかわりもっともってこい!」


 最終的に、ヒュドラはそれ以上再生することはなくなった。

 ヒュドラ自身が、もう痛みに耐えられなくなったのだ。

 ヒュドラは自分自身で、再生することをやめた。

 ヒュドラは痛みに耐えかねて、ついに自殺したのだ。

 動かなくなったヒュドラを、僕は鱗ひとつ残らず、全部食ってやった。

 

「ふぅ……ごちそうさまでしたっと」


『うおおおおすげええええ!!!!』

『不死身に勝ってしまったwwww』

『他にどうやって倒すんだよ』

『沙宵くんじゃないと倒せないやん』

『完食!!!!』


 そしてなんと、ステータスにも変化があった。

 どうやら、文字化けしてしまって、よく見えない。

 もしかして、バグった……!?

 あと、スキルがめっちゃ増えた。



 名前:霧夜きりや沙宵さよい

 レベル:1

 HP:β,#9r,99C

 MP:9,9&9,vД9

 攻撃:%,9Δ9,G99

 防御:9,@9j,99F

 魔法攻撃:9,!9V,99Λ

 魔法防御:$,99Ψ,99M

 敏捷:¥,99B,99H

 運:9,9Α9,9?9

 スキル:【空腹】【悪食】【毒耐性】【暴食】【嚙み千切る】【神速】【強打】【火炎斬り】【毒牙】【毒の息】【穴を掘る】【魔力探知】【不死身】【自己再生】【炎の息】【氷の息】【メガヒール】

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