第12話 捕食ひ捕食(下)
リザードマンを倒して、フロアボス攻略――僕は晴れて別の階層に移れる、そのはずだったのだが……。
「あれ……? おかしいな……?」
一向に、別フロアへ移動するための階段が出現した気配がない。
まさかとはおもうけど……。
『マジか……リザードマンがフロアボスじゃなかったってことか?』
『あれよりも強いやつがいるのかよ……』
『狼でもなかったしな』
『絶望……』
「まあ、そういうことになるよねぇ……」
コメント欄の言う通り、どうやらあのリザードマンはフロアボスというわけじゃなかったようだ。
まだまだこの階層からは抜け出せそうにないね。
この階層には、まだリザードマンよりも強いモンスターがいるってことになる。
どんなモンスターかは知らないけど、脱出するためには、そいつも倒すしかないね。
僕はまた、あてどなくダンジョンを歩き始めた。
とにかくお腹が空いていて、はやく次のモンスターを倒したいって感じだ。
「うう……お腹空いたぁ…………」
僕は涎をたらしながら、牙を剥きだしにして歩く。
その姿はまるで――。
『ゾンビみたいだな……』
『なにかにとりつかれたみたいだな……』
『正直ホラー』
『沙宵くん、気をしっかり』
どうやら僕は傍からみたらかなり不気味に見えるみたいだ。
だけど、そんなの気にしていられるほど余裕ない。
とにかくはやくなにか食べたくて、僕はたまらなかった。
気が付くと、同時接続数は40万人になっていた。
これ……バズってやつなのかな……。
まあいい、そんなのはどうでもいい。
今はとにかく空腹を満たしたい。
配信の同接数で腹が満ちるわけじゃないからな。
スパチャ(投げ銭)もバンバン飛んできているけど、今はそんなものを読んでいる余裕ない……。
それに、お金がいまいくらあっても、ここから生きて帰れない限り、意味のないことだ。
しばらくダンジョンを行くと、今度は大蛇に出くわした。
全長10メートルくらいはありそうな、毒蛇だ。
キラースネークっていう名前だったはずだ。
「シャー!!!!」
今までの僕なら、怖くて逃げだしていたような相手だ。
だけど今の僕には、もはや食べ物にしか見えない。
僕には美味しそうなケーキに見えるね……!
「おりゃあああ! いただきまあああああす!!!!」
僕は満面の笑みで、大蛇にとびかかった。
まさか大蛇も、僕のような小さな人間が、いきなりとびかかってくるとは思わなかったようで、大蛇は驚いたようにひるむ。
大蛇は僕を丸のみにしようと近づいてきたようだけど、残念でした、丸かじりするのは僕のほうです!
「うおりゃあああああ! がぶ!」
僕は大蛇にかぶりついて、そのまま食いちぎる!!!!
『草wwwwww』
『大蛇もびっくりしてるんよwwww』
『もはやどっちが捕食者なのか』
『誰よりもこいつがモンスターだろ』
『食欲旺盛すぎるwww』
『修羅』
『てかキラースネークって毒あるくね?』
『いや、霧夜は毒耐性持ってるから大丈夫だぞ』
大蛇の肉を飲み込むと、苦い毒っぽい味が僕の口の中に広がった。
まあ、味はこのさいどうでもいい。
毒でもなんでも、とにかくこの腹を満たしたい。
だけど、食べても食べても、腹は満たされるどころか、飢餓感を増していく。
地獄だ。
とりあえず、キラースネークを食べたことで、僕のステータスがまた上がった。
そして、スキルも増える。
名前:
レベル:1
HP:103,958
MP:19,708
攻撃:23,474
防御:17,567
魔法攻撃:8,642
魔法防御:15,075
敏捷:19,797
運:12,729
スキル:【空腹】【悪食】【毒耐性】【暴食】【嚙み千切る】【神速】【強打】【火炎斬り】【毒牙】【毒の息】
僕に噛み千切られて、キラースネークは痛みのあまり、のたうち回る。
このまま食べてもいいけど、暴れられるのはめんどうだ。
僕は【火炎斬り】を放った!
――ズバ!
大蛇を5分割。
大蛇はそれで息絶えた。
ちょっと焦げ目がついて、おいしそうだ。
僕は大蛇を丸のみにしていった。
「うん、なかなか美味しかったな……」
モンスターって最初は独特の味がして、食べなれなかったけど、だんだん食べなれてきたな。
こうしてみると悪くない。
まあ、なにか調味料でもあればもっと違うんだろうけど。
だけど、今の僕にとってはモンスターの味なんかよりも、たくさん食べることのほうが重要だった。
とにかく僕はお腹が空いていた。
『なんかもうすっかりあたり前のようにモンスター食べてるなw』
『いったいどんな味なんだ……?』
『普通のモンスターも毒あるからな。真似するなよ』
『まあ、毒耐性とか悪食のスキルがある霧夜にしかできないわな』
『真似して死ぬやつが出てくるに1万ペリカ』
まだまだお腹が空いている。
僕は次なる獲物を求めて、ふたたびダンジョンを歩き出す。
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