第16話 最奥へ(下)
さて、フロアボスを倒したぞ……!
『うおおおお!』
『おめでとう』
フロアボスを倒すと、フロアに、別の階への移動魔法陣が出現するはずだ。
「お……!」
さっそく僕の足元付近に、転移魔法陣が出現した。
転移魔法陣は、上の階へ移動するものと、下の階へ移動するものの二つだ。
はぁ……あとこれを7428回繰り返さないといけないのか……。
そう思うと気が滅入るな……。
だけど、上の階へ戻っていくのは、かなり楽なはずだ。
上の階へいくほど、モンスターは弱くなるわけだからね。
戻るのなら楽勝さ……!
……っと、ちょっと待てよ。
そこまで考えて、僕はいったん考えをあらためる。
たしかに、このまま普通にダンジョンを上に上がっていって、脱出を目指してもいいだろう。
だが、ここはダンジョンの未到達地域、深層7429階だ。
もう一度ここまで戻ってこようと思ったら、またかなりの時間がかかる。
ダンジョンもさすがに無限に続いているってわけでもないだろうし……。
だったら、もしかしたら、上に戻るよりも、下に行って、ダンジョン完全踏破を目指したほうが、案外はやいんじゃないのか……?
それに、今の僕はステータス的にもほぼ最強だ。
このまま下に下っていっても、特に苦戦することはないだろう。
それどころか、僕はモンスターを倒せば倒すだけ、ステータスもスキルも強化されていく。
だったら、いっそのこと下に行こうじゃないか。
よし、目指すはダンジョン完全制覇だ……!
「うおおおおお!」
僕はダンジョンの下階行きの転移魔法陣に飛び乗った。
『は…………!?』
『なんで下……!?』
『草』
『こいつダンジョンと心中する気だよ……w』
『マジかwそっちいっちゃうかw』
『勇者やなw』
7430階へとやってきた。
ダンジョンの見た目は、さっきとあまり変わらない。
またフロアボスを倒さないといけないわけだけど……。
ちょっと面倒だよね。
僕にはある考えがあった。
「ちょっと試してみたいことがあるんだよね」
ゴーレムを倒したときに思いついたことだ。
『なにをするんだ……?』
『待て待て、はやまるな』
『怖い……』
僕は、ゴーレムから得たスキル【穴を掘る】を発動させた。
そして掘るのは、壁じゃなく……地面だ。
「うおおおおおおお!!!!」
――ドドドドドドドドド。
僕はひたすら、地面を掘り返す。
『ちょwwwwなにやってんのwww』
『ファ……!?』
『モグラか……?』
これは別に、ふざけているわけじゃない。
僕の仮説が正しければ……。
「うおりゃあああああああ!!!!」
しばらくダンジョンの地面を掘り進める。
すると――。
――ボコ!
下の階の天井へ、貫通した。
『マジかwwwww』
『うおおおおお!?』
『そんなのアリ……!?』
僕はすぐさま、堀った穴に入って、下の階へと飛び降りる。
「よし、これで7431階っと……」
見事に、ショートカットできた。
ダンジョンはようは、一直線に下へとつながっているのだ。
だからわざわざフロアボスを倒して転移門を待たなくても、こうやって下に掘り進めていけばいいってこと。
ゴーレムがダンジョンの壁や床を自由に移動していたことから、思いついたのだ。
『マジかーこれできるのか……w』
『ずるいwww』
『スキル奪える霧夜にしかできんなw』
よし、この調子で、どんどん下へと堀り進もう。
僕はさらに地面を掘った。
地面を掘っていると、たまに、鉱石や魔石にぶち当たった。
魔石はキラキラ輝く、魔力でできた石だ。
「魔石も……食べれるよね……。ゴクリ……」
しばらくモンスターを食わずに掘ってばかりいたから、お腹が空いていた。
今の僕には、魔石でさえもプリンのように見えた。
『おいおいマジかwww』
『魔石食うのかwww』
『魔石グルメやんwww』
『それ、食えへんで!』
僕は魔石にかぶりついた。
すると――。
名前:
レベル:1
HP:183,469
MP:31,830
攻撃:32,288
防御:27,949
魔法攻撃:16,364
魔法防御:19,976
敏捷:26,990
運:21,542
スキル:【空腹】【悪食】【毒耐性】【暴食】【嚙み千切る】【神速】【強打】【火炎斬り】【毒牙】【毒の息】【穴を掘る】
わずかにだが、僕のステータスが全体的に上昇した。
「おお……魔石にはステータス上昇効果もあるのか! こりゃあいいぞ!」
僕は掘って掘って掘りまくって、どんどん下層へと降りていった。
そして道中で出てきた魔石をどんどん食べて、どんどん強くなっていく……!
そんな繰り返しを、もう何時間も続けた。
いい加減に腕がだるくなってきたころ……。
ついに、僕はその場所へとたどり着いた。
『うおおおおお!?』
『ついにキター!!!!』
『前人未踏のダンジョン踏破か……!?』
『マジかよ偉業やん』
『生きてる間に見れるとは思わんかったわ』
『世界的なニュースになるわね……』
『いやもはやどこから突っ込めばいいかわからん』
『すごすぎて草』
ダンジョン配信の同時接続数は、5000万を突破していた。
いまや世界中の人が、僕を見守っているといってもいい。
一時はサーバーダウンもしたそうだ。
……
「9998……9999……っと。10000!」
僕はショートカットの末、深層1万階へと到達したのである。
そこは、静謐なフロアだった。
モンスターの気配はなく、ただ静寂が広がる。
黒曜石でできた壁に、うっすらと明るいダンジョン内。
水がぽたぽた落ちる音がしていて、ダンジョンの壁の付近には泉ができている。
「ここが……ダンジョンの最奥……?」
まだ僕は自分の身に起こったことが信じられないという気持ちでいっぱいだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます