第14話 炎上(下)

 325: 名無しのダンチューバー

 おいw

 上尾のこと暴露屋に流したの誰だよwwww


 326: 名無しのダンチューバー

 マジかwwww

 酷いことするなwwww


 327: 名無しのダンチューバー

 あんな奴暴露されて当然やろ

 痛い目見ればいい


 328: 名無しのダンチューバー

 あーでも俺暴露屋も嫌いなんだよな

 正義ぶってて


 329: 名無しのダンチューバー

 お前そんなこと言ってると暴露屋に消されるぞ

 あいつハッキングの腕もいいからな



 ◆



 暴露屋――というのは、大人気暴露系ダンチューバーの闇雲ユランのことである。

 通称暴露屋ユランの名前で知られている彼は、その名の通り、有名人のスキャンダルなどをSNS上で暴露し、炎上させることを生業としている。

 その過激な芸風から、嫌う人も多いが、最もみられているダンチューバーのうちに一人である。



 ◆



「はいどうもー! 暴露屋チャンネルへよこそー! 今日も暴露しまくっちゃいますよー!」


 画面に映るのは、仮面で顔を隠した青年。

 その声も、変声期で変えられており、正体は一切わからないようになっている。

 暴露屋の生配信の同時接続数は、50万人にも上る勢いだった。

 みんな、暴露屋が上尾のことを話すと知って、やってきたのだ。


 コメント欄も加速する。


『よ! 待ってました!』

『正義のみかた!』

『はやく上尾の野郎を社会的に殺してくれ!』

『どんな情報が待ってるんだ……?』

『スレとかSNSで見た情報ばっかだったらつまらんな』


 そんな期待と不安交じりのコメント欄に、暴露屋は嬉々としてこたえる。


「大丈夫! みんなが知らないような情報ももってきたよー! ちゃんと暴露するから、みとけよみとけよ~」


『うおおおおおお!!!!!』

『はやくはやく!』

『あくしろよ』


 暴露屋がぱちんと指で合図すると、画面に上尾の顔写真が映し出された。


「はい、まずねぇ。今日暴露していくのは、この男についてだね~。名前は上尾うえお秋介しゅうすけくん。彼は吉野高校の2年4組。出席番号は2番だね~えーっと生年月日はっと……」


 暴露屋は容赦なく、上尾について調べ上げた情報を晒していく。

 それにともなって、コメント欄やスパチャも加速する。


『FOOOOOOO!!!!』

『やったれ!』

『ひどいなぁw高校生の個人情報全部さらすとかw』

『上尾ざまぁwwww』


 次に、画面には霧夜沙宵の顔写真が映し出された。


「はい、この子。霧夜きりや沙宵さよいくん。彼は普通の男の子だねぇ。なんと上尾は、この普通の優しそうな高校生である、霧夜くんを、いじめていました! ひっどいですねぇ……。だから、こいつは徹底的に、社会的制裁を加えようと思いまーす!」


 それから、上尾に関する様々な情報が暴露されていく――。

 それは、知られたくないような過去のことまで……。


「なんと上尾くんは中学生のころはいじめられていたみたいだね~。そのときの恥ずかしい写真がこちら。まったく、自分もいじめられっ子だったのに、いじめでやり返すなんて、酷いやつだよね~」


 画面に映し出されたのは、今とまったく違った見た目の上尾――その上尾が下半身を丸出しにして、いじめられている写真だった。お尻にはマジックで落書きをされている。

 

『マジかよ……最低だな……』

『くっそ情けない姿で草』


「しかも上尾は最近、クラスメイトの盗撮もしているみたいだね~。監視カメラにばっちり映ってるよ~。学校の先生は上尾の進路に配慮してもみ消そうとしたみたいだけどね~。これ、僕のSNSにリークが送られてきました~。やっぱ上尾くん嫌われてるんだね~」


『うわ……きも……』

『上尾普通に犯罪者じゃん……』

『ドン引きだわ……』

 

 それから、今度は来栖と双葉の写真が画面に映し出された。


「次は、上尾とつるんで霧夜くんをいじめていたこいつらにも制裁を下すよ!」


『待ってました!』

『きました……!』


「まずは来栖くんだね。こいつ、バイト中にバイト先の冷蔵庫で全裸になって遊んでました! バイトテロってやつだね~。来栖くんの友達からのリークだよ~。来栖くんがインスタのストーリーにあげてた動画も証拠としてありまーす」


『うわぁ……www』

『これは炎上するwwww』

『馬鹿だなぁ……』

『おさるさんかな?』


「えーっとねぇ。どうやら上尾くんは双葉さんのことを彼女だと思ってるみたいだけど。残念! 双葉ちゃんは来栖くんにNTRれています……!」


『マジかよwwwww』

『上尾情けねえwwwww』


「上尾くんを利用するために近づいたみたいだね~。双葉ちゃんは上尾くんのお金と地位が目当てみたいだね。あ、それと……双葉ちゃんは来栖くんも本命じゃないみたいだね~。双葉ちゃんの本命彼氏は大学生の子みたいだよ~」


 画面には、双葉が大学生と交わしたSNS(LINE)のメッセージが映し出された。

 双葉はかわいい絵文字を使って、必死に媚びを売っている。


『マジかよwww』

『ヤリマンじゃねえかwwww』

『双葉ちゃんビッチwwww』


「まあ、大学生くん的には双葉ちゃんとは遊びみたいで、本命じゃないみたいだけどね~。笑っちゃうよねwwww。あ、ちなみに……。双葉ちゃんと大学生くんの卑猥な動画ほしいひといる……? 実はね~大学生くんから手に入れれたんだ~。てか、大学生くん、双葉ちゃんの動画、R18サイトで売ってたみたいだよw酷いねぇwそっちはメンバー限定で公開しちゃおっかな~」


『マジかよwwwww』

『大学生くん最低男だなwwww』

『双葉ちゃんかわいそうwww』

『FOOOO双葉ちゃんの動画キターーーー!』


「ちなみに、その大学生も最低だと思うから、こいつの名前と大学名も晒しちゃおう!」


『最低だwwww』

『ひでえええwwww』

『さすがは暴露屋、容赦ないな』


 暴露屋によって、上尾たちの知られたくない過去や秘密が暴かれていく。

 上尾の悪事は瞬く間にSNSで広がり、暴露屋のもとに情報が集まってくる。

 一度回りだした悪意の歯車は、止まらない――。




============

【あとがき】


もしよかったら♡や☆での応援よろしくお願いします。

モチベーションにつながります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る