第27話 再会(上)


【霧夜沙宵は黄昏ダンジョンをクリアしました。ダンジョンコアを体内に取り込んだことで、ダンジョンマスターを霧夜沙宵と認めます】


 その音声が僕の脳内に流れた直後――


 ――ゴゴゴゴゴゴゴ。


 ものすごい音とともに、ダンジョン全体が揺れ始めた。

 ダンジョンコアを失ったことで、ダンジョンが崩壊するのかもしれない。


「わ……!?」


 一瞬、まばゆい光に包まれる。

 その直後、僕は【黄昏ダンジョン】の外に立っていた。


「ここは……」


 いつも黄昏ダンジョンに入るときにやってくる公園だ。

 ダンジョンの入り口ゲートは消滅している。

 ついにダンジョンクリアしたことで、ダンジョン自体が消滅したのだろう。


「やった……! ようやくダンジョンから抜け出せた……!」


 そう、僕はとうとう帰ってきたのだ。

 ダンジョンから抜け出し、この現実の世界に――。


 隣で浮いていたダンカメが、大量のコメントを次々に読み上げる。


『うおおおおおやったああああああ!』

『やったな!』

『ついにやったぞ!』

『ついに沙宵くんが生還したぞ!』

『おめでとう!』

『めっちゃすごい!』

『やべええええええ!』


 そういえば、黄昏ダンジョンには、僕以外の探索者も潜っていたはずだ。

 黄昏ダンジョンは比較的大きなダンジョンで、常にいろんな探索者が潜っている人気のダンジョンだ。

 ダンジョンがいきなり消滅したことで、ダンジョンの中にいた人たちはみんな、公園にワープしてきていた。

 みんな急にダンジョンが消えて、公園に吐き出され、なにがなんだかわかってない人ばかりだ。

 さっきまで戦っていたのに、急に公園に立っていたので、みんなまわりをキョロキョロしたりしている。

 中には、SNSを検索したりして、僕の配信にたどり着き、事態を把握している人もいた。


 コメント欄から、気になる情報が入ってくる。


『そういえば、上尾たちってダンジョン刑になったんだよな』


「え…………?」


 僕はずっとダンジョンの中にいたから、そんなのは知らなかった。

 自分が生き残るのに必死で、上尾のことなんかもはや存在自体忘れていた。

 そうなんだ、上尾たちはダンジョン刑になったんだ……。

 まあ、上尾のやったことを考えれば当然だろうね。

 ざまぁみろ、いい気味だ。

 まあ、僕はもう無事に戻ってこられたから、彼らと会うことはもうないだろう。

 正直、あんな人たちのことはもうどうでもいい。


『ちょっと待って、上尾たちのダンジョン刑で使われたダンジョンって、黄昏ダンジョンじゃなかったか……?』


「え…………? そうなの……?」


 だとしたら、上尾たちも黄昏ダンジョンの中にいたってことなのか……?

 てことはつまり、上尾たちもダンジョンから吐き出されて、この公園にいるのかもしれない……。

 僕が上尾だったら、こういう場合どうするだろうか。

 ダンジョン刑になって、運よくダンジョンから抜け出せた場合……そうなったら、こっそりその場から、どさくさに紛れて逃げようとするんじゃないか……?


「上尾たち……」


 僕は急いで、公園の裏道を探した。

 すると、そこには、鎖につながれたまま逃げようとする、上尾と来栖の姿があった。


「上尾…………」


「は…………!? 霧夜…………!? なんで……!?」




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