第26話 ダンジョンコア


 ヒュドラを倒したことで、僕は【自己再生】の能力を手に入れた。

 僕はさっそくそれを使ってみる。

 すると、失ったはずの僕の右腕が、にょきにょきと生えてきた。


「おお……!」


『やべええええ』

『すげええ』

『不死身じゃん!』


 腕まで生えてくるなら、これでいつでも怪我しても大丈夫だな。

 さて、ヒュドラを倒し、もう敵はでてこない……かな?

 僕はようやく、ダンジョンコアに近づく。

 ダンジョンコアは怪しく光っている。

 

「これ、どうしようかな……」


 ダンジョンコアを持って帰れば、高値で売れるのだろうか。

 しかし、僕はこのダンジョンから出たいのだ。

 どうやったらダンジョンクリアになるんだろうな。

 ダンジョンから出るには、ダンジョンコアを破壊しないといけないよね?

 だけど、どうやって破壊しようかな。


「握りつぶすか……?」


『やめてーーーーー!』

『もったいない!』

『貴重な研究材料がーー!』


 だけど、持って帰ろうとすれば、また1000階分、さかのぼって帰れないといけない。それは面倒だ。

 ここが最下層だとすれば、どこかに地上までの転移陣なんかがないのかな……?

 もしかしたらダンジョンコアを破壊すれば、転移陣が現れる仕組みだったりして?

 ダンジョンコアに触れても、なにも起きないから、やっぱり破壊するしかないな。


「よし……!」


 ダンジョンコアを破壊しようとしたそのときだった。


「う…………」


 衝撃的な頭痛が僕を襲う。

 だんだん目が熱くなっていく。

 耳鳴りもする……。

 ひどいめまいだ。


「なにか……食べ物を……」


 急に、お腹がめちゃくちゃ空いてきた。

 今すぐになにか食べないと、倒れてしまう。

 くそ……どうなってるんだ、さっきヒュドラをあれだけ食べたところなのに。


「ぐおおおおおおお……!!!!」


 俺はあまりにもの空腹にその場に倒れこんだ。

 やばい、今すぐになにか口にしないと。

 それも、とてつもない大きなエネルギーを持ったものを。


 しだいに意識が遠のいていく。

 それと同時に、なにか暴力的な破壊衝動に、意識が支配されていく感じがする。

 俺の魂が、なにかに喰われかけていた。


「なにか……なにか……食べないと……そうだ……!」


 俺は、手にダンジョンコアを握っていることを思い出した。

 ダンジョンコアといえば、その小さな丸い球体から、無限にも続くダンジョンを生み出し、モンスターを生み出している、強力なエネルギーの集合体だ。

 ダンジョンコアを食べれば、この空腹は満たされるはず……!

 俺は手に持ったダンジョンコアにかぶりついた。


「いただきまあああああす……!」


 ――ガブリ。


 コメント欄が阿鼻叫喚。


『ぎゃああああああああ!!!!』

『それはだめええええええ!!!!』

『とち狂ったか』

『ダンジョンコア食うはさすがに草』

『沙宵くん、ぺっしなさい、ぺっ!』


 ――もぐもぐ。

 ――ゴクリ。


 俺はダンジョンコアを丸かじりした。

 

「う、うまい……!!!!」


 ダンジョンコアは今まで食べたどんなモンスター、魔石よりも美味しかった。

 そして、俺の身体にすさまじいエネルギーが満ちるのを感じる。

 うおおおおおおおお!!!!

 今ならなんでもできる気がする。

 まるでスーパーマンになった気分だ。

 空腹や破壊衝動はとりあえず収まった。


 そのときだった。


 ダンジョン全体に、いや、俺の頭の中にだろうか、音声が響き渡った。

 その無機質な音声は、まるでゲームのシステムメッセージのようだった。



【霧夜沙宵は黄昏ダンジョンをクリアしました。ダンジョンコアを体内に取り込んだことで、ダンジョンマスターを霧夜沙宵と認めます】



「え…………?」




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