第9話 暴食(上)

 さっきと比べて、大幅にステータスが上がっている。

 っていうか……これ、やばくない……!?

 いちじゅう……って、HPに関しては万を超えている。


 しかも、他のステータスも4桁ばかりだ。

 下層のモンスターですら、3ケタステータスまでいけば強敵だ。

 深層ですら、4桁なんか未確認なんじゃないか……?


 しかも、スキルも【嚙み千切る】と【神速】が増えている。


『やべええええええええ……!!!!』

『キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』

『これはチート』

『これならもしかしたら生き残れるんじゃね?』

『これやべえだろwwwwww』

『最強か?』

『もうすでにSランク越えたな』


 コメント欄も大盛り上がりだ。

 僕も自分でも信じられない……。


「これ、もしかしたらこのまま頑張れば帰れるかも……!?」


 正直、うれしくてたまらない。

 ようやく僕は強くなれたんだ……!


「僕はモンスターを食べたら、強くなれる……!」


 このままモンスターを食べるのを繰り返していけば、いずれはもっと最強になれる。

 そうしたら、本当に帰れるかも!


『おめでとう!』

『これはいけそうだな』

『希望が見えてきた』

『死ぬなよ』

『がんばれー!』


「うん、ありがとう! みんな! がんばる……!」

 

 コメント欄とやり取りして、決意を新たにする僕。

 そうこうしていると……。

 

 洞窟の向こうから、なにやら足音がきこえてきた。

 足音は複数あり、だんだん近づいてくる。

 もしかしたら、この巣の主かもしれない。


「ゴブゴブ……!」


 洞窟の向こうから現れたのは、ゴブリンの集団だった。

 どうやら、この洞窟の主はゴブリンたちのようだ。

 

 ゴブリンたちは、自分たちが餌とするように置いてあった肉がないことに気づき、困惑している。

 お互いに顔を見合わせて、なにやら話している様子だ。

 そりゃあ、巣に戻ってきたら、狼の死骸が消えていたら、びっくりするよね……。


 でも、不思議だ。

 ゴブリンたち程度が、あの狼を倒して餌にできるとは思えない。

 おそらくはあの狼はもともと死んでいたか弱っていたのだろう。

 それをゴブリンたちが餌とするべく持ってきて、ここに保管していたのかな。


 もしくは、本当にゴブリンたちがあの狼を狩ったのかもしれない。

 集団で狩りをすれば、もしかしたら不可能ではないのかも?

 それに、ゴブリンとはいっても、こいつらは侮れない。

 上層にいるゴブリンとは違って、深層のゴブリンだ。

 それなりに強いはずだ。


 ゴブリンたちは、僕のことをじっと見ている。

 そして、僕と骨となった狼の死骸とを、何度も見比べる。

 状況証拠から、狼を食べた犯人が僕だと認識したようだ。

 ゴブリンたちは僕を敵だと判断し、襲ってくる。


「ゴブゴブ……!!!!」


 ゴブリンたちは間合いをとりながら、僕のことを囲うようにして近づいてくる。

 これは、戦闘は避けられそうにないね。


 どうしよう……。

 深層での初めての戦闘だ……。

 ほんとうに勝てるのだろうか。

 いや、【暴食】スキルのおかげで、いまや僕のステータスは深層でも通用するほどになっている。


 おそらくは、あの狼のステータスが、僕のステータスにそのまま上乗せされている。

 だから、僕の今の強さは理論上あの狼と同じ程度のはずだ。

 狼とゴブリンの力の差がどれくらいかはわからないけど……さすがに狼のほうが強いよね?


 そういえば、狼から得たスキルがあったな。

 使ってみよう。


「えい……! 【神速】――!!!!」


 僕がスキルを発動させると。

 ゴブリンたちの動きが、ひどく遅く感じられた。

 おそらくこのスキルは、自分のスピードを上げるスキルだろう。

 僕はゴブリンたちから見れば、ものすごいスピードで動いているに違いない。


「よし……! これなら……!」


 僕はものすごいスピードで、ゴブリンたちに襲い掛かる。

 ゴブリンたちはなすすべもなく、棒立ちだ。

 僕は狼の【嚙み千切る】スキルを使う……!


「ガブ……!!!!」

「ゴブ……!?」


 ゴブリンの肩に噛みつき、そのまま肉を食いちぎる。

 ゴブリンは驚きと恐怖の表情を浮かべる。

 そして、僕はそのままそれを食べた。


『うおおおおお……! いったあああああ!』

『ゴブリン生きたまま食ってて草』

『つええええええええ!』

 

 すると、身体にさらなる力がみなぎっているのがわかる。

 おそらく【暴食】スキルが発動して、ゴブリンのステータスを吸収したのだろう。


 

 名前:霧夜きりや沙宵さよい

 レベル:1

 HP:17293

 MP:8035

 攻撃:4270

 防御:3472

 魔法攻撃:1964

 魔法防御:1750

 敏捷:4948

 運:3202

 スキル:【空腹】【悪食】【毒耐性】【暴食】【嚙み千切る】【神速】【強打】



 ゴブリンから、【強打】のスキルをゲットしたみたいだ。

 僕はさっそく、それを使ってみる。


「うおおおおおおおおお!!!!」


 【神速】によるスピードも威力に上乗せされているから、すごい威力だ。

 僕はゴブリンたちを、片っ端から【強打】でなぎ倒していく。


 ――ズドドドドドドドドドドドド!!!!


「ゴブゴブううううううううう……!?!??!」


 僕はあっという間に、ゴブリン15体を撃破した。


「ふぅ…………」


 そしてもちろん、倒したゴブリンはすべて喰らう……!!!!


「いただきます……!」


 

 名前:霧夜きりや沙宵さよい

 レベル:1

 HP:38,447

 MP:11,045

 攻撃:15,736

 防御:11,424

 魔法攻撃:4,512

 魔法防御:9,044

 敏捷:14,328

 運:6,286

 スキル:【空腹】【悪食】【毒耐性】【暴食】【嚙み千切る】【神速】【強打】

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