第8話 悪食(下)

「毒……耐性……?」


 これは、スキルの説明なんかを見なくてもわかる。

 実際に僕の身体に起こったことからも、効果は明白だろう。


『うおおおおおおおおおお!』

『毒耐性キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』

『レアスキルじゃん』

『ついに来たな』

 

『これならキノコ食えるな』

『生き残ったああああああ』

『死ぬのかと思ったわ……』

『チャンネル変えるところだった』


『おめでとう』

『あぶなかったなぁ……』

『やっぱり深層だからスキル得やすいのかなぁ』

『そういうことだろうね』

『もしかしたら案外生き残れるかも?』


 僕は毒耐性を得たことによって、毒キノコを食べられるようになった。

 まだまだお腹が空いていたので、目の前にあったキノコを全部ほおばる。


「うん、美味しい。これは普通に食べられる」


 なんとかまともな食事にありつけた。

 だけど、【空腹】のせいか、まだまだお腹が空いている。

 このままだと、本当に餓死するような気がする。

 

 苔とか石とかキノコじゃあ、ろくに腹が膨れない。

 もっとこう、肉とかそういう、大きなものが食べたい。

 僕は食べ物をもとめて、ひたすら洞窟をさらに奥へと歩いていく。


 しばらく行くと、洞窟が行き止まりになっていた。


「ここで終わりか……」


 行き止まりになっていた場所は、すこし開けた部屋になっていた。

 そして、そこには巨大なモンスターの死骸があった。

 

「なんだろう……これ……」


 おそらく、ここは他のモンスターの巣なのかもしれない。

 食料として、モンスターの死骸をここにため込んでいるとか?

 とにかく、目の前には巨大なモンスターの死骸がある。

 おそらくこれは、狼系のモンスターだ。

 

「これ……勝手に食べたらだめかな……」


 僕はそんなことを考えつく。

 どうやらこのモンスターの死骸の持ち主はいないみたいだし。

 勝手に食べても、怒られないだろう。


『おい待てwwwww』

『モンスター食うのか……?wwww』

『さすがにそれはやばいだろ……』

『モンスター食うやつ初めてみた……』

『危険思考で草』


 やばい。

 こうしているあいだにも、お腹がすく。

 目の前に巨大な肉があるのに、耐えることなんてできない。

 もう我慢できない。


「いただきます……!」


 僕は目の前のモンスターの死骸にかぶりついた。


『うわ、マジで食いやがったwwwww』

『やべええええwwww』

『サイコすぎるwwwww』


 コメント欄が騒がしいけど、知ったことか。

 とりあえず僕は今、とてつもなくお腹が空いてるんだ。

 生き残るためなら、モンスターの肉だろうがなんだろうが、なんだって食ってやる。


 がぶり。

 がぶ。

 むしゃむしゃ。


 狼モンスターの肉に、僕は必死にかぶりつく。

 焼かずに、生のまま、動物の肉に食らいつく。

 骨が見え、筋肉が割け、血が噴き出す。

 

 自分の手が血まみれになるのにも構わずに、僕は目の前の肉を貪った。

 おいしい。

 本当に美味しい。

 肉を喰らうことが、こんなに満足感の高いことだなんて。


「はぁ……はぁ……ふぅ……」


『完全にやべえやつで草』

『グロすぎる……』

『なんだこれ……』


 狼肉を半分ほど食ったころだった。

 また僕の目の前に、メッセージが。



《スキル【暴食】を会得》

 

 

 とりあえず、僕はいったん食べるのを中断して、ステータスを開く。

 


 名前:霧夜きりや沙宵さよい

 レベル:1

 HP:15

 MP:3

 攻撃:8

 防御:6

 魔法攻撃:5

 魔法防御:4

 敏捷:6

 運:3

 スキル:【空腹】【悪食】【毒耐性】【暴食】


 

 この【暴食】ってスキルはどういうものなのだろうか。

 スキルの名前からして、【悪食】と大差ないように思えるけど……。

 僕はスキルの説明を確認した。



 【暴食】:食べた相手のステータスとスキルを会得することができる。※副作用あり。



「え…………なんだこれ…………」


 副作用ありという注意書きが少し気になるけど……。

 まって、これ……書いてあること強すぎない?

 だって、食べた相手のステータスとスキルを会得って……え?

 どういうこと……?


『なんだこのスキル……』

『やべえな……』

『きいたこともないスキルだな』

『これチートスキルきたんじゃね?』

『とりあえず、食ってみろよ』

 

 とにかく、僕はコメント欄の言う通り、とりあえず食べてみることにした。

 【暴食】スキルを持った状態で、モンスターの肉を食うとどうなるのか……。

 僕は、狼肉の続きを喰らう。


「うん……おいしい……」


 すると、さっきまでとは違う感覚。

 狼肉を食べると、僕の中に力が流れ込んでくる感覚があった。

 まるで、肉からパワーをすべて吸収しているかのような……。

 

「これで、ステータスとスキルを吸収できた……のか……?」


 食べ終わって、僕はおそるおそるステータスを開いてみる。



 名前:霧夜きりや沙宵さよい

 レベル:1

 HP:15782

 MP:7820

 攻撃:3451

 防御:2904

 魔法攻撃:1782

 魔法防御:1229

 敏捷:4278

 運:2981

 スキル:【空腹】【悪食】【毒耐性】【暴食】【嚙み千切る】【神速】

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