第11話 捕食ひ捕食(上)

 ゴブリンを倒したあと、僕はあてどなくダンジョンをさまよう。

 こうなったらもはや怖い物なしだ。

 僕は今やだれもが驚くような、最強ステータスを持っている。


 だけどなんだろう……。

 こう、すごく……。


「お腹すいたあああああああ!!!!」


 いったいどういうことなのだろうか。

 さっきからあれだけモンスターの肉を喰らっているというのに、僕の腹は一向に満たされない。

 どころか、ますます飢餓感が増していくばかりだ。


「ううう……なにか食べたい……」


『目やばくて草』

『怖い……』

『食いすぎだろw』

『もしかして、副作用?』


 コメントを見ていて、気づく。

 そうか、スキルの説明にあった副作用っていうのは、もしかしてこれなのかもしれない。

 とにかく、食べても食べても満たされない。

 これがスキルによる副作用だとしたら、最悪だ……。

 僕はこの先、永遠にモンスターを食い続けなければならないってこと……!?


 とにかく、先に進もう……。

 まずは、状況の整理だ。

 僕は今、深層7429階にいる。

 そして深層7428階に引き返すには、ここのダンジョンボスを倒さなければならない。

 この階層のダンジョンボスはおそらく、さっきのあのグレートリザードだろう。

 さっきはなすすべなく逃げ惑い、洞窟に隠れた僕だけれど……今は違う。


 今の僕なら、グレートリザードマンを倒せるかもしれない……!

 グレートリザードマンは僕という獲物を見失って、きっとまだ探しているはずだ。

 だったら、こっちから出ていってやる。

 っていうか……リザードマン食べたい……!!!!

 僕は食欲のままに、リザードマンを探した。

 見つけた……!

 僕はさっそく、リザードマンに石を投げる。


「おおおおおい! リザードマン! こっちだ……!」

「ガルゥウウウウ……」


 僕に気づいたリザードマンは、まっすぐにこちらに向かってくる。

 リザードマンは火炎斬りを繰り出した――!!!!

 リザードマンの持つ剣から、炎がほとばしる……!!!!


『やべえええ!』

『逃げてええ!!』

『さすがにヤバいのでは……?』

『いやまて、霧夜のステータスはSSS級だぞ』


 僕は咄嗟に、【神速】スキルを使った。

 身体をじょうずにくねっとまげて、僕は攻撃を避ける。


『うおおおおおお!』

『まるでサーカスだな……』

『すげええええええ』

『はやすぎて草』


 そしてそのまま、リザードマンの後ろに回り込む……!


「ガルぅ……!?」


 もうお腹が空いて、たまらない……!

 目の前のリザードマンが、僕には美味しいジューシーな肉の塊に見えた。

 僕は思い切り、リザードマンにかぶりついた……!!!!

 スキル【嚙み千切る】を発動だ……!!!!


『うおおおおいったああああああ!!!!』

『リザードマンの踊り食いや……!!!!』

『えぐいてw』

『なんでもありだなw』


 ――ブチィ!!!!


 僕はリザードマンの肩を噛み千切って、そのまま飲み込んだ。


「ギュオオオオオオオ!!!!」


 リザードマンがあまりの痛さにのたうち回る。

 リザードマンを飲み込んだことで、僕のステータスが上がる。


 

 名前:霧夜きりや沙宵さよい

 レベル:1

 HP:61,847

 MP:16,267

 攻撃:19,492

 防御:14,223

 魔法攻撃:6,051

 魔法防御:10,563

 敏捷:16,674

 運:7,518

 スキル:【空腹】【悪食】【毒耐性】【暴食】【嚙み千切る】【神速】【強打】【火炎斬り】



 さらには【火炎斬り】のスキルもゲットだ……!

 今ので僕のステータスはリザードマンのほぼ倍以上になった!

 これなら、一撃で仕留められる……!

 僕は剣を抜いた。

 そして――。


「【火炎斬り】――!!!!」


 さっそく手に入れたばかりのスキルを試す。


 ――ゴォオオ!!!!


 僕の剣は炎をまとい、リザードマンの首を切断した。


「よし……」


『うおおおおすげえええええ!』

『リザードマン倒した……!!!!』

『かっけえ』

『もう怖い物なしだな』


 倒したリザードマンの残りの肉も、食べておこう。

 あ、ちなみにだけど、たくさん食べたからといってそれ以上ステータスが上がったりはしない。

 ステータスが上がるのは、一体の魔物につき一回のみだ。

 とにかくお腹が空いていて、食べなきゃ死ぬ。

 僕はリザードマンにかぶりついた。

 しばらくもぐもぐタイムだ。


『やべぇ……この喰いっぷり……』

『もはやどっちがモンスターなんだろうな……?』

『最初の霧夜たんと全然ちがう……』

『俺たちの霧夜はどこ……?』

『グロ注意』

『霧夜沙宵もぐもぐシーン集の切り抜き上がってて草なんよ』

 

 リザードマンを食べつくしても、僕の食欲はとどまるところを知らなかった。

 いったい、僕の肉体はどうなってしまったのだろう――。

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