第40話 腹ごしらえ
朝起きると、すごくお腹が空いていた。
まあ、いつものことだ。
生きていれば、お腹は空く。
昨日は上尾たちのことを知って、かなりショックを受けた。
だけど、いつまでもくよくよしてなんていられない。
僕が責任感を感じる必要なんかないんだ。
そもそも上尾たちは、ダンジョン刑になって、もともと死ぬはずの人間だったんだし……。
それに、僕は一度上尾たちから殺されたも同然の扱いを受けたわけだ。
その僕が、上尾たちに復讐をしても、文句を言われる筋合いはないだろう。
ただ、やっぱり気分はよくないけどね……。
けど、それで僕が病んで自殺なんかしたりするわけにはいかない。
僕にはちょむちゃんがいるんだ。
僕がしっかりしないと、ちょむちゃんを守っていかないと。
「ふぁーあ」
「マスター、おはようございます」
「ああ、おはよう。ディーバ……って、早いね」
ディーバは僕のベッドのわきに立っていた。
いつからかはわからないがずっと僕の寝顔を見ていたようだ。
なんだか照れるな。
「い、いつからそこにいたの……?」
「いつからって? ずっとです」
「えぇ!? ずっと……!? ずっとそこで立ってたの?」
「そうです。他にすることもありませんでしたので」
「ね、寝ないで大丈夫なの……?」
「私はダンジョンが生成したダンジョンAIですので、睡眠はとくに必要ありません。もちろん、寝ることじたいは可能ですが……。マスターに寝ろと言われなかったので。それに、寝る場所もありません。もちろん、マスターが同衾を許可していただけるなら、そうしますが」
「そ、それは……ごめん。あと、同衾はダメでしょ……」
まさか僕が言わないと寝ないとは思わなかった。
このAIさんはどうやらかなり融通がきかないらしい。
「ごめん、ディーバの寝床も用意しておくよ」
「それは、ありがとうございます」
「えーと、とりあえず今から寝たほうがいいんじゃない? 僕のベッド使う?」
「構いません。先ほども言ったとおり、AIに睡眠は必要ありませんので。寝具を用意してくださるというなら、今晩からお願いいたします」
「そ、そう。まあ大丈夫ならいいけど。無理はしないでね」
「はい、マスター。お気遣いありがとうございます」
お腹が空いていたので、僕はディーバと自宅のダンジョンへと向かった。
ダンジョンに入ると、そこにはスライム、ゴブリン、吸血コウモリが闊歩していた。
時間が経過して、モンスターが復活したのだ。
「とりあえず、朝ごはんといくか。難しいことを考えるのはその後だ」
僕は無我夢中でモンスターを食べまくった。
すると今度は、DPが10000まで溜まった。
「よし、このDPはなにに使おうか」
「そうですね、もう一種類モンスターを追加するというのはどうでしょうか。マスターの食欲はすさまじいようなので……」
「そうだね、この先もっと食料が必要になるかもだもんね……」
僕は、まだ生きないといけない。
「じゃあ、これ」
僕は10000DPを消費して、【オーク】をモンスタープールに追加した。
するとダンジョン内に大量のオークが現れた。
「おお、オークはかなり大きいし、なかなかお腹がふくらみそうだ!」
僕はオークもあっという間に食べつくした。
オークを全部食べると、DPが3000ほど戻ってきた。
なるほど、だいたいダンジョン運営の仕組みはわかってきた。
こうやってモンスターをスポーンプールに追加して、それを狩ってDPを手に入れる。DPが溜まれば、また新たにモンスターの種類を増やす。
これを毎日少しづつ繰り返していけば、ダンジョンはどんどん発展するというわけか。
僕としては日に日に食欲が増していっていて、どうしようかと思っていたけど、このダンジョンがあれば大丈夫そうだな。
世界中探してもダンジョンを食糧庫として使ってる人間なんて僕くらいなものだろうな……。
よし、腹ごしらえも済んだことだし、いったんダンジョンの外に出るか。
僕はダンジョンから抜け出した。
んで、ちょむちゃんにも餌をやって……っと。
僕はちょむちゃんにキャットフードをあげた。
ちょむちゃんは一気にキャットフードを平らげた。
しかし、どうやら不満そうな顔をしている。
ちょむちゃんのお腹が、ぐうとなる。
「どうしたのちょむちゃん? まだお腹空いてるの……?」
でも、いつもより多めにあげたんだけどな。
子猫から、シルバータイガーに進化して、身体も大きくなったから、これじゃあ足りないのかなぁ。
けど、キャットフードはそんなにたくさんはないんだけどな。
すると、ディーバが口を開いた。
「マスター、もしかしたら、ちょむちゃんにはそれよりも、お肉をあげたほうがいいかもしれませんね」
「お肉……?」
「ええ、そうです。お肉です。シルバータイガーは肉食ですから。普段はダンジョンで他のモンスターの肉を食べています」
「なるほど、そうなのか」
だったら、と思い、僕はすぐさま近所のスーパーへダッシュして、牛肉をかってきた。
んで、ちょむちゃんにお肉をあげてみる。
すると、ちょむちゃんは嬉しそうにお肉をたいらげた。
「なぁお♪」
「よかった! 気に入ったみたいだね!」
どうやらちょむちゃんも僕といっしょで、前よりも食いしん坊になったみたいだ。
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