第35話 ダンジョン生成
ちょむちゃんも無事だったことだし、これで一安心だ。
ていうか、安心したらまたお腹が空いてきたな……。
ちょむちゃん、大きくなってなんだか肉付きがよくなった。
って……だめだ、ちょむちゃんを美味しそうだなんて思うなんて。
ほんと、僕はどうかしている。
大事な愛猫を食うわけないじゃないか。
でも、とにかくこの空腹はなんとかしないとまずいな……。
だけど、何を食べても美味しくない。
家にあったものを適当に口に入れてみるけど、砂利を食べているような気分で、すぐに吐き出してしまう。
「せめて飲み物だけでも飲みたいよな……」
僕はダメもとで、大好きなコーヒーを淹れてみる。
毎日コーヒーを飲むのが日課で、コーヒーは僕の大好物だった。
ダンジョンに潜っていたあいだはコーヒーを飲めなかったから、久しぶりに美味しいコーヒーが飲みたい。
だけど、もしかしたらコーヒーも飲めなくなっているかもしれない。
さすがに大好物のコーヒーまで飲めないとなると、ほんとに絶望だ。
「よし……」
僕はいれたてのコーヒーを、恐る恐る口に運ぶ。
たのむ!コーヒーはそのままの味であってくれ……!
「うん……おいしい……!」
なんと驚いたことに、あれほどなにを食べても飲んでも美味しく思えなかった僕の舌だったが、コーヒーだけは以前と変わらず美味しくいただくことができた。
これはめちゃくちゃうれしい。
よかったぁ……大好物まで食べれなくなったらどうしようかと思ったよ……。
「いやぁ……久しぶりのコーヒーはやっぱ美味しいなぁ……」
だけど、コーヒーだけじゃ全然お腹は満たされない。
なにか食べ物を食べないとな。
やっぱり、なにか食べるにはダンジョンにいかないといけないか……。
モンスターはどれも普通に美味しく食べることができたからな。
じゃあ、僕は今後モンスターしか食べれないってことなのかな……?
いや、でもダンジョンの魔石や苔もそれなりに美味しく食べれたしなぁ。
もしかしたら、魔力が関係しているのかも……?
ダンジョンの中にあるものはどれもそれなりの魔力を含んでいる。
魔力を含んだものなら、美味しく食べれるってことなのかもしれない。
とにかく、どうやら僕の身体はもはや普通の食事を受け付けない。
ていうかそもそも、なんで僕はこうなってしまったんだろうか?
やっぱり暴食スキルの副作用なのかな。
僕は自分のステータスを眺める。
名前:
レベル:1
HP:β,#9r,99C
MP:9,9&9,vД9
攻撃:%,9Δ9,G99
防御:9,@9j,99F
魔法攻撃:9,!9V,99Λ
魔法防御:$,99Ψ,99M
敏捷:¥,99B,99H
運:9,9Α9,9?9
スキル:【空腹】【悪食】【毒耐性】【暴食】【嚙み千切る】【神速】【強打】【火炎斬り】【毒牙】【毒の息】【穴を掘る】【魔力探知】【不死身】【自己再生】【炎の息】【氷の息】【メガヒール】【ダンジョン生成】【ダンジョンマスター】【ライトニング】
「あれ……? なんか増えてない……?」
ステータスを見ていて気付いたんだけど、なんか僕のスキル、また知らない間に増えてないか……?
ヒュドラを食ったところまでは覚えてるんだけど、このスキルはいったいなんだ……?
ダンジョン生成って、どういうことだ……?
あと、ライトニングっていうスキルにも覚えがないな。
こんなスキルいつ覚えたんだろう。
最後に食べたモンスターはヒュドラだし、そのあとにはなにも食べてないはずだけど……。
あ、いや、ダンジョンコアを食べたんだった。
じゃあこのダンジョンマスターとかダンジョン生成ってやつはダンジョンコアを食ったせいなのか……?
でもそれならライトニングは……?
うーん、よくわからない。
まあ、いいか……。
「ダンジョンマスターに、ダンジョン生成か……いったいどういうスキルなんだろう……」
そのときだった。
僕の頭の中に、無機質な女性の声が鳴り響く。
【ダンジョンマスター霧夜沙宵の命令により、『霧夜沙宵の自宅』にダンジョンを生成します】
「え……? うわ……! わわわ……!?」
僕は独り言のつもりだったのに、スキルが発動してしまった。
これってキャンセルとかできないのか……!?
ダンジョンの外でスキルを使ったことがバレたら、違法行為で罰金だ。
幸い、自宅だから誰にもバレることはないだろうけど……。
でも、ダンジョン生成が発動したってことは、なにが起こるんだ……!?
今、僕の自宅にダンジョン生成するとかって言ったよな……?
それってつまりどういうこと……?
なにが起こるっていうんだ……!?
【霧夜沙宵自宅に、『ダンジョン Lv1』を生成しました。マスター、次の命令を】
「わああああ……!? なんだこれ……!?」
その瞬間、僕の家のリビングに、ダンジョンへの入り口――ゲートと呼ばれる門が現れた。
まさかダンジョン生成って、ほんとにダンジョンを生成するスキルだったの……!?
ていうか、しれっと僕の家の中にダンジョンできちゃったんだけど……!?
これってやばくないか……?
ダンジョンが家にできたって、どうすればいいんだ。
こんなこと、普通はありえない。
しかも、僕がマスターって、じゃあこれは僕のダンジョンだっていうことか……?
自宅にダンジョンなんて、他人にどういえばいいんだ。
これからどうしよう……。
――ぐぅ。
僕のお腹が鳴る。
目の前にダンジョンが現れたってことは、その中には当然、モンスターがいるはずだ。
今の僕はとってもお腹が空いている。
目の前にモンスターという唯一の食料があるのに、食べるのを我慢するなんてできない。
このままじゃ、なにか食べないと死んでしまいそうだ。
こうなったら、背に腹は代えられない。
モンスターがいるなら、もうなんでもいい。
家の中のダンジョンだろうが、なんだろうが。
「とりあえず、中に入ってみるか……?」
僕は腹を決めて、恐る恐るゲートの中に足を踏み入れた。
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