第43話 デート


 桜さんと喫茶店で過ごしたあと、僕らは映画を見て、いろいろ楽しんだ。

 こんなふうに女の子とデートみたいなことをするのは初めてのことだった。

 僕がこんなに幸せでいいんだろうか。

 いちおうお金は全部僕が払ったけど、これじゃあなんのお礼にもなってないよね……。


「桜さん、今日は本当にありがとう。もっとなにかお礼をしたいところなんだけど……」

「だから、お礼はいいっていったじゃない。友達になってくれるんでしょう?」

「それは、そうだけど……」


 でも、友達になる、なんてお礼でもなんでもない。

 まあ、彼女がそれでいいというのだから、それでいいのだろうけど。

 

「僕にできることがあったら、なんでも言ってね」

「うん、わかった。なにかあったら言うね」


 いちおう、僕もなにか考えておこう。

 そうだ。

 なにかプレゼントするのはいいんじゃないかな?

 映画館を出たあと、僕らはショッピングモールをブラブラと散策していた。

 そこで目についたのが、ジュエリーショップだった。


 僕は桜さんの手をひいて、ジュエリーショップへと入る。


「ねえ、これなんか桜さんに似合いそう」


 僕は桜色のジュエリーを指さした。


「えぇ……。でも、私ジュエリーとかはいらないわよ」

「そんなこといわずに、きっと似合うよ」

 

 桜さんは、アクセサリーなんかをまったくつけていなくて、とても清楚で真面目そうな雰囲気の女性だ。

 だけど、とっても美しい。

 そんな彼女がこのジュエリーを身に着けたら、どんなにきれいだろうかと思う。


「あの、これ試しにつけてもいいですか?」

「どうぞ」

 

 店員さんに言って、試着させてもらう。


「もう……いいのに……」


 桜さんは照れて遠慮しながらも、ジュエリーを首から下げた。

 すると、その桜色のジュエリーが、ほんとうによく似合った。

 もともと綺麗な桜さんの笑顔をより魅力的に引き上げる。


「桜さん、これ、僕からプレゼントさせてもらってもいいかな? もちろん、これだけがお礼ってわけじゃないけど……」

「そんな……。いいわよ。私、どうせ似合ってないでしょ?」

「そ、そんなことないよ! めちゃくちゃ可愛い。綺麗だよ……!」


 僕が桜さんの手をとって、そう力説すると、彼女は顔を赤くして照れた。


「もう……。沙宵くんたら……」

「ね! 絶対買ったほうがいいよ!」

「でも……これすごく高いし……」

「値段なんか気にしないで。僕はこれでも世界的なダンジョン配信者なんだから。お金はたくさんあるよ」


 これまでの配信で稼いだお金が、口座にはとてつもない金額が溜まっていた。

 このくらいの宝石、なんてことはない。


「もうお礼は十分してもらったよ? 私、今日一日楽しかったんだから。それでもう十分だよ」

「うーん、じゃあ。これは僕からのお礼じゃなくて、純粋なプレゼント。僕がただ君にあげたいからプレゼントする。そういうことなら、受け取ってもらえるかな?」

「それじゃまるで……恋人みたいね……」


 たしかに、男女で宝石をプレゼントするなんて、恋人みたいだ。

 僕はただなんとなく、この宝石が桜さんに似合うから、あまり意識せずに言ったんだけど、たしかに言われてみれば、大胆だったかもしれない。


「……そ、そうだね……。けど、友達同士でも、べつにプレゼントは普通だよ」

「わかった。じゃあ、ありがたくもらうわね」

「うん、そうして」

「まあ、私は恋人になってもいいんだけどね……」

「え……?」


 桜さんはなにかを小声で言ったのだけど、僕にはあまりちゃんときこえなかった。


「ううん、わすれて。宝石、ありがとうね。大事に使うわ」


 桜さんみたいなきれいで優しい人が恋人だったら、どれだけいいだろうか。

 だけど、僕のことなんか、誰も好きになってくれないよね……。


 その日は、桜さんにプレゼントをして、それで解散となった。

 お互いにSNSのアカウントも交換して、これからも仲良くしようということになった。


 家に帰って、次の日は日曜日だ。

 せっかく時間があるから、明日は叔父さんのところにいこうと思っていた。

 ダンジョンから戻ってきて、まだ叔父さんになにも報告をしていない。

 きっとおじさん、面倒ごとに巻き込んで、怒ってるだろうな……。

 ああ、敷居が高い……。





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底辺配信者、仕方なくモンスターの肉を喰ったらバズってしまう~ついでにダンジョンコアも喰ったら俺がダンジョンマスターになってしまった件。 月ノみんと@成長革命2巻発売 @MintoTsukino

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