第19話 ラストバトル(上)


 僕はついに、1万階――ダンジョンの最奥へと到達した。

 ここにくるまでに、出てきた魔石を浴びるほど食べた。

 おかげで、僕のステータスは大幅にアップしていた。



 名前:霧夜きりや沙宵さよい

 レベル:1

 HP:9,482,469

 MP:9,330,830

 攻撃:9,331,288

 防御:9,326,949

 魔法攻撃:9,315,364

 魔法防御:9,318,976

 敏捷:9,325,990

 運:9,320,542

 スキル:【空腹】【悪食】【毒耐性】【暴食】【嚙み千切る】【神速】【強打】【火炎斬り】【毒牙】【毒の息】【穴を掘る】



 あれだけ大量に魔石を食べたというのに、僕の空腹はいまだ満たされることがない。

 まだまだ食べ足りないという気分だった。

 フロア1000階は、だだっぴろい広場になっていた。

 分かれ道などなく、ただのワンフロア。


 壁の付近には、部屋を囲むようにして水路が流れている。

 壁は黒曜石のような材質で、いたるところに装飾がほどこされている。

 一番奥の壁には身の丈の三倍ほどもある巨大な像が並んでいる。

 像はそれぞれ、戦士や神、魔法使いなど、さまざまな見た目をしていた。

 

 そして、像の中央に、なにやら祭壇のようなものがある。

 祭壇の上には、青く光り輝く丸い物体が浮いていた。

 ゴーレムコアによく似ている。

 僕はそれを見るのは初めてだったけれど、それがなんなのか、直感的にわかった。


「あれが……ダンジョンコア……」


 そう、あれはおそらくダンジョンコアだろう。

 すべての魔物は、あそこから生み出されている。

 僕のひとことに、コメント欄が盛り上がりをみせる。


『うおおおあれがダンジョンコアか!』

『すげえ、ダンジョンコアってやっぱり実在したんだな!』

『世界初じゃん!ダンジョンコアの映像残るの……!』

『世界的大発見だな!!!!』

『ダンジョンコアとか持ち帰ったらどれだけの価値になるんだろう……』

『エネルギー利用とかしたらすごそう』

『研究者は喉から手が出るほど欲しいだろうな』

『この映像だけでダンジョン史に残るくらいだぞ』


 やっぱりダンジョンコアってそれだけすごいんだな……。

 引き返さずに、ここまで来たかいがあったな。

 僕はダンジョンコアに近づこうと、歩を進める。

 そのときだった。


 ダンジョンコアが、まばゆい光を放つ。

 そして、ダンジョンコアからなにやら曖昧な形をしたものが、吐き出される。

 最初はいびつな形をしていた、不思議な「それ」は、次第に形を変えていった。

 そして、それは剣士のような形に変化していき、やがて明確に鮮明な形状となって現れた。

 現れたのは、デュラハンだった。

 首のない、剣士。


「こいつがラスボスってわけか……!」


『うおおお……!? なんか出た!』

『ボス戦か……!』

『ダンジョンコアを守ってるのか』

『こいつがラスボスか!?』

『倒せ……!』

『このステータスなら負けへんやろ』


 するとデュラハンはさっそく剣を構えて、襲い掛かってきた。


 ――ザッ!


 デュラハンは一気に距離を詰めてくる。

 速い……!

 デュラハンの剣撃が繰り出される。

 僕はそれを剣で受け止める。

 

 ――キン!


 しかし、僕の持っていた剣は一瞬で折られてしまう。

 僕の持っていた剣は、せいぜい上層でしか使えないような、安物の装備だ。

 当然、その攻撃力も、耐久性もたいしたことがない。

 それに比べてデュラハンの剣はラスボス級だ。

 折られてしまうのも無理はない。

 むしろよくぞここまで持ってくれたというくらいだ。


『やばいな……!』

『ピンチか……!?』


 デュラハンが再び仕掛けてくる。

 僕は、自分の腕で剣を受け止めた。


 ――キン!


『なに……!?』

『素手で剣を受け止めた……!?』

『素手で剣を……!?』

『できらぁ……!』

『それは草wwwww』

『どんだけ腕硬いねんwwww』


 デュラハンの剣を受け止めても、僕の腕は無事だった。

 ステータスがここまであがってるから、僕の腕もそれだけ丈夫になっている。

 よし、これなら戦えるぞ……!

 

 次はこちらから攻撃をしかける。


【神速】で身体の動きをはやくして、一気に詰める。

 そこから【強打】でデュラハンを吹っ飛ばす!

 デュラハンは剣で【強打】をガードした、が、数メートル後ろに吹き飛ばされる。

 決定的なダメージは与えられていないけれど、攻撃はきいているようだ。

 ひるんだところに、そこにすかさず【火炎斬り】を叩き込む。

 剣は失ってしまったけど、【火炎斬り】を発動させると、手刀が炎を帯びた。


 ――ゴォ!


 しかしこれも剣で受けられてしまう。

 こちらは【神速】で、目にもとまらぬはやさで攻撃をしかけているのに、それにもかかわらず、デュラハンはそれ以上の反応速度で受け止めてくる。

 これは、長期戦になりそうだな……。



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