第20話 ラストバトル(下)
僕がいくら高速で攻撃をしかけても、デュラハンはみごとに反応してくる。
いったいどうしてだ。
ステータスは確実に僕のほうが上なはず……。
そもそも、デュラハンはいったいどうやって僕のことをとらえているのだろう。
デュラハンには首がない、つまり当然だけど、目も耳もないわけだ。
だったら、なんでこんなにも的確に僕のことをとらえることができるんだ……?
もしかして、なにか第六感的なもので察知しているのかもしれない。
第六感……?
もしかしたら、デュラハンは魔力によってそれをしているのかもしれない。
魔力はいわば生命エネルギーのようなもので、生物が動けばそれによって移動するものだ。
モンスターは人間よりも、もともと魔力への感度が高いときいたことがあるな。
もし、デュラハンに魔力センサーのようなものがあるのだとすれば……。
もし、サーモグラフィのように、魔力センサーで僕の動きがわかっているのだとすれば、この驚くような反応速度にも納得がいく。
魔力の移動速度は、ほぼ光速と同じだってきいたことがある。
だったら、目で見て反応する僕よりも動きがはやくても不思議じゃない。
「ここは一か八かだけど……やってみるか……」
だったら、こっちの魔力を感じさせなければいい。
僕は、身体中の魔力を「閉じた」
魔力は体中の魔力栓という毛穴みたいなとこから自然に漏れている。
それを閉じれば、僕は察知されないのでは……?
ただ、これには大きなリスクがある。
魔力は、そのまま防御力にも関係する。
僕たち人間は、そのままだとモンスターと戦うなんてとてもじゃないほど、脆い。
魔力は一種の防御癖でもあった。
魔力を閉じれば、それだけ身体は脆くなる。
相手の魔力を帯びた攻撃をそのまま喰らえば、ひとたまりもない。
「それでも、やるしかない……! 魔力を、閉じる……!」
このままじゃらちが明かない。
僕は身体中の魔力をすべて閉じて、捨て身の体制をとった。
『沙宵くんなにやってんだ……!?』
『やめろそれはさすがに死ぬぞ!』
『危なすぎる……』
『死ぬ気かよ』
『自殺行為だ』
だが、僕の考えは正しかった。
僕が魔力を閉じたとたん、デュラハンは僕の行方を見失ったようだ。
キョロキョロと挙動不審になって、僕のことを探しはじめた。
どうやら本当に僕の居場所がわからないようだ。
向こうから攻撃をしかけてくることはなくなった。
しばらくして、デュラハンはその場に静止した。
「よし、今ならいける……!」
『うおおおおおマジか』
『キタ――――――』
僕は動かなくなったデュラハンに攻撃をしかける。
【火炎斬り――――!!!!】
しかしそのときだった。
僕の攻撃を、一瞬で反応し、デュラハンは動いた。
しまった、火炎斬りを使う際のわずかな攻撃魔力を察知したのか……!?
いや、もしそうだとしたら、どれだけの反応速度なんだよ……!
デュラハンからしたら、僕の魔力は一瞬のうちに現れたように見えているはずだ。
それなのにも関わらず、こんな瞬時に反応してくるだなんて、あり得ない。
「クォオオオオ……!!!!」
「ぐわ…………!」
僕の手刀を、デュラハンは剣でもって受け止め、斬り返してきた。
そして、僕の右腕が、宙を舞う。
――ズバ!
「うわああああああああああああ!!!!」
僕は身体中の、本来であれば防御に回すはずの魔力を、すべて閉じていた。
それを一瞬のうちに復活させることは不可能だ。
僕は、デュラハンの攻撃を、魔力ゼロのまま受けてしまった。
僕の防御のステータスがいくら高くても、さすがに魔力なしだと受けきれない。
僕の腕は切り落とされ、血がどばっと噴き出す。
痛い……痛い……!!!!
「ぐああああああああああああああ!!!!」
身体が燃えるように熱い。
まさか腕を落とされるのが、ここまで痛いなんて思わなかった。
『やべえええええ』
『ほら言ったやん』
『やっぱりまずかったか』
『ピンチやん』
『死ぬんか……!?』
『ここで脱落……!?』
だけど、まだ左手が残ってる。
まだ、勝機はある……!
僕は、【穴を掘る】を使った。
『なにしてんだ……!?』
『血迷ったか……?』
『ここが最下層じゃないの?』
僕には最後に思いついた作戦がある。
さっきはデュラハンに察知されていないからといって、油断して真正面から斬りかかったのが悪かった。
こんどは不意を突こう。
さすがに、「真下」からの攻撃は、いくら反応の早いデュラハンと言えどもよけきれないだろう。
僕は【穴を掘る】で、地面にモグラのように潜ると、そのままデュラハンの真下に潜り込んだ。
そして、デュラハンの真下の地面から飛び出して、そのまま【強打】をしかける。
「うおおおおおお!!!! サブマリンアタック!!!!」
死角からの攻撃。
僕の攻撃は見事にデュラハンに直撃した。
ようやく、デュラハンにまともに攻撃を通すことができた。
デュラハンは防御力はそれほどのようで、一発で鎧がバラバラになって、砕け散った。
まあ、それだけ僕の攻撃力のステータスが高いというのもある。
デュラハンは地面に倒れ、絶命した。
「ふぅ……なんとかなった……」
『うおおおおすげええええ!』
『天才か……!?』
『ついにやったな……!』
『これでダンジョン完全制覇か……!?』
『ラスボス倒したやん……!』
『ゲームクリア!』
『まるでゲームの裏技みたいやな』
さっそく倒したデュラハンの死体にかぶりつく。
とにかくさっきからお腹がすいて倒れそうだった。
デュラハンはいっけんして人型だから、なんか食べるのに躊躇したけど、でもお腹が空いていてそれどころじゃない。
『デュラハンって食えるのか?』
『いやさすがにそれは食うなよw』
『マジかよ……www』
『まじでなんでも食うなコイツ……』
デュラハンを食べると、さっき斬られた腕の痛みがだいぶおさまった。
傷口も閉じて、血も止まったようだ。
だけど、さすがに斬られた腕までは生えてこない。
でも、ステータスは大幅に上昇し、なんとカンストまでいった。
名前:
レベル:1
HP:9,999,999
MP:9,999,999
攻撃:9,999,999
防御:9,999,999
魔法攻撃:9,999,999
魔法防御:9,999,999
敏捷:9,999,999
運:9,999,999
スキル:【空腹】【悪食】【毒耐性】【暴食】【嚙み千切る】【神速】【強打】【火炎斬り】【毒牙】【毒の息】【穴を掘る】【魔力探知】
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