第18話 報い(下)

【サイド:上尾】



 スレに書き込んだあと、俺はパニックになっていた。


「これ……どうしたらいいんだよ……くそ……俺は捕まるのか……? いやそんなことないよな……。親父がなんとかしてくれるはず……」


 すると今度はスレにこんな書き込みがされる。


 

 325: 名無しのダンチューバー

 おいw

 上尾のこと暴露屋に流したの誰だよwwww



「暴露屋…………?」


 たしかきいたことあるな、そんなダンチューバーがいるって。

 俺は急いで暴露屋で検索をかけて、そいつの配信を見に行く。

 すると、なんと暴露屋は俺のことをこれから暴露していくというのだ。


「くそ……なんなんだよこいつら……! 俺はなにも悪いことしてねえっつうの!」


 すると、暴露屋の配信が始まった。

 暴露屋の口から出たのは、とんでもない言葉だった。

  

【なんと上尾くんは中学生のころはいじめられていたみたいだね~。そのときの恥ずかしい写真がこちら。まったく、自分もいじめられっ子だったのに、いじめでやり返すなんて、酷いやつだよね~】


「はぁ……!? なんでこいつがそれを知ってんだよ……!」


 そして画面には、俺が下半身を丸出しにして、いじめられている写真が映し出される。お尻にはマジックで落書きをされている。


「てめえええええ! クソが……! 誰だよこいつにこんなもん売ったやつ……! 殺す!」


 俺は顔を真っ赤にして怒り狂った。

 次に暴露屋はこんなことを言いやがった。


【しかも上尾は最近、クラスメイトの盗撮もしているみたいだね~。監視カメラにばっちり映ってるよ~。学校の先生は上尾の進路に配慮してもみ消そうとしたみたいだけどね~。これ、僕のSNSにリークが送られてきました~。やっぱ上尾くん嫌われてるんだね~】


「はぁ……!?? なんでそのことを……!?」


 くそが……誰だよ売ったクソ教師……!

 そして次に、俺が一番知りたくないことが告げられる。

 

【えーっとねぇ。どうやら上尾くんは双葉さんのことを彼女だと思ってるみたいだけど。残念! 双葉ちゃんは来栖くんにNTRれています……!】


「はあああああああああ!?」


 くそまじかよ……!

 あいつら殺す……!

 ゆるせねえって……!!!!

 俺は全身から血が噴き出すんではないかというほど、真っ赤になって怒り暴れた。

 部屋のものをとりあえず投げまくる。


「ぐおおおおおおお!!!!」


 そのときだった。

 俺の部屋を、親父が突然ノックする。


「おい……! しゅうすけ。これはどういうことなんだ……!」


 俺は怒りを押し殺したまま、親父に対応する。


「どういうことって……?」

「私のほうにも、お前が犯罪者だとかってメールや電話がたくさんきているぞ……!」

「はぁ……!?」

「どういうことか説明してもらおうか? これは本当なのか?」


 親父は真っ青になって、俺につめよる。


「だ、大丈夫大丈夫! 親父の力でなんとかしてくれるんだろ?」

「はぁ? なにをいっているんだお前は……。いくら私でも、こんなのどうしようもないに決まってるだろ!」

「はぁ……!?」

「まったく……とんでもないことをしてくれた……。私の人生も終わりだ……」


 親父は俺に失望の目を向ける。

 くそ……どうなってんだよ。

 なんで俺が親父にこんなこと言われないといけねえ。



 ◆



【サイド:来栖】



「くそ……! どうなってんだよ!」


 さっきから、俺のSNSにDMがバンバン送られてくる。

 俺が霧夜をいじめてたことを責めるような文章や、俺を殺すだのなんだの。

 しかも、俺がバイト先でとった動画がばらまかれてて、炎上しまくってる。

 なんでこんなことになってんだよ……!


「誰か助けてくれ!」



 ◆



【サイド:双葉】



「もう……! 最悪!」


 SNSのDMに、私のことヤリマンだとかビッチだとか、知らない人からたくさんくる。

 しかも、やらせてくださいとか、意味わかんない。

 中には性器の画像を送ってくる人もいた。


 そして一番最悪なのが――


【これって双葉さんですか? 双葉さんですよね?】


 送られてきたのは、とあるR18サイトのURL。

 そこでは卑猥な動画が売られていた。


「待って……これって……わたし……!?」


 え……意味わかんない。

 これって、相手は彼氏の大君?

 まって……?

 え……?

 これって大君の家だよね。

 じゃあこれ、大君がかってに撮って売ってるってこと……!?


「最悪……」


 私のセックスが、世界中にばらまかれてるんだけど……。

 しかも、大君……信じてたのに、なにかの間違いだよね……?

 私は大君に電話する。


「ねえ――」

「――うるせえ、もうかけてくんな! 俺のとこにもいろいろDMきててうんざりなんだよ!」


 ――ブチ。


 電話は切られてしまった。

 意味わかんないって!!!!


「もう……!!!!」


 私は怒りのまま、思い切りスマホを投げた。

 なんだか涙が出てくる……。


「もう……死にたい……」



 ◆



 その日の夕方のニュース――。


「高校生の上尾秋介さん、来栖来世さん、双葉葵さんら三人が、例の霧夜沙宵さん遭難事件の容疑者として、逮捕されました――。なお、上尾さんの御父上は市議会議員の上尾議員だそうで、そちらのほうでも責任が追及されています。上尾議員は責任をとって辞任されるみこみです」


 ニュースキャスターが、無機質に読み上げる。

 それにコメンテイターが、興味なさげに感想を述べる。

 

「いやぁ……ひどい話ですね。高校生とはいえ、今は法改正もされて、厳しくなっていますから。当然の報いなんじゃないですかね? ダンジョン法案が可決されてから、もう5年にもなりますから。さすがに彼らの行いは、浅はかとしかいいようがない」


「以上、夕方のニュースでした――」

 

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