第22話 永久機関(上)


 デュラハンを倒し、ようやくダンジョンクリアと思い、僕はダンジョンコアに手を伸ばす。

 だが、まだ戦いは終わっていなかった。

 ダンジョンコアは、さらなるモンスターを排出した。

 どうやらボスラッシュということらしい。


 ダンジョンコアからまた、モンスターの素のような、不思議な物体が吐き出された。

 そしてそれは次第に龍のような形に変形する。

 龍の頭はいきなり9つに割れ、9つの頭が現れた。

 最終的に完成したのは、9つの頭を持つ龍――ヒュドラだった。

 

「ヒュドラ……神話級のモンスターだ……」


『ヒュドラ!?』

『まじかよ! 初めて見た』

『やっば……めちゃくちゃ強そうじゃん』


 さすがは最終ボスにふさわしいモンスターだ。

 こんなやつ、倒せるのか?

 いや、僕のステータスはカンストしている。

 もはや怖いものなしだ。


「うおおおお!!!!」


 僕はさっそくヒュドラに斬りかかった。

 デュラハン戦で剣を失ってしまっていたが、デュラハンを倒したときに、デュラハンの剣だけは喰わずに残しておいたのだ。

 まあ、デュラハンの鎧とかは食べたんだけどね。

 とにかく、僕はデュラハンから奪った剣で、ヒュドラの首を攻撃する……!


 ――ズシャ!


 ヒュドラの9つあるうちの、1本の首を切り落とした。


「よし……! この調子だ!」


『いいぞ……!』

『ヒュドラなんか楽勝だ!』

『さすがは沙宵くん』


 やはり、ステータス的にはカンストしている僕のほうが上のようだ。

 普通に戦えば、僕の攻撃力が、ヒュドラの防御力を上回る。

 デュラハンは厄介な敵だったけど、普通の強いだけの敵なら、もはや相手ではない。

 しかし、次の瞬間、信じられないことが起こる。


 ――にゅにゅにゅ……。


 なんと、先ほど切り落としたはずのヒュドラの首が、一瞬のうちに再生したのだ。

 傷口から、新しい首が生えてきて、先ほどと寸分たがわぬ新しい頭が出現した。


「なんだって……!? 再生能力……!?」


『まじかよ。死なねえじゃん』

『そういえば、ヒュドラって不死身っていう印象あるな』

『どうやって倒せばいいんだ?』


 すると、次はヒュドラが攻撃をしかけてくる。

 ヒュドラの頭のうちの一つが、口を大きくけて、息を吐いた。


「ヒュゴオオオオオ!!!!」


 ――ゴオオオオ!!!!


 ヒュドラが吐き出したのは、どうやら毒の息らしい。

 しかし、僕には毒は通用しない。

 僕はけろっとした顔で、再びヒュドラに攻撃する。


「うおおおおお!」

「ヒュゴ……!?」


 ――ズシャ!!!!


 毒の息なんか無視して、再びヒュドラの首を落とす。

 しかし、すぐにまたヒュドラの首は生えてきた。

 くそ、どうやって倒せばいいんだ……?


 今度は、2本いっぺんに落とすか……。

 僕は剣を大きめに振り、ヒュドラの首を2本切り落とす。


 ――ズバ! ズバ!


 しかし、2本とも新しく生えてくる。

 うーん、どうしたものか。


 今度は、ヒュドラのほうも、2本同時に攻撃してきた。

 2頭の頭が、どうじに口を開ける。

 一方の口から吐き出されたのは、氷の息。

 もう一つの方は炎の息を吐いた。


「ヒュゴオオオオオ……!!!!」

「うわ……!」


 さすがに2属性での合体攻撃は、まともに喰らうわけにはいかないな。

 いくらステータスがこちらのほうが上でも、相手は神話級のモンスターだ。

 まともに喰らえば、僕だってただじゃすまない。

 実際、デュラハン戦でも右腕を失っている。

 これ以上のダメージは避けたい。


「ヒュゴオオオオオ!!!! ヒュゴ……?」


 ダンジョンのフロアを、氷と炎の息が覆いつくす。

 ヒュドラはおそらく、僕を仕留めたと思っているのだろう。

 だが、しかし……ブレスが霧散し、視界が開けると――。

 ヒュドラの視界に、僕の姿は映っていなかった。


『おい沙宵くんどこだ……?』

『どこいったの?』

『ヒュドラくん見失ってる……』


 じゃあ、僕がどこにいったのかというと――。


「ここだあああああああ!!!!」


 僕は【穴を掘る】で、地面に逃げていたのだった。

 地中にいれば、ブレス攻撃を喰らうこともない。

 そしてそのまま、穴を掘ってヒュドラの後ろに潜り込む。

 サブマリンアタックだ!!!!

 僕は地面から勢いよく飛び出して、ヒュドラにとびかかる。

 後ろから、ヒュドラに飛び乗った。

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