第37話 ダンジョンの仕組み


 僕の前に現れたメイド型コンシェルジュはディーバと名乗った。

 どうやらダンジョン運営については彼女がいろいろと教えてくれるみたいだ。


「えーっと、そのよろしくね」

「はい、マスター。よろしくお願いいたします」


 ディーバはものすごく無機質な顔と声で、まるでロボットのように話す。

 なんだかその姿はとても奇妙だった。

 見た目は普通の可愛い女の子で、とても人間らしいのに、そのしぐさや話し方がものすごくロボットぽくて気味が悪い。


「なんだか……調子狂うなあ。もっと普通に話せないのかな……?」


 僕は何気なくそうつぶやく。


「普通に、とは。どのような感じでしょうか?」


 独り言のつもりだったんだけど、ディーバはそれに反応した。

 もし気を悪くしてしまったなら申し訳ないな。

 もっとも、ロボットのような彼女にそのような自我や感情があるのかどうかは、わからないけれど。

 我ながら少しデリカシーのない発言だった。

 気を付けよう。


「え、ああ……。その、もっと感情的にというか、なんだろう。活発に? あと、もっとフランクな感じ? 事務的な感じじゃなくてさ……。いや、できないならいいんだけど、ごめんなんか変なこといって」


 すると、ディーバは少し考えたあと、目の色を変えて、まるで演技するように声色を変えた。

 まるで別人になったかのように、ディーバは感情いっぱいに話す。


「感情的ってこんな感じですかっ? マスター!」

「おお……! すごい、そうそう、そんな感じ!」


 ディーバはさっきまではロボットのような感じだったが、今は人間みあふれる話し方をした。

 もしかしてこのコンシェルジュAI、僕の思ってるよりも高性能?

 

「なるほど、マスターはこのような感じの女の子が好みなのですね」

「いや、そういうことじゃないんだけどな……、まあなんでもいいや」

「では、今後はもっと感情ゆたかに話すよう、人格設定を書き換えます」

「ああ、うん。わかったよ」


 僕としても、ロボットのような話し方をされるより、ある程度感情をこめて話してもらったほうが話しやすいのは事実だ。

 今のディーバは前の無機質な機械のような声とは打って変わって、まるでアニメの声優のようにはつらつとした声で話す。


「それでマスター、私を生み出したということは、なにかご用件がおありなのでは? なんなりとお申し付けくださいね。例えば、夜伽などでも対応可能です。私の肉体はほぼ限りなく人間のそれと同じように作られておりますので」

「よ、夜伽……!? そ、そんなことしないよ……! なに言ってんの……!」

「では、他には……?」

「うん、そうだなぁ……」


 もちろん夜伽なんかしないけど、ていうかそんなことできるなんて驚きだ。

 いったいこのダンジョンマスターというスキルはなんなんだろうな……。

 どこまでできてしまうんだろう。

 でもたしかにディーバのいうとおり、彼女を生み出したのは、ダンジョンのことについていろいろと尋ねるためだ。

 試しに一番気になっていたことをきいてみる。


「その、モンスターを全部食べちゃったんだけどさ」

「まあ、マスターは食いしん坊さんなのですね……驚きました。モンスターを食べつくしたマスターなど寡聞にしてきいたことがありません」

「ご、ごめん……。なんか恥ずかしいな……。て、そうじゃなくて。その、モンスターってどうやったら新しく生み出せるの? モンスターが生まれる仕組みを教えてほしいんだけど……。このままだと、モンスターがいないただの空洞になっちゃうよ。DPももうつかっちゃったしね……」


 ダンジョンメニューを開いたときに、【モンスター追加】などの項目があった。

 おそらくはそれらを使えばいいんだろうけど、あいにく僕はコンシェルジュを作り出すのにDPを大幅に使ってしまった。

 

「ご安心ください、マスター。モンスターを生み出すのに、とりあえずはDPは必要ありません」

「え、そうなの」

「はい、モンスターは時間経過で勝手に生み出されます」

「え……そういう仕組みだったんだ……」


 ダンジョンからモンスターが生まれる仕組みは、学会でも議論がすすんでいて、まだ研究者も答えにたどり着いていない。

 これはもしかしたら、世紀の大発見じゃないか……!?


「とりあえずこのダンジョンには、スライムとゴブリンのスポーンが設定されています。なので、スライムとゴブリンは一定時間の経過で、復活します。新しくモンスターの種類を増やしたい場合は、ダンジョンメニューの【モンスター追加】からDPを消費することで、モンスターの種類をスポーンプールに追加することができます」

「なるほど、そういう仕組みなのか……!」

「モンスターはおよそ24時間で復活します」

「そっか、じゃあ今日はもうこのダンジョンでやれることはないのか……。一回外にでて、また明日こようかな」


 僕が帰るそぶりを見せると、ディーバはあからさまにさみしそうな顔を見せた。


「ま、待ってくださいマスター」

「え、でももうDPが……」

「DPなら、ここにあります」


 すると、ディーバはなにやらダンジョンの壁を破壊しはじめた。

 ダンジョンの壁の向こうには、宝箱が置いてあった。


「この宝箱をDPに変換しましょう」

「そんなこともできるんだ……」


 宝箱をDPに変換すると、1000DPが得られた。


「これで、試しに新しいモンスターの種類を増やしてみてください」

「よし、わかった」


 僕はダンジョンメニューを開いて、【モンスター追加】を選んだ。


「1000DPで買えるのは、これか」



 ・吸血コウモリ 1000DP



 僕は1000DPを消費して、吸血コウモリを選んだ。

 すると、ダンジョンの中に、50体ほどの吸血コウモリが新しく現れた!


「うおおお……!?」


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