25話:穢れ
森の
薬屋:
それも自然の姿そのままではなく、湿地の中には「遊歩道」が整備されており、入口付近には木製の看板が設置されていた。
『天水公園』――古びた文字でそう書かれた看板に、
「その昔、それこそ僕等が生まれるよりもずっと前に、とても偉いあやかしがこの場所を訪れたらしくてね。あまりの水に綺麗さに感銘を受け、“
「神秘の水が、今は随分と“濁ってる”な……。なんか空気も淀んでいるし、花も半分以上が枯れてるぞ」
「残念ながらね。ちょっと前に説明したけど、今は“
「去年までは綺麗だったな。ボクもたまに来てたぞ」と狐の美少年:
確かに、この湿地が綺麗な水で満たされ、鮮やかな花が咲き誇っていれば美しい風景となるのは想像に難くない。
しかし、それが“穢れ”によって今はこの有様という訳だ。
遊歩道まで整備したのに、誰も寄り付かない場所になってしまったのは残念としか言いようがない。
「こんなにも目に見える形で、“穢れ”の影響ってあるんだな。コレが人間の心から生み出されたものってのが、いまいち想像できないけど……“負の感情の集合体”とか言ってたっけ?」
「そう。どんなに元気な人間でも負の感情ってのは必ず持ってる。それらが自然と集まって力を持つと、自然界にも影響を及ぼすんだ。それも現世を超えて
「それなら、人間が全員居なくなれば解決するな」とは
冗談か本気かわからない言葉で
「僕が居なくなったら、
「安心しろ。お前が居なくなるくらい、別に寂しくも何ともない。――あ、でも、よく考えたら人間が居なくなると困ることも多いな。美味しいものが食えなくなる。ふわふわのやつとか、ふわふわのやつとか」
「でしょ? じゃあやっぱり、
「いや、
「くっ、
山間の湿地帯とは思えない程に澱んだこの空気を前に、あまりはしゃぐ気にはなれないのだ。
「二人共、茶番はそのくらいにしてくれ。それより
「む~っ、茶番扱いは納得いかないんだけど……まぁいいや」
ポリポリと頭をかき。
それから
「
「
「半分正解。名前は
「へぇ~、詳しいな。それじゃあ中央の黄色いやつが花か?」
「そう。
「金色の花……元が黄色いから見つけ辛そうだな。どれくらいあればいいんだ?」
百や二百と言われたら気が遠くなるが、数個くらいなら何とかなる気もする。
出来る限り低い数字を願った
「1つでいい。
「え、1つだけ? それなら俺でも見つけられそうな――(いや、待てよ?)」
そう簡単に話が進むとは思えない。
簡単に見つけることが出来るなら、わざわざ
彼一人で来て、サッと採って、サッと帰れば済む話。
それが出来ないと見込んでいるから、二人を連れて来ている訳で……
恐る恐る、
「一応聞いておくが、
「ん~、それは
「………………」
要するに、滅茶苦茶貴重な代物らしい。
「ってことは、この濁った水に入って探さなきゃ駄目か。あまり気乗りはしないが……仕方ない」
白蛇様を正気に戻す為だ。
今この間にも、カピの助(カピバラの『あやかし』)は身体を張って、泥酔した白蛇様の相手をしている。
まぁ相手をしているというか“させられている”訳だが、それでもこのままカピの助を見捨てるつもりはない。
かくして覚悟を決めた
靴を脱ぎ、靴下も脱いで、裾をたくし上げたら準備は万端。
「さぁ、いざ行かん!!」と湿地に脚を踏み入れたところで、背後から「あっ」と声が上がった。
「
「何だよ」
「ん~、まぁ何と言いますか……今から言っても怒らない?」
「だから何だよ。怒らないから早く言えって」
「そう? じゃあ
静かに、しかし急激に湿地の「水位」が下がった。
そして特定の水面が大きく盛り上がり、あっという間に“不定形な水の化け物”が現れる。
「――この様に、穢れた水の中には『
遅過ぎた
「もっと早く言えって!!」
――――――――――――――――
*あとがき
続きに期待と思って頂けたら、本作の「フォロー」や「☆☆☆評価」を宜しくお願いします。
お時間ある方は筆者別作品「■黒ヘビ(ダークファンタジー*挿絵あり)/🌏異世界アップデート(純愛物*挿絵あり)/🍓ロリ巨乳の幼馴染み(ハーレム+百合*挿絵あり)」も是非。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます