🦊【1000階旅館の不思議な日常】 ~ 人生に絶望した青年が『あやかし』から引き継いだ辺境の旅館で、狐の美少年と一緒に暮らしながら来訪者を「おもてなし」する物語 ~
32話:白蛇様の謝罪とスペシャルなお詫び
【4章】:それぞれの日常編
32話:白蛇様の謝罪とスペシャルなお詫び
「……随分と寝汗をかいてしまった。温泉にでも入って来るか」
様々な被害(?)を生み出した、白蛇様の泥酔事件から一夜明け。
夜明けと共に目を覚ました青年:
支給品である「畳のスリッパ」はあえて脱ぎ。
肌触りの良い無垢の木の廊下、その自然の優しさを感じながら。
渡り廊下の先にある脱衣所で服を脱いで、内風呂のある大浴場への扉を開く。
(当然、誰も居ないと。貸し切りだな)
一人には広過ぎる温泉を独り占め。
洗い場で軽く髪と身体を洗って、内風呂には浸からずガラス扉の外へ。
裸一貫なのもあって「涼しい」よりも「寒い」が勝つ早朝だが、滝を眺める露天風呂に身を沈めれば、極楽浄土に勝るとも劣らない幸福感に包まれる。
まぁ、実際に極楽浄土を経験したことのない
昨夜は4人で浸かった湯船に今は一人。
狐の美少年:
同じ敷地内にはいるものの、昨日の疲れもあってまだ寝ているに違いない。
だからこそ。
岩に背中を預け、滝を眺めながらボーっとしていた
誰も入ってくる筈が無いと高を括り、背後のガラス扉を開いて、自分の真後ろにその人物が現われたことに。
「どうだい
「あぁ、良い眺めだな。滝の音も心地よく――って、白蛇様!?」
見上げれば、自分を見下ろす裸の大男。
見慣れたオールバックではなく髪を下ろした姿ではあるが、その顔は間違いなく白蛇様のモノだ。
2メートル近い筋肉質な体躯を余すことなく披露しているが、せめて下半身は隠して欲しかったというのが正直なところか。
「全く、朝っぱらからなんてモノを見せつけてくれてんだよ……それで白蛇様、酔いはもう醒めたのか?」
「お陰様でね。いやぁ~、随分と迷惑かけたみたいだね」
普通に座ると肩まで湯が浸からない為、少々寝そべるような態勢で無理やり肩まで湯船に浸かっている。
「飲み会――じゃなくて会合がさ、いつも以上に盛り上がってしまってね。セーブしようとは思ってたんだけど、どうしても欲の方が勝ってしまった……てへっ(舌を出しながら)」
「てへっ、で済むなら警察は要らないぞ。って、
「居ないねぇ。基本的に悪い奴は居ないし、何か問題があってもそれを対処するのは若旦那の役目だからね」
「えっ……1000階旅館の若旦那って、そんな重要な役目だったのか?」
「重要と捉えれば重要だし、そうでもないと思えばそうでもないさ。大丈夫大丈夫、
「出来るかどうかの問題じゃない気もするが……まぁいいや」
この
勿論、
夢破れて色褪せた
「とにかく、謝るなら俺よりもカピの助に謝ることだな。ずっとアイツにキスしてたみたいだし」
「アハハ、カピの助には真っ先に謝っておかないとだね。その後は皆に謝罪行脚しとくよ。それで、お詫びという言葉が相応しいかどうかはわからないけれど――」
(白蛇様、本当に反省してるのか?)
今のとこ、あまり懲りている印象を受けない。
が、そんな思考を吹っ飛ばす言葉を白蛇様が紡ぐ。
「今回迷惑かけた皆を『白蛇様プレゼンツ ~ 1000階旅館スペシャル旅行 ~』に招待するよ」
「ん? 1000階旅館……何だって?」
「違う違う、『白蛇様プレゼンツ ~ 1000階旅館スペシャル旅行 ~』だよ。詳細は後日発表するから期待して待ってて」
「えぇ~、あまり良い予感がしないんだが……」
旅行の具体的な話を聞いても「後のお楽しみだよ」とはぐらかされるだけ。
本当は何も考えていないのではないかと勘繰ってしまう
その後は「
ふと思い出して「そう言えば、階段で登れるのは2階までなのか?」とか旅館の構造を聞いたりした結果――随分と長湯をしてしまった為、のぼせる前に
――――――――
――――
――
―
「ちょっと
部屋に戻るなり、宙に浮いた日本人形が同じ目線の高さで
内心で「おっ」と驚いたものの、その正体を思い出せば何てことはない、と言えるほど簡単な存在ではないが。
彼女の正体は「日本人形のあやかし:
昨夜は
「おはよう
「あらあら、朝から贅沢な事ですわねぇ。私のことをほったらかしにして温泉三昧だなんて」
「ほったらかしって、勝手に部屋を抜け出したのは
「勿論、この旅館を散策してたのよ。私の部屋を何処にしようか吟味する為にね。昨日の夜、それを今日決めるって約束したでしょ?」
もう忘れたの? とでも言いたげな目線の
人形故に表情筋などある筈も無く、口も実際に動いている訳ではないのに、何故か昨日にも増して表情が豊かに見える。
彼女が人形であることを忘れてしまいそうな程だ。
「――確かに部屋探しの約束はしたけど、こんな朝っぱからやるとは思ってなかったよ。まぁ手間が1つ省けたからいいけど……それで、何処か気に入った部屋はあったか?」
「残念ながらどの部屋も駄目ね。景色は悪くないけど、私に相応しい“桜色の可愛い部屋”は無かったわ」
「桜色の部屋……それはちょっと要求のハードルが高いな。多分旅館にそんな部屋は無いと思うぞ」
「でしょうね。無いモノを出せと言ったところで時間の無駄でしょうから――あとは当然、わかってるわね?」
「え? わかってるって、何が?」
当然、嫌な予感を覚える。
せっかく寝汗を流してきたのに再び嫌な汗を流しそうだが、それでも尋ねない訳もいくまい。
そして返って来た彼女の答えは――
「決まってるでしょ? 無いなら作るまでのこと。
――――――――――――――――
*あとがき
続きに期待と思って頂けたら、本作の「フォロー」や「☆☆☆評価」を宜しくお願いします。1つでも「フォロー」や「☆」が増えると大変励みになりますので。
お時間ある方は筆者別作品「■黒ヘビ(ダークファンタジー*挿絵あり)/🌏異世界アップデート(純愛物*挿絵あり)/🍓ロリ巨乳の幼馴染み(ハーレム+百合*挿絵あり)」も是非。
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