30話:白蛇様のお酒を抜く薬
薬の原料となる「
加えて日本人形の
計4名(3人と1体)と賑やかになった
巨木の中に広がる淡い光に包まれた10畳程の店内。
その奥にある扉の先が作業場らしく、「
「製薬には3時間程かかるから、
「あー、いや、戻っても特にやることないからな。『
「あれ、カピの助が心配だったんじゃないの?」と尋ねる
その色眼鏡の奥にある瞳は完全にニヤけている。
(わかっているくせに……)と思いつつ、杞憂は憮然とした表情を返した。
「あのな、俺だって自分の身が可愛いんだよ。酔っ払った
「にひひっ、遂に
言って、今度こそ奥の扉に消える――と思いきや。
彼は近くの棚から小袋を手に取り、続いて狐の美少年の名前を呼ぶ。
「
「ふんッ、このボクをお菓子で釣ろうなんて考えが甘いな。お前が作ったお菓子とか絶対に食べないし。変な薬とか入ってるだろ」
「えぇ~、ひどいな~。普通に現世から持って来た市販のお菓子だよ。このチョコパイ、滅茶苦茶美味しいのに。ねぇ
「ん、まぁそうだな。確かに美味しいやつだ」
話を振られた
大手企業の大量生産品とは言え、企業努力の塊であるあのチョコパイが不味い訳が無く、
「だよねぇ。コレ美味しいやつだよね。でも
「あれ、
「こ、これはアレだ。毒が入ってないかボクが味見してやるんだ。おい
ビシッと
早速包装紙を破いてチョコパイにかぶり付く
以前、メロンパンの袋ごと齧り付いた日から考えれば彼も成長しているのだろう、と捉えることが正しいかどうかはさておき。
目を輝かせて
欲深い美少年の姿に、
それからようやく扉の奥に消えた薬屋の姿を見送ったところで、これまでフヨフヨと店内を浮遊していた日本人形の
「あの軽薄そうな男が、まさか薬師だったとはねぇ。アタシ吃驚」
「ん、そう言えば説明してなかったか。まぁ俺も知り合ったのは最近だから、
「ふ~ん? 人は見た目によらないのねぇ。あんな派手な桃色の髪の毛してるくせに、思ってたほど悪い奴じゃあなさそうだわ」
「うん、それはそうだと思う。アイツはアイツなりに『あやかし』のことを考えてるみたいだし、今回だって体力ない癖に頑張って『天水公園』まで来てくれたからな。多分、根は良い奴なんだよ」
一緒に居ると、何かと可哀想な扱いを受けることが多い薬屋:
それは一種の自業自得というか、彼の行動に対するそれ相応の結果なのは間違いないが、とは言え
その証拠に『天水公園』へ向かう道中では、
白蛇様とは別軸で、この
実際のところ、今回の一件も彼の薬が無ければ完全に「詰み」の状況だった。
今この時間も、本当なら長く歩いて休みたい筈なのに、それでも懸命に薬を作ってくれているのだ。
(――ま、言われてた薬を用意してなかったアイツの責任でもあるんだが……どのみち俺には解決できない問題だ。頼むぞ
■
~ 3時間後 ~
小上がりの畳スペースで気持ちよさそうに寝ていた
「出来たよ皆!! 白蛇様のお酒を抜く薬――名付けて“サケヌケール”が!!」
奥の扉が音を立てて開き、
自信満々に高く掲げたその右手には「ガラスの小瓶」が持たれており、中には不思議と金色に発光する液体が入っている。
「おー、遂に出来たか。どこぞの製薬会社が出しそうな名前なのは気になるが……まぁそれはいい。とりあえずお疲れさん」
「労う気持ちがあるなら、僕にも
「駄目だ、
先の物音で起きたか。
拒絶したのは
「あのチョコ菓子1つでボクを懐柔出来ると思うな。お前に触らせるつもりは無い――けど、どうしてもって言うなら、あと100個チョコ菓子を持ってくれば触らせてやってもいいぞ」
「えぇ~、チョコパイ100個はハードル高いなぁ。業者じゃないんだから。でも、今ので“
「お、おう……でも100個だからな? 1個でも足らなかったら駄目だぞ?」
「勿論、この漢:
キラリと、色眼鏡の奥を光らせ。
「それじゃあ茶番はこの辺で。早速行こうか、チョコパイを買いに現世へ!!」
「いや、1000階旅館に行けよ……」と呆れる
「この男、やっぱり駄目ね」
――――――――――――――――
*あとがき
次話【3章:白蛇様の泥酔事件編】の最終話です。
続きに期待と思って頂けたら、本作の「フォロー」や「☆☆☆評価」を宜しくお願いします。
お時間ある方は筆者別作品「■黒ヘビ(ダークファンタジー*挿絵あり)/🌏異世界アップデート(純愛物*挿絵あり)/🍓ロリ巨乳の幼馴染み(ハーレム+百合*挿絵あり)」も是非。
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