24話:皆“完璧”を求め過ぎなんだよ
猿も木から落ちる。
ことわざの中では割と耳にする言葉だろうが、実際に木から落ちる猿を目の当たりにしたのは、
それも動物番組や夕方のニュースでよく見るニホンザルではなく、金色の毛並みを持つ
「アッチはキンジ――
「ど、どうも。俺は
「キシシッ。色々って、どうせ白蛇の旦那絡みでしょ? あの方は結構強引だからな。まぁだからこそ頼りになるんだけども」
「そ、そうだな。白蛇様は頼りに……(なってるのか?)」
むしろは今は酔っ払って、周りに迷惑をかけまくっている状態。
ただ、それはあくまでも白蛇様の一面でしかなく、酔っ払っていなければ確かに頼れる存在なのは間違いない、のか?
まぁそこの是非はともかく、挨拶はこれで終わりらしい。
「
「オッケー、いいよ。僕もたまたま持ち歩いてたし」
パーカーのポケットに手を突っ込み。
ゴソゴソ漁って
話の流れからして、アレは薬を包んだ「薬包紙」で間違いなく、それを「はい」と笑顔でキンジに差し出す。
「毎回言ってるけど、一度に沢山使うのは駄目だよ。それと自分以外の者に使うのも駄目」
「わかってるって。先生の言い付けは守るよ」
言いつつ、薬を受け取ったキンジの顔。
そこには僅かながらも「安堵の表情」が見て取れ、『あやかし』の意外な一面を前にした
(薬を欲しがる『あやかし』も居るんだな……知れば知るほど人間染みてるというか、何というか。益々以って『あやかし』のことがわからなくなってきた……)
「それじゃあ御三方、また今度。
「ふんッ、そんなのやるまでもなくボクの圧勝だ。でも、暇があれば受けて立ってやらなくもないぞ」
「キシシッ。それじゃあ暇を見つけて挑みに行くよ」
「好きにしろ。どうせボクの圧勝だけどな」
モフモフな尻尾をフリフリして、
それを「受諾」と受け取ったのか、
そして、入れ替わる様に――
「あのぅ、先生……私にも薬を貰えますか?」
――“熊みたいな猫”が、恐る恐ると声を掛けて来た。
■
「あ、ありがとうございました……。あの、それでは……ッ」
その正体は、
時に「珍獣」と呼ばれ、あまりメジャーな動物ではないものの、その割には結構多くの動物園で飼育されている。
近年は目に見る機会も増えてきており、
「
「えぇ~、意外にもは余計じゃない?
スッとモフモフ尻尾に手を伸ばすも、
そこに「しつこいぞ」と冷めた瞳を向けられれば、
「――ま、僕が慕われてるというよりも、『薬屋:
「余計なお世話だ。ちなみに興味本位で聞くが、さっき渡したのは何の薬だ? キンジにも渡してたよな」
「あぁ、中身はどっちも同じだよ。“ただの小麦粉”」
「……は? 何だって?」
聞き間違いかと思って聞き直すも、
「ビントロン
「えぇ、普通に藪医者じゃないか」
「あはは、これまた手痛い評価だね。この
「いや、笑い事じゃないだろ。お前を頼って来てるのに……どうするんだよ?」
「別に、どうもしないよ?」
さも当然と、あっけらかんと
「余程切羽詰まった状況じゃない限り、僕は薬での対処療法は基本やらないことにしてる。薬に依存しちゃうと怖いからね」
「……それで治るのか?」
「治るというか、効果は結構あるよ。渡したのがただの小麦粉でも、プラセボ効果で眠り薬だと思えば眠れるし」
「プラセボ……思い込みの力ってやつか。まぁだからあの二人(二匹?)もお前の所に来てるんだろうけど、思い込みだけじゃどうしようもない時だってあるだろ」
「そりゃあね、思い込みにも限界はあるし。だから本当に薬が必要だと思ったら、僕だってちゃんと処方して渡す。――でもさ、治らなかったら何なの?」
「え?」
「『あやかし』も人間と同じだよ。元気な奴も居ればそうじゃない奴も居る。でも、死なない限りは生きてるし、それでいいじゃん。皆“完璧”を求め過ぎなんだよ。心や身体に不健康な部分が一切無い奴が、この世の中にどれだけ居るのかって話。自分の悪い部分ばかりに目が行って、他の人と比べて落ち込んで、それで益々元気が無くなってさ、悲しいことだと思わない?」
「それは……(そう、なのかも知れないけれど)」
けれど――その後が出てこない。
霧の様にもやっとした感覚があるだけで、そこで無作為に手を伸ばしても「コレだ」という言葉を掴める気がしない。
結局、その日/その場で思いついただけの浅い考えでは、ずっと“向き合ってきた”だろう
――――――――――――――――
*あとがき
そろそろ森を抜けて、薬の材料を採りましょうかね。
続きに期待と思って頂けたら、本作の「フォロー」や「☆☆☆評価」を宜しくお願いします。
お時間ある方は筆者別作品「■黒ヘビ(ダークファンタジー*挿絵あり)/🌏異世界アップデート(純愛物*挿絵あり)/🍓ロリ巨乳の幼馴染み(ハーレム+百合*挿絵あり)」も是非。
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