40話:杞憂日和②
犬小屋――確かに
床は斜めの勾配がつき、壁は風の通しの良さそうな隙間が空き、屋根は隙間にプラスしてアチコチから釘がはみ出ている。
ここが「アナタの居場所」と言われても、それで喜ぶ者が居ないことくらいは
それでも汗を流したのは、強引に物事を進めようとした日本人形のあやかし:
「な、コレでわかっただろ? どうやったって素人の仕事じゃ限界があるんだよ。本当に良い部屋にしたいならプロに頼むしかない」
「むぅ~……」
期待以下だったと言わんばかりの反応だが、だからと言って「作り直す」ことはしない。
これは責任の放棄ではなく、彼女のことを想えばこそ。
更に言うなれば、
「
「あら、それはどういう意味? 今の時代は部屋が売ってるの?」
「あぁ、確か“ドールハウス”っていう、人形用の家というか、部屋みたいなのがあるんだ。専門店に行けば小物も沢山あるから、
「何よ、いまいち歯切れが悪いわね。そんないいのがあるんだったら最初からそれでも良かったのよ。何で隠してたの?」
最初からそれを教えていれば、数時間かけてボロい犬小屋を作る必要も無かった。
自らの努力を棒に振るような“今更の発言”に
「別に隠してた訳じゃないんだけどさ、
「そうなの? アタシじゃ駄目?」
「多分な。俺も詳しい訳じゃないから、絶対に駄目だとは言えないけど……恐らく、
「半分って、このくらい?」
前触れも無く、白いモクモクに包まれた
その煙がすぐに晴れると、丁度半分くらいの大きさになった
「そうそう、そのくらいの大きさなら丁度いいかも――って、小さくなれたのかよ」
「あら、小さくなれないなんて言った覚えは一言も無いわよ?」
さも当然と言い返す
小さな彼女は続けてボフンッと煙に包まれ、それが晴れた時には“元よりも大きな
身長的には狐の美少年:琥珀と同じくらいで、大人とは言えないまでも間違いなく「人間のサイズ感」になっている。
「……大きくもなれたのかよ」
「あら、大きくなれないなんて言った覚えは一言も無いわよ? ――ま、この大きさは妖力の消耗が激しいから、長時間は無理なんだけど」
小さい時とは打って変わり、人間サイズは口も開くらしい。
パッと見は普通の女の子にも見える
三度「
「小さくなるのは妖力も少なくて済むから、良い部屋があるなら小さい方に合わせてもいいわよ。アタシの度量の広さに感謝なさい」
「はいはい、感謝してますよ」
非常に薄っぺらい感謝で、その感謝以上に「大きさを変えられる事実をもっと早く教えてくれたら……」と愚痴を溢したくもなるが。
それは一旦、脇に退けて。
「
何はともあれ「部屋作り」の目途がついた。
自作するのは絶望的だった為、購入で済むならそれが一番手っ取り早いのは間違いない。
ただし、コレで全ての問題が解決された訳でもなく、新しい選択肢が出て来たからこそ新しく出てくる問題もある。
「とりあえずはドールハウスを買うって方針でいいけど、この
「
「どうだろうな。日本人形で遊んでた時代からは色々と変わってると思うけど、その前にまずは“白蛇様に相談”しないと」
「白蛇様……?」
――――――――
~ 中庭を望む回廊にて ~
キッチンから回廊まで戻って来ると、ロビーのソファでくつろぐ白蛇様(イケオジ)の姿があった。
「なぁ白蛇様、ちょっと頼みがあるんだけど」
「ん、どうしたの? って、お~、なるほどなるほど。キミが噂の
逆に、2メートル近い大男に接近された
「ちょっと
「ヤバいおっさんって……さっき言ってた白蛇様だよ。どうやら凄い『あやかし』らしくて、桃源郷から降りて来たとかなんとか」
「桃源郷から? それじゃあこのおっさん、神様じゃないの。どおりで“えげつない妖力”を持ってる訳だわ」
「あぁ、それでヤバいって言ったのか。早くも白蛇様の酒癖の悪さを見抜いたのかと思った」
などと目の前で会話されたら、流石の白蛇様もいい気分はしないらしい。
「こらこら、人前でコソコソ話しない。それから
「若いって、アンタいくつなの?」
「いくつに見える?」
「うげっ、面倒臭い神様ね。
出逢って早々、早くも白蛇様の性格を理解した
面倒事を
「まぁ人間的には40代くらいに見えるけど、『あやかし』で神ともなれば長生きだろうし……100歳くらいか?」
「100歳、それが
「いいよ別に。正直、何歳でも驚かないし」
ここで1000歳とか10000歳とか言われても、どのみち感想は「凄いなぁ」で決まりだ。
勿体ぶられても困るだけで、こんなことに時間を費やして欲しくも無い。
そんな
「それじゃあ正解を発表するよ。私の年齢、その正解は~~~~『ひ・み・つ』」
「「………………」」
シラケた。
「そ、そんな目で見ないでよ。リアルに言うと300歳くらいだよ」
神様と言えど、冷め過ぎた空気に耐えきれなかったらしい。
白蛇様が速攻で答えをバラし、
「人間目線で言うのもアレだけど、流石に神様ともなれば長生きだな。『あやかし』は皆そのくらい生きるのか?」
「ん~、それは時と場合によりけりかな。皆それぞれの事情があるから一概には言えないんだ。――それで、私に何か用かな?」
ここでようやく本題。
随分と前置きが長くなった為、
「ちょっと
「え、
「いや、そうじゃなくて――」
「なるほどね、そういうことなら“列車”を出してあげてもいいよ」
「え、いいのか? 相談しておいてなんだけど、もっと渋られるのかと思ってた」
「別に渋る程の理由も無いからね。それに私も、これから
――――――――――――――――
*あとがき
続きに期待と思って頂けたら、本作の「フォロー」や「☆☆☆評価」を宜しくお願いします。1つでも「フォロー」や「☆」が増えると大変励みになりますので。
お時間ある方は筆者別作品「■黒ヘビ(ダークファンタジー*挿絵あり)/🌏異世界アップデート(純愛物*挿絵あり)/🍓ロリ巨乳の幼馴染み(ハーレム+百合*挿絵あり)」も是非。
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