第30話 大坂(大阪)
船は幾つかの港に寄ったあと、
「万姫様、堺で一度船を降ります。
市十郎が手配できたのは大坂までの船だったらしい。
「わかりました、引き続き船の手配をお願い」
船を降りた万姫たちの目に飛び込んできたのは、江戸の港とはくらべものにもならない大きな港町だ。日の
「さすが天下の台所!ワクワクする光景だわ」
「万姫さま、船の手配が出来るまでいかがいたしましょうか?」
覚兵衛はにぎやかなのが苦手なのか、眉間にしわを寄せてこめかみをもみほぐす。
「もちろん観光よ!
「
紅が何処からか貰ってきた瓦版を見せてくれた。
芝居ものはよく分からない、せっかく紅が貰ってきた瓦版だが却下させてもらおう。
市十郎に目を向けると、何度か大坂に仕事で来ているらしく顔なじみの商人と楽しそうに話をしていた。
どこにでも知り合いがいるっていうのは本当だったんだね。
宿屋に着いて部屋でくつろいでいると、市十郎が商人仲間の一人を連れて来た。
「万姫様、薩摩藩の
「さつま?うんうん、お通しして!」
上野の銅像のような人物を想像してたのに、意外にもすっきりとした顔立ちのインテリ風。
「薩摩肥後屋の当主でございます。水戸の姫さまとお聞きして是非とも御挨拶させていただきたく、無理を承知で鈴木どんにお願いしました」
「私もお会いできて嬉しいです。これから薩摩へ行こうとしていたところだったので、色々薩摩藩のお話聞かせてもらえますか?」
玄関脇の控えの間で話をすることにした。
取引の話になると困るので、市十郎にも同席をお願いする。
「ところで、水戸の姫さまが
「それは、薩摩藩で栽培している甘藷を見に行くためです。
肥後屋の当主は首をかしげて不思議そうな顔をする
「芋ですか?確かに種子島でも作っておりますが、なんでまた芋なんか見に・・・」
(やったー!これでサツマ芋ゲットできる)
「ぜひ食べてみたいです!
興奮して前のめりになりそうな私の帯を、紅がガッチリと
「万姫さまは随分と薩摩藩のことに詳しくていらっしゃる」
肥後屋の当主はニコニコしてはいるが、明らかに怪しんでいる。
「そうなんです。父上から
『大日本史』の情報を集めている光圀のことなら納得出来るでしょうね。
(未来の知識は、なるべく知られないほうがいいかもしれないな)
「なるほど、御父上様の勧めでございますか。それなら楽しみでございましょう、わたくしどもに道中お任せくだされば、姫様にもご満足いただけるようご用意いたします」
急に感じのいい態度になり、しかも自ら案内役を買って出るとは。
「ありがとう、薩摩での宿の手配と物見の案内をお願いします」
「おまかせを」
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