第39話 霧島神宮

 自然環境豊かな森の中に立派な鳥居があり、秋には見事な紅葉が見られる霧島きりしま神宮。


「森っていうか・・・山でしょ!」

令和とは違い、道路が整備されていないのだから当たり前だ。


「万姫様、もう少し進めば石の階段ですよ。東屋あずまやがありますので、そこでひと休みしましょう」

 地元民の貴次たかつぐなら知っている本殿ほんでんへの近道を案内してもらったのだが、まるで獣道けものみちだ。


(なるほど登山準備が必要な訳だ。)


「懐かしいですね。子供の頃はこの様な山の中を走り回り修行したものです。姫さま、先を見に行ってもよろしいでしょうか?」

「いいよ~。隣でソワソワされるより」


 忍びの血が騒ぐのだろう、紅は許可した瞬間に消えた。

護衛がいなくなったので、覚兵衛と竜馬のおじさんコンビに挟まれている伯を呼ぶ。

「伯、オジサン達はほっといて護衛ごえいを頼むよ」


「おっさんに捕まったサルの気分だったぜ」

「そのまんまじゃん、ほら行くよ」

「ウっキーーーー」


 東屋で休憩きゅうけいしたのち、本殿の石段を登る。

本殿周りはキチンと整備せいびされ、歩きやすくなっている。


「まずは、神様にご挨拶あいさつして・・」


一列に並び、二礼二拍手一礼。

「さてと、竜馬さんはどのあたりでお坊さんに会ったの?」

「坊主に会ったんわぁ・・」


 幕末ばくまつ境内けいだいは変わってしまっているのかグルグルと周囲を見渡し、一本の杉の木の前に歩いて行く。

「ちと小さいがぁ・・この杉の木のぉ、まえじゃ!」


 この杉の木は、おそらく御神木ごしんぼくになるのだろう。

「杉の木からドラゴンボールが生えてくるわけないし、そのお坊さんが元々持っていたドラゴンボールを竜馬さんに渡したのか・・・」


「何なのですか?そのドラゴンぼうとかっておっしゃるのは?」

シュタッ

紅が散策さんさくから戻ってきた。


「竜馬さんが持ってる水晶玉すいしょうだまのことよ、お坊さんはルチルって呼んでたみたいだけど・・」

「それは、どこにでも落ちてるものですか?形は違うようですが・・・」


そういう紅がふところから取り出したのは、キラキラした半透明の水晶の原石だった

「!!!それtっ・・どこで見つけたの?」


「??ごつごつした山の頂上ちょうじょうに落ちていました。姫さまが気に入るかと思いましたので拾ってきました」

「それどこーーーっ?貴次さん!ごつごつした山なんてあるんですか?」


 おじさん三人で、境内の中を『おじいちゃんの散歩』みたいにテクテク歩いているところに呼びかけた。

「はい?ごつごつした山ですか?ありますよ。『あめ逆鉾さかほこ』が突き刺さっている高千穂山の山頂に」


貴次は神宮の更に山奥を指さし、ニッコリ笑う

「今からは・・?」

「無理ですね、たどり着くころには日が暮れます」


「おおおおおおお、ごつごつした山の逆鉾ならぁわしゃ知っちょるぜよ」

竜馬が片足をケンケンさせながら、話に加わってきた。足の怪我けが完治かんちしていないようだ。よくついてこれたな・・・


「竜馬さんは山の頂上に行ったんですか?」

「行ったぜよ。しかも、その逆鉾は引っこ抜いた」


「「「「はああ?」」」」


「なんて・・・・罰当ばちあたりなことを・・・・」

貴次が顔面蒼白がんめんそうはくで、驚愕きょうがくしている。


「竜馬さん!その逆鉾は戻したんでしょうね?」

「正確に言うと、引っこ抜こうとした!そん時、稲光いなびかりが落ちてはじき飛ばされたんじゃが・・・・・」


 (なるほど、それでボロボロの着物を着ていたのか。)

「その後は、どうなったんですか?」

「う・・・おお?・・・う~~~~~~ん。覚えちょらん」

「へ?山から転げ落ちたんですよね?」

腕を組み足が痛いのかその場に座り込み、すねをさする竜馬。

 

「気ィついたら沼のとこに倒れちょったぁ・・慎太郎もおりょうもおらんき、山を下りてフラついちょった・・・・」

「覚えてんのかーい」

ツッコミを入れずにはいられなかった。


「三日三晩歩いちょるし、腹は減る。姫さんに拾われんかったら、行き倒れてたき」

「んん?竜馬さん、どこの部分で過去に来たの?」

私たち家族が過去に来たときは、兄貴(ひかる)がタイムマシンを起動させたとか言ってたし・・・・・


「しらん」偉そうにふんぞり返って答える

「知らんって・・」

「前回と同じっちゅうなら、崖や山から落ちたっちゅうことぐらいじゃき」


○○をかける少女アニメみたいな感じ?






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水戸黄門の娘 万姫 笠原源水  @portupano

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