第27話 綱吉の母に会いに行く
「江戸城?上様からの呼出しなの?」
「先ほど使いの者が見えまして、三人で登城せよとのことです」
覚兵衛から登城命令が聞かされる。
(面識なんかないのに、いきなり呼び出しなんて・・・・)
「う~~ん・・お断りは?」
「出来ません」
「やっぱり?」
そうなると人選だ。失礼のない人物を連れていくには・・・・・
選ぶまでもないな、伯は置いていこう。「ちょり~す」とか言いかねないし
神田から、大手門を素通りして桔梗門の前に。
そのまま本丸御殿に入ることが出来た・・それにしても、警備体制が緩くないか?
松の廊下を渡り、御座ノ間と言われる上様の執務室?想像してたのより狭い部屋で待たされた。
「母上!私は身内などに会いとうありません」
「何を今さら、駄々をこねておるのですか!吉報の相手ですよ、この機を
バタバタと足音が聞こえるし、衣擦れの音も聞こえるが
(親子でもめているのか?嫌なら呼ばなきゃいいのに面倒くさいな)
「小姓!早う開け」
「むきーーーーーーーー」
戸襖の向こうから桂昌院の急かす声と、上様の奇声が同時に響いた。
「待たせたの、水戸の」
「お初にお目にかかります、万姫と申します」
深々と頭を下げて桂昌院に挨拶する。
「ほう、お
頭を上げて桂昌院を見るが上様らしき人物が見当たらない。
「桂昌院様、ところで上様は?」
「はて、ここにおるが」
桂昌院も自身の周りを捜すが、見つからない。
「上様どちらに?うえさま!」
桂昌院が立ち上がり、ぐるりと回ったとき桂昌院の
「もしかして上様?」
その子どもに問いかけてみた。
「知らんよ!上様なんぞ知らん」打掛にぶら下がったまま答える上様。
(いやいや、あんたしか居ないでしょ!)
「上様って子ども?」
そっと覚兵衛に耳打ちした。
「いいえ、48になります」
「え?おじさ・・・」
(母親にしがみつく人見知りの子どもにしか見えないが)
べりっ
桂昌院が上様を打掛からはがし、猫の子みたいに
「あ・・ホビット・・」
「おぬし!今、こびとと申したか?」
(聞き間違いだよ~上様)
「ほ・び・っ・と!
「ぐぐぐ・・・」
ホビットを知らなかったのが悔しいのだろう、奥歯を嚙みしめている口の形が斜めになっている。
「はっはっは、上様も身内には勝てないようですな」
後ろの戸襖が開き、誰かが入ってくる。
不躾にも隣に座ってきた。紅が懐から忍者の武器を構えて睨む。
私も怪訝な顔で、すぐ横に座る人物を見た。
「「「あ!」」」
私と覚兵衛、紅、三人の声が重なった。
浅草寺参道前で見かけた僧侶だった。あのとき手に持っていた大きな数珠を首に掛け、水盆を目の前に置き私たちのほうに向きなおした。
「これはこれは万姫様、お初にお目にかかります隆光と申します」
「こちらこそ、初めまして」
「
桂昌院は逃げ出そうとする上様を押さえつけながら、説明してくれた。
「占いですか?」
占いで政治を判断している平安時代から現代まで、国の責任者はスピリチュアル好きが多いんだね。
「隆光、この者たちは何を教えてくれるのじゃ?」
「桂昌院様の心配なされる、お世継ぎのことなど聞かれてはいかがですか?」
隆光は水盆にハスの花を浮かべて、ぶつぶつと何かを呟いた。
花はゆっくりと水盆の中を動く。花の中に筆から水滴を垂らすと、クルクルと円をかきながら中央に集まった。
「おや?今日は一つになっていますね、ここに居る皆の心を一つにして解決すると言うことでしよう」
胡散臭い坊主の丸投げだ。
「お世継ぎですか?上様はお一人もまだ?・・」
「そうなのじゃ!上様は
「BL?上様は殿方に興味がおありで?」
「何を申すのじゃおぬしは!男にも興味はないぞ」
となると・・性癖の問題か?綱吉は犬が大好きだったはず。
ケモ耳にフサフサの尻尾を付けコスプレさせれば、もしかして・・・・
「桂昌院様、チョットお耳を」
「なんじゃ?」
桂昌院に近づき、部屋の隅に呼び内緒話をする。
「なんと!そのようなことで良いのか?祈禱はいらぬのか?」
「たぶん、上様は普通の姿の
目からうろこでも落ちたのか、桂昌院は
「それから、
「上様は前世で悪行三昧だったから、世継ぎができぬと隆光が申したのだぞ?」
「前世は関係ありません!性欲の問題ですから、あと食事!」
(ついでに肉食も解禁してもらおう。肉は大事だ!!)
肉食に気を取られ、隆光が意味ありに笑う顔を見落してしまった。
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