第28話 種まき
柳沢吉保邸
「なんてことをしてくれたんだ!桂昌院は水戸の姫を崇拝してるではないか?」
吉保は万姫の失態を期待していたようだ。
思惑通りに事が運ばなかったうえに、
「何でも、水戸藩の万姫が上様の好みのおなごを用意したとか」
「上様は
「そりゃぁ天女と
「上様にとって水戸の姫は
「ふじいぃいいいいーーーーーーーーーー」
吉保の八つ当たりにあう藤井もうんざりしていることだろう。
桂昌院は万姫の言う通り、熊の毛皮で犬の耳と尻尾を作らせて大奥中の
万姫の読み通り、上様は毎晩大奥の
水戸藩下屋敷
「桂昌院様もこれで変な占い師とかに騙されないでしょ。大奥に通う上様に世継ぎが出来なければ
「姫さまは不思議なこともご存じなのですね?」伸び始めた髪を紅が
「いいなぁ俺も上様に会って見たかった!」
「伯は失礼なこというからダメよ。それに伯が行きたいのは大奥でしょ?」
「そりゃぁ大奥も覗いてみたい」
畳の上でゴロゴロしている伯にハスの実を投げた。
ちょうど仰向けに寝転んだ伯の腹の上に、鞘にタネの詰まったハスの実が乗る。
「うぎゃあああああなんじゃこりゃああああああ」
飛び起きてハスの実を蹴り飛ばした。
「あはははっはhレンコンの種だよ。
※ハスの実(レンコンの種)は漢方薬に使われる。
神田明神境内
「
「
「今のところ、吉保のアホは計画すら立てられずにいるぞ」
「今回の上様呼び出しは、我々でなくても良かったのだろう?それをわざわざ吉保殿が下屋敷の者と指定されたようだ」
「家老はアホだからな」
徳昭は神社の
「姫様はこれから江戸を離れるつもりだ。徳昭、裏切るなよ」
「何のことだ?俺は今もこれからも俺のまんまだ」
藤井はそう言うと、神社を後にした。
夏の暑さを和らげるために、江戸の民は隅田川で涼をとるのが
舟遊びをしたり、屋台で腹ごしらえをして銭湯で汗を流すのだ。
万姫たちも、夕涼みに川沿いを歩き屋台を覗く。
「お祭りみたいに毎日人が多いね。屋形船にも乗ってみたいなぁ」
「はいよ、お待ち!あんたいいとこの娘さんかい?」
屋台のおじさんが熱々のかけそばを出してくれた。お代は紅が払う。
「おじさん、屋形船は金持ちしか乗れないの?」
「おや、知らねえのかい?屋形は貸し切りだから庶民には手が出せねえ」
「へぇ」汗をかきながら蕎麦をすする
「江戸の庶民は、まだいいほうだ。
「えみし?」覚兵衛の顔を見た。
「
「東北か、おじさん他の藩は?」
「他には・・伊予の国で
「そうなんだ・・ありがと、おじさん」
どんぶりを屋台に戻す
「あいよ」
旱魃とは日照りのことだ、雨が何日も降らなければ作物に被害が出る。
熱い蕎麦のせいで汗びっしょりだ。うちわで仰ぎ、手拭いで汗をぬぐう
「大名は援助するどころか、むしり取るなんて酷すぎる」
「参勤交代で大金を使ってしまうので、藩主も援助出来ないのですよ」
「それを言われると、何も言えなくなるなぁ」
(暑さに強くて日持ちのする作物なら、米をむしり取られても百姓が飢えなくてすむ・・・・)
自由人の伯が若い二人組の遊女をナンパして、冷やしキュウリを奢っているのを眺めながら考える。
「うーーーーーん日照りに強くて日持ちする食べ物かぁ・・・干した野菜とか?ん?」
(茨城には干し芋があるじゃないか!)
「覚兵衛、さつま芋だ!サツマイモなら暑さに強いし日持ちする。こういう楕円形の甘い芋なんだけど」
「琉球の
「琉球?薩摩藩なら作ってるかも。行こう!薩摩に」
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