第10話 かぶきもの光圀
母から聞かされた内容は、にわかに信じられないほどの話だった。
18年前、光圀公が現代に
光圀は10代のころ、自分の生い立ちや跡継ぎとしての苦悩・しがらみ・周囲の期待に自暴自棄になって非行に走っていた。
「俺のことなんか誰も理解してくれないんだ!」
幼少期を水戸藩の
度々、三木家に来ては
そんな18才のある日、さんざん水戸城下の遊郭で遊んだ後、家老の
それは暗闇でもキラキラと光を放ち、好奇心を刺激され、
「何だこれは・・どうやって開けるんだ?」
鍵穴も無く上下左右の無い正四面体の、光るそれはひんやりとしていて軽い。
ガツン
蔵の外に持ち出して、庭石に叩き付けてみたがびくともしない。
それならばと、刀を突きさしてみたが、傷一つ付かなかった。
「おまえも俺を馬鹿にしているのか!!」
宝箱に向かって刀を振り上げた次の瞬間、
気を失っていたのか、ぼんやり目を開けると目の前に見知らぬ女の顔があった。 雷に打たれたはずの光圀の身体は、火傷もしていないし
横たわる自分を覗き込む見知らぬ女の、服装すら疑問に思う余裕がないくらいぐったりと倒れこんでいた。
「大丈夫?こんな所で寝てると風邪ひくよ」
女の発した声で我を取り戻し
「・・!!誰だ お主は!いつの間に屋敷に入ったんだ!」
「屋敷?ここ神社だけど?」
「は?神社だと?何を馬鹿なこと・・を・・・」
目を見開き、飛び起きた光圀は周囲を見渡して
三木家の庭にいたはずの光圀は、小さな神社の前に倒れていたのだ。
「神社・・?」
「そ。水戸黄門神社、小さいけどね」
訳が分からず、頭を抱えてうずくまる。
時刻は黄昏時、迷子のような姿の光圀を心配して女が声をかける。
「ほんとに大丈夫?病院いこうか?」
これが二人の最初の出会いだった。
この時の光圀の格好は、ざんばら髪(ふぞろいのロン毛)を頭の後ろで一つにして、紫色の組み紐で結んでいる。
来ている着物は、江戸小紋の紫色(ピンク色に近い)。黒っぽい帯には金色の刺繡が施され、見るからに高そう。
路肩に座り込むと光圀は
「おい女!ここは
ぐったりしてた割に偉そうに話しかけてくる。
「私は女と言う名前じゃないわ、妙子よ。あなたこそ名前は?」
「知らぬやつに、むやみに名など名乗らん」
綺麗な顔立ちをして若そうなのに、言葉使いが
「そーーですか!では、お元気そうなので、これでさよなら」
プイっと背を向けて、立ち去ろうとすると
「おい!待て!女!・・・・ぐっ・・・・・たえこ・・・・・どの」
ものすごく悔しそうな、でも困り果ててどうしようもないって顔をして妙子を呼び止めた。
「あーーーう」
歩道に停めていたベビーカーの中から赤子の声がした。
「ひかる、お待たせ」
ベビーカーからひかるを抱き上げると、キャッキャッと声をあげて喜ぶ。
「何だ?お主、赤子がいるのか?」
「愛息のひかるくんです」
光圀にひかるの顔をみせると、ひかるが手を伸ばして光圀のほうに行こうとする。
「だめよひかる、野良犬に近づくと嚙みつかれるからね」
「俺は犬ではない!」
「で?あなたの名前は?何でここに倒れてたの?」
ひかるをあやしながら、素性を聞き出すことにした。
「俺の名は、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます