第12話 玉子焼き
水戸藩豪商 鈴木家
「まったく!
「ご当主、今に始まったことではないでしょう」
「だけど!この大量の米や食糧と女物の着物、男物の着物。
城への
それを一晩で、こなさなくてはならないのだ。
「まだあるのか?あと何個だ?」
番頭の
「いえ、あとは
「ごとーしゅー!荷車が来ましたぜーー」
市十郎は屋敷の外に出て、荷積みを確認する。
「馬に引かせるのか?」
「人が運べる量ではないので、馬を使います」
この時代の荷車はタイヤ部分が木で出来ているから、とにかく重い。
人員削減のためにも、江戸吉原に
「馬に乗るくらいなら、俺は行かないぞ。ケツが痛くなる」
明け方に荷物は水戸城に到着したが、
まりたちの行列と入れ違いに。
農民たちは役人の指示で荷車から荷物をおろし、
荷車と一緒に帰らされた。
コケッコッコーーーーーーーーーーー
いつの間にか
一方、城では光圀の案内で城内を見て回る万姫(まり)たちを、家臣や侍女たちが驚きの声や念仏を
「化け物じゃないって!失礼な。」
「ほっほっほ 水戸の民は、まだ洋服を見たことないんだよ。江戸や島原には
江戸時代の西洋人?歴史の教科書で見たかも・・・
「エリマキトカゲみたいな服を着た人たちね?ザビエルさんだったかしら」
「そこまで古くなくない?」
母の歴史知識は戦国時代で止まっているようだ。
ひと通り見学し終わると、お膳が用意されていた。
江戸時代の味付けは塩・
(うううううううタンパク質が足りない・・・・大洗の新鮮な海鮮丼が食べたい!!)
「どうだい?美味しくないだろ?わしは、40年前の妙子の料理が忘れられなかった。城の料理人たちに
しょんぼりと光圀公は、白髪まじりの眉毛を八の字に下げた。しんみりした雰囲気を打破するように、母 妙子が自分のトートバッグから弁当袋を出す。
「ママ、急にどうしたの?」
「お昼に皆で食べようと思って、作ってきたの」
タッパーの
それは、
「それは!もしや、玉子焼きではないか?」
前のめりにタッパーを覗き込む光圀公の目は、子供のようにキラキラしている。
「そうよ、子龍も大好きな甘い玉子焼きよ」
光圀公へのちょっとしたサプライズだったようだ。
もちろん私たち親子も大好きな玉子焼きである。
母が光圀公のお膳に玉子焼きを取り分け、手渡そうとした。
「ちょっと待ったあああああああああ」
覚兵衛が叫ぶ。
全員の視線が覚兵衛に集まる。
「大殿、
「おいおい!毒見て、妙子が毒など盛るわけなかろう」
「万が一です、
光圀公の皿を横取りして、覚兵衛さんが口に入れようとする。
「何をするんじゃ!これは、わしのために妙子が作ってくれた玉子焼きだぞ、返せ!」
光圀公は覚兵衛の
子供のケンカのような二人を
「覚兵衛さんも、甘い玉子焼きが食べたかったのかな?」
「ただの毒見だろ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます