第33話 新刀だそうです

 俺はやってやった。


 クソな親父からロドスに課した制裁の正当性を認めさせ、更には爵位を弟であるセージに譲る事も許可をとり、そして遠方である事を理由に俺とソーンはむこう六年間は大王都に行く必要がないとの念書をもぎ取ってきたのだ!!


 これで俺もソーンも暫くは内政に力を入れられる。そしてその合間に魔境を探検して俺の物理耐性を育てるのだ!?


 ……そう思ってた時期も俺には有りました……


 領主ってクソ忙しいのな…… そして、うちの侍女たちが強すぎるのな…… 領民から周辺に魔獣が出たと報告があっても俺が出る幕がないのな……


 えっと普通は領民の為に前線に立って戦う領主が領民から慕われると思ったのだが、俺が九歳(一つ年を重ねたぞ)とまだ幼いのが悪影響を及ぼし、領民たちからはご領主様はお屋敷でドーンと構えていたら良いんですよと言われている……


 俺の大事な計画が…… ここに頓挫した瞬間だった。


 そんな俺には毎日のように報告書が届く。


「テツ様、コチラが農会からの報告書です。前回、同盟を結んでいるメスオークの集落から家鶏が四十羽届けられたそうです。返礼をどうしましょうかという相談だそうです」


 俺の横にはベンがいて報告書について説明をしてくれている。そのベンの横にはルチアとナーナ、レーイが届いた報告書を振り分けてくれている。

 俺の判断が必要なもの、ベンで処理できるもの、メリエルを筆頭にした侍女たちで処理できるものなどを彼女たち三人が分けてくれているのだ。


「あ〜…… 疲れた。ちょっと休憩しようよ、ベン」


 ある程度の報告書に目処をつけた俺はベンにそう提案して肩の力を抜いた。


「そうですね、今日の仕事も一区切りつきましたし少し休憩して、今日はもう止めにしましょう。テツ様、それよりも清史郎と藍史郎が新しい刀と鎧を創ったので見て欲しいと言ってきておりました。明日は午前中は街の視察に行かれますか?」


 なに!? 新たな刀と鎧だって! それは見たい! けど、あそこだけだと領民から依怙贔屓だと言われそうだからベンは視察にと言ってるのだろう。


「うん、そうだね。明日は職人街に視察に行ってみるよ」


 俺の返事にベンは頷き手配しておきますと返事をしてその日の仕事は終わりとなった。


 翌朝である、職人街を回る俺には安定のメリエルはもちろんだが、カナとミユーリがついてきている。


「テツ様、あちらの家具屋はハーフの里村から移住された職人がデザインも斬新な家具を作っております」


 とミユーリが俺に説明をしてくれる。魔獣や魔物討伐の際に初めの頃は回復役として同行していたミユーリだが、メリエル、カナ、トゥリ、マナミや彼女たちに鍛えられた討伐隊にはほぼ同行する必要がない事になったらしい。何故ならば、強すぎて怪我をする要素が無いから……


 そこでミユーリは領都内を散策し、困っている者には手を差し伸べたりしながら、今や街中まちじゅうを知り尽くしたと言っても過言ではないぐらいに詳しくなっているそうだ。


 そんなミユーリの説明を聞きながら職人街を歩いているとあちこちからミユーリと一緒に歩いている俺にも声がかけられる。


「領主様、ご視察ご苦労様です」


「領主様、先日はうちのポンプを採用して下さり有難うございました」


 などなどだ。領民の皆には三度ほど挨拶をしているので俺が領主だという事は知れ渡っているが、ここまで認知されているとは思わなかった。


「みんな遠くから見ただけなのに良く僕が領主だと分かるね?」


 俺の疑問に答えたのはメリエルだった。


「あら? 当たり前ですわテツ様。尊いテツ様の絵姿を領民全員が所持しておりますから」


 何を? そんな話は初耳だぞ、メリエル。俺の驚いた顔を見てカナが言う。


「テツ様、一度肖像画を描いてもらったでしょう? あの時の絵師に依頼して小さなサイズですが額装したテツ様の絵姿を領民に配ったのです。確かに報告書でもお知らせした筈なのですが」


 と言われたが俺はその報告書を見た覚えがない。つまりルチアたちがベン決済に振り分けたのだろうと思う。


「う、うん、そうなんだね。多分だけど報告書を見逃していたんだと思うよ。次からは気をつけるよ」


「テツ様はまだまだ大人じゃないのですから、多少はこうして外に出て視察と称した散策息抜きも必要です。私がいつでも案内しますから、ベンに言っておきますね」


 と、ミユーリがフォローしてくれた。うん、ミユーリと二人で一緒に散策するのも楽しいだろうな。


「ダメよ、ミユーリではテツ様の護衛を務められないでしょう。私が一緒に居ないと(抜け駆けはさせないわよ!!)」 


 すかさずメリエルがそう言うとカナも、


「あら、メリエルは忙しいんだから、視察の時は私が護衛につくわよ(メリエルはテツ様と一緒に居る機会が多いでしょ!)」


 そう言い出す…… うん、三人でジャンケンでもして決めてくれ。そうしてまあ楽しみながら職人街を視察し、遂に清史郎と藍史郎の武防具鍛冶屋にたどり着いた。


「テツ様、お越しくださり有難うございます」

 これは清史郎。

「おっ! 来たか! 出来たぞ〜、とびっきりのが! コレを着てたら魔獣討伐に行ってもいいってメリエル嬢も言うと思うぞ」

 こちらは藍史郎。


 ベンに何度か注意されたがなおらない口調に俺は藍史郎とヤマキはもう良いよと許可を出した。ちゃんと御免状として文書を出して渡している。


 そして、清史郎が先ずは刀を二振り取り出して俺に渡してきた。


「以前、カリュウより購入された【時宗】と【破山】は誰かに下げ渡しするか、何かの報奨にでもご利用ください。コチラの二振りはテツ様の為に、私が持てる技術の全てを注ぎ込んだ大小です。銘は長刀が【常清つねきよ】、小刀が【清刃せいは】です」


 差し出された長刀を先ずは抜いてみると、手にしっくりとくる上に、刀身が俺の背丈に合わせて縮んだ。その事にビックリすると、


「テツ様のご成長に合わせて両刀とも伸縮します。伸縮しても強度、切れ味は一切かわりませんのでご安心を。また、銘の通りに常に刀身は清らかさを保ちますので、いくら切っても血脂で切れ味が鈍る事もございません」


 静かにそう語る清史郎に俺は有難うと礼を述べて二振りの刀を腰に差した。重さはとても軽いので何ら負担にならないのも不思議だ。


 装備してみてその攻撃力には更に驚いたけど。



名前:テツ・オウガイ

年齢:九歳(数え年年齢)

性別:男

職業ジョブ:【童貞】魔法使い

称号:オウガイ子爵・属性魔法上手・透視の神様

位階レベル:29

体質:耐性体質

技能スキル:便利箱・生活魔法・初級、低級、中級、上級属性魔法・合戦武闘術

【身体能力】

体力:786

気力:2,680

腕力:682

脚力:691

魔力:2,000

器用:568

【攻・防】

攻撃力:325+800(+600)

防御力:318+135

武器:常清(+800) 清刃(+600)

防具:角熊革鎧(+135)



【耐性体質】

 羞恥無効(カンスト) 魅惑無効(カンスト) 水治癒魔法無効(カンスト) 光治癒魔法無効(カンスト) 熱無効(カンスト) 薬無効(カンスト) 騒音無効(カンスト) 病無効(カンスト) 闇魔法無効(カンスト) 火魔法無効(カンスト) 風魔法耐性8 光魔法耐性7 火遁無効(カンスト) 水遁耐性13 風遁耐性10 土遁耐性9 雷遁耐性10 風火遁耐性4 衝撃耐性0.4

【便利箱】

 時間停止機能付・容量四千五百立方メートル

【生活魔法】

 着火・飲水・微風・土盛・灯火・黒眼鏡・製氷・電気按摩・遮光影・治療・透視・清潔

【初級六属性魔法】

 (火・水・風・土・光・闇)

【低級六・五属性魔法・複合魔法】

 (火・水・風・土・光・闇)

 (氷・雷・影・聖・邪)

【中級六・五属性魔法・複合魔法】

 (火・水・風・土・光・闇)

 (氷・雷・影・聖・邪)

【上級六・五属性魔法・複合魔法】

 (火・水・風・土・光・闇)

 (氷・雷・影・聖・邪)

【無属性魔法】

 (身体強化)

合戦武闘術かっせんぶとうじゅつ

 初伝・中伝・皆伝・奥伝・秘伝・異世界奥伝



「よーっし! 清史郎の方は終わったな! 次は俺の番だっ!!」


 そう言って藍史郎が取り出したのは……


 

 

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