第2話 能力は二つまでだそうです
そう言われ俺は必死に考えた。そして出した結論は……
その耐性が育つように出来ないか? 例えば毒を与えられたら毒耐性がついて毒が効かなくなるとか、剣で斬られたら斬撃耐性がつくとか?
『ああ、耐性体質を望まれますか? けれどもアレは諸刃の剣ですよ。回復魔法なども人から掛けられると耐性がついてしまい効かなくなりますから。自傷行為では耐性が付かないという特性ですから、ご自身での回復魔法やポーションを飲む、塗る行為を成されると効きますけど。それでも良いのですか?』
うん、すると何か? 俺は自分で毒を煽ると耐性が付かずに死ぬって事?
『そうです、それが耐性体質の特徴です。斬撃耐性も同じくで、ご自身で腕なんかを斬っても耐性はつきません。魔法も同様ですね。但し回復魔法は他人からの何回かは効いて、それ以降は掛ける人が変わっても効かなくなりますし、ポーションも人から飲まされたりすると魔法と同じく何回かは効いて以降は効かなくなります。他の病の薬なども同じです。但しご自身で行ったものは効きますから、努力して回復魔法などを必死で身につける必要性が生じますよ。ただ、全てを完全耐性、つまり無効まで育てられると回復魔法もポーションも必要は無いでしょうけどね』
うん? 育てる? 耐性って育つのか?
『はい、毒を例に言うと、ヘビ毒を与えられたらヘビ毒全般に耐性が付きますが、植物毒への耐性は付きません。耐性を育てる為には植物毒も与えられる必要があります。剣で言うと、剣による斬撃を受けると剣による斬撃の耐性はつきますが、斧や槍などでの斬撃の耐性はつきません。といった感じになります。もちろん、一度目は斬られれば痛みも感じますし、怪我もしますよ。耐性体質とはそういうものなんです』
聞いてみたら納得できたが、それでも俺はその方が良いと思ったので、能力はその耐性体質にしてくれと頼んだ。
うん、それでも良い。俺の能力はその耐性体質にして欲しい。
『うーん…… まあ、能力といえば能力なのですが、体質になるからなぁ…… あ、つけないと言ってるんじゃないですよ。それよりもそれだけでは私が上から怒られますからもう一つ何かご希望はありませんか? 出来れば一般的なヤツをお望み頂けると有り難いのですが』
神様の世界にも上ってあるのな……
『それはそうですよ、人の世界の営みは神の世界の模倣なんですから。だからお願いしますよ』
うーん…… な、何かあるか? とその前に大事な事を聞き忘れてた。
努力して魔法は得られるのか? 属性とかある世界なのか? 魔物や魔獣に対するにはその魔法だけなのか?
矢継ぎ早の俺の質問を聞いても優しくウェバー神は返事をしてくれる。
『はい、魔法は努力して身につける事が可能です。ただ、貴方については記憶を残して転生しますので、現地の人たちよりも多少ですが努力は少なくて済むと思います。属性については火、水、風、土、光、闇の六属性と派生属性として、氷、雷、影、聖、邪の五属性があります。(ホントは属性以外の魔法がもっとありますけどね……)回復魔法は水と光と聖にあります。水、光属性の回復魔法はある程度の病にも有効です。聖属性の回復魔法は極めればありとあらゆる怪我、病に有効となります。それと、魔物や魔獣に対する手段は物理攻撃も勿論ですがあります。現地人には魔法適性の無い人も居ますのでね』
なるほど、やっぱり剣と魔法のファンタジー世界なんだな。それなら俺の欲しい能力はコレだな。
『ドレですか?』
コレだよ! コレ! 分かんないかなぁ? ほんとに神か?
『コレって言ってる時に思考までコレって考えられるとさすがに神といえども分かりませんよ。っていうか何気に器用な思考ですね……』
フッ、俺は三十歳まで童貞だった男だぞ! 人に思考を読まれないようにするのは当たり前だったからな!
『何の自慢にもなりませんが…… で、本当にドレですか?』
ストレージだよ。時間停止付の。
『ああ、便利箱ですね…… それで良いんですか? 剣の才能とか、魔法の才能とかじゃなくて?』
努力すれば身につくモノは努力して身につけるよ。元々コツコツするのは好きだから。
『そうですか…… そうですよね。分かりました。それでは、
ああ、分かった。元々友人にもテツって呼ばれてたからちょうど良いよ。それで、転生先ってどうなるんだ?
『あ〜、そこはランダムになりますので私にも分かりません。貴族なのか、庶民なのか、大国なのか、小国なのか、【神すらも知らぬ】といった所ですね』
そうか…… ま、良いよ。どんな所でも一所懸命に生きてやるさ。
『はい、それでは決めなくてはいかない事が決まりましたので転生して頂きますね。私の部下が大変、失礼致しました。転生先ではどうかご自分の心に素直に生きて下さいね。それと、最後に一つお知らせをさせて下さい。地球では三十歳まで童貞で居ても魔法使いには成れませんから…… ププッ!! では、お達者で〜、また輪廻の輪を潜られる時にでもお会いしましょう〜』
な、嘘だろーっ!! 俺が必死で守った童貞が、実は意味無かったなんてっ!! 俺の
そう叫んだ俺の意識はそこで途切れた……
哲改めテツの魂を見送ったウェバー神に近づく神が居た。
『良かったのですか、ウェバー。最後にバラしてしまって』
『おや、アビレス? 珍しいですね。でも、真実を教えて導くのは私たち神の勤めでしょう?』
『いや、あの言い方だと君自身が楽しむ為に言ったように見えたのだが……』
『ウフフフ、だって死の間際に叫んだ言葉が【返せ! 俺の魔法使いライフ!】ですよ! 聞いた地球人たちが亡くなったテツさんを魔法使いだと信じたのにも大笑いさせて貰いましたよ。コレはその返礼として真実をお教えしたんですよ』
『ハァ〜…… まあ、君らしいと言えばそうなんだが…… それよりも先程の彼の転生先は何処にしたんだい?』
『ああ、彼の心の底の真の望みを達成出来る場所にしてあげましたよ』
その言葉にやって来た一柱の神はため息を吐き、ヤレヤレと首を振りながら去っていった。
『ウフフフ、テツさん。ここから貴方の魔法使いライフを見守らせて貰いますね。楽しませて下さいね……』
そう言うとウェバー神もその場から姿を消した。
で、俺は今、途切れた意識が戻ってきていた。何故か目が良く見えない…… って、まさかの赤ちゃんからかっ!?
ちょっと待て! 俺三十歳まで生きた大人だよ。赤ちゃんプレイにも興味ないよ……
とんだ罰ゲームが転生した俺を待ち受けていた……
俺の周りでは何語か分からない言葉で女性たちがざわめいている。俺は誰かに抱え上げられて温かいお湯につけられたようだ。産湯か? ホントに産まれたてか?
って、しまった! ラノベでは当たり前だったから頼まなかったけど、言語理解がついてないのか!! こ、言葉の学習を先ずはしないとダメなようだ……
くじけないぞ、俺! コツコツやるのは好きだからな! 周りの言葉を良く聞いて絶対に喋れるようになる、そうしてこの世界の言葉を理解してやるっ!
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