第3話 言葉を理解できそうです

 で、俺は今至福のときを過ごしている。

 

 何をしてるかって、赤ちゃんのお仕事の一つだよ!

 オッパイを飲んでるんだよ!


 オッパイってこんなにも柔らかくて触り心地が良いものなのな…… 知らなかったよ……


 だが屈辱的な事がある。いや、屈辱とは違うな…… まあ何と言うかはおいといて、オシメの交換についてだ! 確かに俺は赤ちゃんだ。だから自分でトイレには行けない。だが、だがである。意識は三十歳の青年(義理オジサンじゃない!)なのだ。

 それが恐らくは女性だと思われる手によってしもの交換をされるのは屈辱的というよりはどんな羞恥プレイだよって思ってしまうのだ。


 まあそれも歩けるようになるまでの辛抱だ。俺はオシメを交換されながら、周りの言葉を注意深く聞いていた。


 何となく、何となくではあるが、段々と理解してきたように思う。前世の不確かな記憶から類推すると、英語とフランス語を混ぜ合わせたような感じだと思った。

 (こんにちは)がボンジュールやハローではなく、ハンジューって言うみたいだからかな?


 こうして注意深く聞くこと半年。俺の目もかなり見えるようになっていた。

 ママンはとても若くて前世なら犯罪者呼ばわりされる年齢だと知った。だって、十五歳だぜ! 

 どんなヤツが俺の親父なんだっ! このロリ○ン野郎がっ!! と怒り心頭になったよ。

 俺を産んだのが十五歳という事はそういう行為をしたのがママンが十四歳の頃って事になるからな。

 俺は成長したならばクソ親父を殴ってやろうと心に誓った。

 

 ああ、因みに言葉はほぼ理解出来るようになったよ。中々、前世よりも優秀な頭脳を転生して授かったようだ。

 そして、周りの侍女たちの会話により俺は自分のステータスを見る方法も分かった。

 どうやら頭の中で自分の能力値を知りたいと思えば脳内に出てくる仕様らしい。

 それによって更に衝撃の事実が発覚した。このマルセラームの俺の産まれた国では数え年で年齢をいうらしく、ママンは十五歳という事は前世では十四歳なのだ!? どうやらクソ親父はとんだロリ○ン野郎のようだ。



名前:テツ・オウバイ

年齢:一歳(この世界では数え年で年齢を言うらしい)

性別:男

称号:大王国オウバイの第五王子

位階レベル:0

体質:耐性体質

技能スキル:便利箱(時間停止機能付・容量六立方メートル)

【身体能力】

体力:15

気力:350

腕力:5

脚力:1

魔力:60

器用:3

【攻・防】

攻撃力:1

防御力:1

武器:無し

防具:無し



 気力だけ数値が大きいのは前世の記憶を持ったままなのが理由だろうと思うのだが…… 魔力も他のに比べると大きいのは実は侍女たちの会話から、魔力を流す訓練をすれば数値が上がると聞こえた(三ヶ月前)からだ。その日から毎日毎日、飽きもせずに何とか魔力を体に流そうと努力して、一ヶ月前にやっと感覚を掴んだのだ。で、初め30だったのが倍の60にまで上がっている。


 ウェバーに貰った能力の一つ、耐性体質は体質として表記された。意識を向けると、

【耐性体質】

 熱耐性2 羞恥耐性5 魅惑耐性2 薬耐性1

 

 と出る。熱耐性は同じく三ヶ月前に、魔力を流そうと努力してたら熱が出た時についたのだろう。で、その時に飲まされた薬により、薬耐性もついてしまったようだ…… 

 羞恥耐性については…… 分かるだろ? オシメ交換だよ!!

 魅惑耐性は周りの侍女たちが美女、美少女ばっかりだからかな?


 だがフッフッフッ、確実に耐性が成長しているぞ。

 そして、便利箱だ。何故か魔力が増えると容量も大きくなった。何らかの因果関係にあるのだろうと思うが、今は分からない。


 そして、問題なのが称号だ。俺って王子様だったのね…… それにしても第五王子って…… クソ親父は何人の子供が居るんだ?

 それに俺が産まれてから一度も訪ねて来てないらしい。(侍女たち談)


 ママンは来ない事にホッとしているそうだ。それは見ていて俺でも分かる。このままクソ親父が来なければ良いのだが……


 俺は今日も寝たフリしながら魔力を流して遊んでいた。すると、家の中に子供の金切り声が聞こえた。


「だからー、会わせなさいよー! 私は第一王女よ! 弟の顔を見に来ただけじゃないっ! あんた達、全員をお母様に言ってクビにしてやったって良いんだからねっ!」


「ダメです、レオネー様。大王様から例えご兄姉きょうだいであろうとも合わせるなと命令されておりますので」


 静かな声で反論しているのは侍女長をしているメリエルだな。確か年齢は十八歳だったかな。若いのに侍女長なのはママンの年齢を考慮しての事なんだと思っている。

 メリエルは恐らくは何も言えないだろうママンの代わりにクソ親父の命令だと伝えているのだろうけど、この金切り声を出してるおバカそうな姉とやらに通じるのだろうか?


「だから、お父様の許可もちゃんと貰ってきてるって言ったでしょー!」


「私どもは何も聞いておりません。それに、侍女の一人が今確認に向かっておりますので、大王様が本当に許可をお出しになられたか確認出来るまではテツ様とお会いする事は出来ません」  


「ゲッ! そこまでする、普通!? もういいわよ、お母様に言いつけてやるんだから! 覚悟してなさい!!」


 捨て台詞をはいて去っていったようだ。


「アミーレ様、もう大丈夫ですよ。レオネー様は戻られました」


「有難うございます、メリエル様……」


「アミーレ様、私に様は不要です。以前とはお立場が違いますから、どうかメリエルと呼捨てになさってください」


「でも! わ、分かったわ…… メリエル……」


「はい。さあ、テツ様の天使の寝顔を見に参りましょう」


 おっと、ママンとメリエルが部屋に来るみたいだな。俺は体に流していた魔力を止めた。あ、アミーレ・オウバイがママンの名前な。


 ママンとメリエルが部屋に入ってきた。ママンが上から俺を覗き込んでいるのが分かる。で、ママンの後ろに控えたメリエルなんだけど……

 

 殺気がだだ漏れなんだよなぁ…… 何があったのかは知らないけど、俺のママンに殺気を向けるなってぇの…… 俺に対してはいつもニコニコ笑顔で話しかけてくれるんだけどな。

 まだ、事情が分からないし赤ちゃんの俺では何も出来ないけど早めに何とかしたいよなぁ。


 まあ、そんなこんなでクソ親父も来ないけどそれ以来、あのレオネーとかいう姉も来ていない。他の兄姉も勿論だが来てない。こうして穏やかな日が流れて俺も二歳(数え年)となったんだ。つかまり立ちデビューもしたぜ!!

 


名前:テツ・オウバイ

年齢:二歳(数え年年齢)

性別:男

称号:大王国オウバイの第五王子

位階レベル:0

体質:耐性体質

技能スキル:便利箱

【身体能力】

体力:22

気力:378

腕力:11

脚力:8

魔力:181

器用:7

【攻・防】

攻撃力:2

防御力:2

武器:無し

防具:無し



【耐性体質】

 羞恥無効(カンスト) 熱耐性3 薬耐性2 魅惑耐性5 騒音耐性2 病耐性1

【便利箱】

 時間停止機能付・容量十五立方メートル


 騒音耐性は寝てるフリをしながらメリエル以外の侍女が居る時には集中して魔力を流していたら知らない間についていた。病耐性は、多分だけど二歳になる少し前に体に発疹が出てたから、何かの病気だったんだろう。その時に熱も出てたから、熱耐性も一つ上がったんだと思う。

 羞恥無効(カンスト)は…… 分かるだろ? つまり、今の俺には羞恥心なんてないんだぜ!! 何でも来いやーっ!! フルチンだって恥ずかしくないんだぜ!!


 やめよう、なんだか言ってて虚しくなった。経験はないけど賢者タイムってコレの事かな? いや違うな、コレは羞恥心だな……

 だが何故だ? 何故、俺の心に羞恥心が芽生えているんだ…… よくよく考えた俺は答えが分かった。

 あっ、コレって自傷行為に当たるからか…… 単純明快な答えが直ぐに出てこなかったのは忘れていたからではなく、こういった心の耐性にも自傷行為があるのだと、今になって気がついたからだった……


 ま、まあ、それはともかくとして、とりあえず順調に成長はしてきたんだよ、俺は。



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