第8話 鍛えるそうです

 今、俺は心身共に鍛えている。現在、もうすぐで六歳(数え年)になる俺は同い年の幼年たちよりは頭五つは抜きん出て強くなっている筈である。

 何故、俺がそこまでして鍛えているのかというと、メリエルからの要望で多くの侍女がやって来たからだった。侍従となってくれるベンとその妻で妊婦のルチア、十二名の侍女たちの中には妊婦となっている侍女が二人いた。


 理由はメリエルから聞いていたので、その妊婦の三人には体を一番に考えて元気な子供を産むようにと伝えた。そういう意味では八歳までこの離れ屋敷に住めるのは良かったと思っている。


 八歳になると俺は子爵位と共に魔境の開拓へと駆り出される事になる。そこでは力が必要になる。皆を守る力が。

 俺はママンと俺の世話をしてくれている皆を守る必要があるから鍛えに鍛えているのだ。


 だけど、相変わらずメリエルを筆頭に古参侍女五人が優秀すぎて耐性体質が思うように育っていないのだが……



名前:テツ・オウバイ

年齢:五歳(数え年年齢)

性別:男

称号:大王国オウバイの第五王子

位階レベル:0

体質:耐性体質

技能スキル:便利箱・生活魔法・初級、低級属性魔法・合戦武闘術

【身体能力】

体力:58

気力:528

腕力:35

脚力:32

魔力:399

器用:30

【攻・防】

攻撃力:24

防御力:20

武器:無し

防具:無し



【耐性体質】

 羞恥無効(カンスト) 魅惑無効(カンスト) 水治癒魔法無効(カンスト) 光治癒魔法無効(カンスト) 熱耐性9 薬耐性8 騒音耐性8 病耐性5 火魔法耐性3 風魔法耐性2 光魔法耐性1 闇魔法耐性6 火遁耐性1 水遁耐性5 

【便利箱】

 時間停止機能付・容量三十立方メートル

【生活魔法】

 着火・飲水・微風・土盛・灯火・黒眼鏡

【初級六属性魔法】

 (火・水・風・土・光・闇)

【低級六・五属性魔法・複合魔法】

 (火・水・風・土・光・闇)

 (氷・雷・影・聖・邪)

合戦武闘術かっせんぶとうじゅつ

 初伝・中伝



 俺としては斬撃耐性とか、衝撃耐性、打撃耐性などを育てたいのだが、俺と模擬戦をしてくれる侍女は優秀すぎて全て寸止めである。何とかマナミの火遁と水遁はくらう事に成功したが、他の術はダメだった……

 

 このままでは魔獣や魔物を相手にした時に不安しかない。それに毒耐性も育てたいし他の状態異常についても耐性を育てたい。だが、それも難しい。

 一度メリエルに経験したいと頼んだのだが、「そんな必要はございません。テツ様への状態異常攻撃はその全てを私が魔法にて防いでみせます」と断言されてしまった。

 違うんだ、メリエル。俺は自分の持って産まれた体質を育てたいんだ! と叫びたいところだったが、ここはまだ王都内でどこに他人の耳があるか分からないので止めた。

 

 優秀な侍女たちが居るからこの離れ屋敷に間者は居ないだろうけど用心するにこしたことはないからな。


 今日はカナとの訓練日だ。俺はマナミが作ってくれた木刀を手にしている。

 カナは六尺棒だ。長い得物を持った相手に対する方法を教えてくれているのだが、俺自身が知っている方法とは違う方法なので興味深い。


「テツ様、一つご質問がございます」


 そんな中、教わっている途中でカナがそう聞いてきた。


「ん? 何、カナ?」


「先程からテツ様の動きを見ておりますと、何やら私のお教えする動き以外の方法をご存知のような気がして…… 私の勘違いならばそれで良いのですが」


 うん、やっぱり武芸全般に精通しているだけあってカナは鋭いな。そこで俺は下手な誤魔化しをせずに素直に言う。勿論だが前世の記憶云々は言わないけどな。


「うん、知ってるっていうか僕が自分で考えた方法でも行けるんじゃないかなって思ってるんだ」


 俺の言葉にカナが暫し考えたのちに、


「それでは次はその方法で受けてみて頂けますか? 有効ならばそれらも訓練に取り入れたいと思います」


 そう言ってきたので俺は頷いた。すると早速カナは六尺棒で俺を打ち据えてきた。俺は慌てずに【合戦武闘術】の初伝のわざでそれを受け流した。

 僅かに、ほんのごく僅かにだが、カナの体制が崩れた。俺は六尺棒を持つ左手を狙って木刀を振った。が、手をずらす事で避けられてしまった。

 そこでカナは大きく飛び下がると言う。


「い、今の技を本当にテツ様がお考えに!?」


 大声で俺にそう言うので、本当は前世の教わったわざなのだが頷いて肯定しておく。


「てっ! 天才!! いえ! もはや神! テツ様は武神か軍神の生まれ変わりに違いありません!!」


 と叫ぶと手にした六尺棒を落として俺に駆け寄るカナ。そのまま俺を抱き上げて叫ぶ。


「このカナ! 生涯をかけてテツ様にお仕え致します!! ですのでテツ様のお考えになった技をカナにもご教授下さいませ!!」


 分かった、分かったから、カナよ、とにかく降ろせ。何事かと新参の侍女たちがコッチに来てるじゃないか。と思ったらそれより早く何者かに攻撃された。


「何をするトゥリ! テツ様に当たったらどうするつもりだっ!?」


 カナが鋭く叫ぶが、言われたトゥリは気にせずに、


「ん、そんなヘマはしない。カナとは違うから。それにいつまでテツ様を抱きしめているつもり? 早く降ろしてさしあげなさい」


 そう冷静に言ってのけた。さすがは氷のトゥリである。いついかなる時も冷静沈着なのだ。胸部装甲がCだけはある。いや、それは関係ないが……

 以前にも言ったが俺は胸部装甲の大きさで女性を差別するつもりはない。どんな大きさだろうと、女性の胸部装甲はとてもとても尊いモノだからだ。


「クッ、トゥリよ、もしも私がテツ様をお降ろししなかったら?」


「その時はこちらの真剣で攻撃するわ」


 両者の間で殺気が膨れ上がる。待て待て! 俺のおっぱ…… いや違う! ママンと俺を守ってくてる侍女同士での決闘なぞ許さん!


「カナ、降ろして。トゥリも殺気を出さない。仲良くしないなら二人とも嫌いになっちゃうよ」


 俺があざとくそう言うと二人とも途端に殺気を消して、カナは素早く俺を降ろして、トゥリはカナの肩を抱く。


「テツ様、見て。トゥリとカナはこんなに仲良し」

「そうです、テツ様。トゥリとは唯一無二の親友です!」


 変わり身の速さにうわ〜とは思ったけどそこは口に出さずに左右の手で二人の手をとり三人仲良く屋敷内に戻ったのだった。俺のおっぱ…… 大事な侍女たちが怪我をしなくて良かったよ。


 屋敷に戻った俺はママンに報告に向かう。今日の稽古内容をママンに伝えて、俺の後ろに立つカナが補足で報告をしてくれるのだが、今日はいつもと違い、カナの報告がかなり熱かった。


「アミーレ様! テツ様は天才です! いえ、武神か軍神の生まれ変わりです! さすがはアミーレ様のお子様です! 私の知らない武術をご自分で考えられ、行使されたのです! 例え大王家一と言われる近衛騎士団長が相手でも勝てるこの私の体勢を崩す事が出来るなんてっ!? この年齢では考えられませんっ!! まさに武神、軍神と言っても過言ではありません!!」


 コラコラ、カナよ、ママンが目をまん丸にして君を見ているぞ。いつもは冷静な報告しかしないのに今日は熱くなり過ぎた。


「そっ、そうなのね。有難う、カナ。貴女にそこまで言って貰えて私も安心するわ」


 何とかカナの熱い報告に返答するママン。続くカナの言葉にまた目をまん丸にしてしまうが……


「はい! ですのでカナはテツ様に弟子入りする事に致しましたっ!! 生涯にわたり師と呼ぶ事に致しますっ!!」


 えっと、それはそれで今宣言する事なのか? もう少し俺が成長してからでも良いと思うのだが?


 だが、心優しいママンはカナの言葉に嬉し泣きをしながら言う。


「うっ、ぐすっ、有難うカナ。貴女にそこまで言って貰えるなんて…… テツは私の自慢の息子だわ」


 いや、ママン。そんなに泣かなくても…… そもそも貴女の息子である俺は何を置いても貴女を守る為に強くなりますからね! その為にも、早く斬撃耐性などの物理耐性を身に着けなければ!

 俺は心にそう誓い、ママンの嬉し泣きの顔を笑顔で見守った。だがその誓いは中々叶うことが無いのだが……


 勿論だがママンだけでなく、俺の為のおっぱ…… いや、大切な侍女たちもちゃんと守るぞ!!


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