第36話 やはりご先祖様だそうです

 俺がぼおーっと屋敷を眺めていたら地竜神様が声をかけてきた。


「どうだ、テツ・オウガイよ。ここはなテツジロウが設計図を書いてくれてな。われがこの地の木を使って建てた屋敷なんだ。土間がまた良いのだが中に入って見てくれ」


 何故かちょっとワクワクした感じをかもしながらそう言う地竜神様。そんな地竜神様について中に入ると前世の婆ちゃんの家を思い出す造りになっていた。

 田舎にあった婆ちゃんの家はここまで立派な建屋では無かったけれども、同じように入ってすぐの土間にかまどが二つあって、そこで米を炊いたり、煮物、焼き物、揚げ物を婆ちゃんが作っていたのを思い出す。まあ婆ちゃんが元気な頃の話で俺がまだ小学生だった時の話だが。

 そんな婆ちゃんの家を思い出す地竜神様の屋敷は竈が三つあり、既にオマイが炊かれているようだ。それも五升炊きの羽釜に見える。


「フフフ、どうだ、テツ・オウガイよ。この家は良かろう。我も非常に気に入っておってな。テツジロウが良く出入りしてくれていた頃から何一つ変えておらんのだ」


 ん? 名前からしておそらくは江戸〜明治ぐらいの人だろうと想像するから、という事はトイレはダメダメパターンのトイレだな。ここは俺がリフォームしてあげないと!!


「地竜神様、トイレはどうなってますか?」

 

 俺がそう聞くと、


「ん? 厠か? 落し込み式だが中にスライムを住まわせておるのでな、常に清潔じゃぞ」


 と言うので見せて貰うとやはり和式のままだった。コレって足腰弱い人には辛いんだよな。なので俺は地竜神様に確認をして、洋式便器を土魔法で形作り、設置させて貰った。便座、水タンクには魔力石を利用して、暖か便座と洗浄機能を追加してある。

 コレは今の領都でも領民たちから人気がある便器なのだ。


 そして、地竜神様はそうでも無かったが、この屋敷で働く十人の人たちにはとても感謝された。この人たちは元は魔物だったらしいが、心が優しく魔物としては失格として仲間から迫害されていたのを地竜神様によって救われ、その見た目も人に近い形に遺伝子レベルで変えてもらったそうだ。


 うん、やっぱり地竜神様と勝負しても勝てそうにないな。瞬殺される未来が見えるよ。


「我の使用人たちがこれほど喜ぶとは、礼を言うぞテツ・オウガイよ。さすがはテツジロウの直系の子孫だな。さあ、それでは屋敷の桔梗の間に案内しよう。そこで食事を取りながら、この地の開拓についてなどを話そうではないか。それに、そなた自身の事についてもな……」


 そう意味ありげに笑いながらに地竜神様がいい、自ら桔梗の間に案内してくれた。部屋は土禁だったよ。

 ていうか確信を持って言われたけど、テツジロウさんはやっぱり俺のご先祖様なのな。


 桔梗の間には俺が便器を作ってる間に料理が運ばれていたようで、既に美味そうな匂いが部屋に充満していた。


「さあ、皆のもの座ってくれ。楽しく歓談をしながら我の自慢の使用人たちが作った料理を堪能しよう」


 地竜神様のその言葉に俺たちがいただきますと声に出して言うと、目を細めて喜ぶ。


「テツジロウ以来じゃ。久方ぶりに聞いたな…… さあ、北のぬしに西のぬしよ、そなたらも食べるが良い」


「はい、地竜神様、いただきます」と北のぬし様。

「我があるじ、感謝いたします」と西のぬし様。


 それから食事をされない地竜神様が俺に向かって語りかけてくる。


「我は神でもあるゆえに食事をとる必要がないのでこのまま語らせて貰おう。テツよ、食べながらで良いから聞いてくれ」


 そう言われ俺は目の前の美味い食事を口いっぱいに頬張りながら頷いた。


「フフフ、気に入ってくれて何よりだ。さてと、先ずは西のぬしについて我から謝っておこう。我の自慢の下僕ではあるが見た目だけで決めつけたのは大変よろしくない。よってだ…… 西のぬしにもテツの領民となる事を命じよう。良いな!」


「ハッ! 我があるじの命ずるままに!!」


「ウム。良かろう。そこでだ、テツよ。提案があるのだが。我が自慢の下僕は他に南と東を任せているぬしがおる。その者たちをも見事に従えてみせぬか? 今度は我は干渉はせぬ。それが出来た後には、魔境の地の全てをそなたに委ねても良い」


 俺は口いっぱいに頬張った食べ物をゴクンっと大慌てで飲み込んだ。


「えっ! 全てをって、ダメですよ。地竜神様がお守りしているこの地を僕が任されても結局は大王国のものとなってしまうのですし……」


 と俺は思っていた事を素直に言った。そう、俺は大王国の子爵位である。つまりは大王の意思が魔境は大王国のものだという認識になれば俺の手から離れてしまう事になるのだ。

 そんな事になればこの地を安住の地として集まってくれた領民はもちろん、先に住んでいたハーフの者たちにも顔向けが出来なくなってしまう。


「フフフ、やはりテツジロウの子孫は真面目だな。だが案ずる事はないぞ、テツよ。我は神だと言ったであろう。我が神託を出して大王国に報せようではないか。テツ・オウガイはオウバイ大王国の国民より抜けて、我が使徒にして魔境国の王となるとな。それで大王国の者たちが攻めてきてもわれが神罰を降せば良いだけの事よ。そもそも、オウバイ大王国の祖であるテツジロウとの約定を破ったのは大王国であるからな」


 その約定とは、魔境には大王国の手は入れないという約定だったらしい。それを俺を派遣する事によって破った事になった。つまり、それだけでも神罰に値するが、派遣されてきたのがテツジロウさんの子孫である俺だったので、一度は許そうという地竜神様の温情だった。


「テツならばこの地を悪いようにはすまい。ならばこそそなたに任せてみたい。まあ、我のこの住まいはそのままにして欲しいがな。それと、従えた証としてこの北の主と西の主に名を付けてやってくれぬか? 勿論だが南の主と東の主を従えたときにも名付けてやってくれ」


 名付けって、いきなり難問を言ってきたよ、地竜神様…… 俺に名付けのセンスは欠片も無い! 本人が言うのだから間違いない!


 そこで俺は前世の知識を駆使パクってして名付けさせて貰った。


「それじゃ、北の主様は玄武で、イメージカラーは黒で! 西の主様は白虎で、イメージカラーは白だよ。それでいいかな?」


 俺がそう名付けた時に俺からも二人からも光が出て互いを繋ぎあった。


「ウム! 契約は無事に果たされた! この地竜神が見届け神だ!!」


 その地竜神様の言葉の後に、玄武と白虎から


「うおおーッ! 力が! 力が溢れて!! テツ様、これからはこの玄武、何者からもこの地に住まう領民たちを守って見せます!!」


「くわーっ! コッ、コレはスゲェー! 俺はテツ様の為にいつでも動きますぜっ!!」


 との言葉を貰った。


「フフフ、二人とも真の神獣へと昇華したようだな。コレからはテツをあるじと認めて更なる高みを目指すのだ」


「はい! 我が神よ!!」


 ほえ〜、何だか分からないけど俺まで強くなった気がするのは何でだ? 俺がそう思っていたら地竜神様がその答えを教えてくれた。


 それは……

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