第10話 ママンの魔法だそうです

 ある夜の事である。俺は夢の中でウェバーの訪問を受けていた。


『やあやあ、テツくん、久しぶりだねぇ。やっと君のママンに魔法を教えても良い時期がやってきたよ』


 やっとか。コレでママンも変なコンプレックスを持たずに済むようになるな。俺がそう考えているとウェバーの言葉が続いた。


『アミーレ嬢は魔力を流すことは出来ているからね。後は何の魔法が使えるか教えるだけでいいんだよ。アミーレ嬢が使えるのは結界魔法だ。防音や遮視、物理攻撃、魔法攻撃から身を守るなど多岐に渡るよ。それじゃ、そういう事だから後はテツくん頑張って』


 ちょっと待てーいっ! 俺か? 俺がそれを告げるのか?


『? そうだよ。他に誰かいるかい?』


 くっ! 確かに居ない…… いや、マナミならば良いんじゃないか? 鑑定使えるし。


『ダメだよ〜。まだスキルとして顕現してないんだから』


 そ、そうだった…… しかし、俺がいきなりママンの魔法は結界魔法ですって言うのは可怪しな子供と見られる案件じゃないのか?


『あ〜、それについては大丈夫だと思うよ。テツくん周りの信頼が厚いから』


 褒めても何も出ないぞ、ウェバー。しかし、俺は神様にこんなに偉そうにいってるのだがそれは良いのか?


『ハハハ、大丈夫だよ。信者じゃないんだし、構わないよ』


 ならいいか。それにしてもママンには早く教えてあげたいから起きたら早速だが伝えよう。


『うん、そうしてあげなよ。それじゃ、またね〜』


 軽くそう言ってウェバーは俺の夢から去っていったのだった。


 翌朝である。目覚めても夢の中の出来事を覚えていた俺は待機していた侍女にママンの部屋に行っても良いか確認を取ってもらった。

 ママンの部屋から戻ってきた侍女ヤナが


「テツ様、アミーレ様もテツ様にお会いしたいそうです」


 との返事を貰ってきたので早速俺はママンの部屋に向かった。勿論だが身支度はバッチリと済ませているぞ。男たるもの女性の部屋に向かうのならばパリッとした格好をしておかなくてはな。


 俺は部屋に着いてノックをする。レディの部屋にノックもせずに入るような真似はしないぞ。


 中からママン付きの侍女が扉を開けて直ぐに俺を入れてくれた。


「おはよう、テツ」

「母上、おはようございます」


 二人で仲良く朝の挨拶を交わしてから、俺は早速本題に入った。


「母上、実は昨夜の夢に神様がお越しになりました。そこで母上の使える魔法について教わる事が出来ました。それをお知らせにこんな早朝からやって来たんです」


 俺の言葉にママンがビックリした顔をする。


「テツ、そんな夢を見たのね…… ごめんなさいね、魔法も満足に使えない母で……」


 その後、落ち込むママン。いかん、完全に俺がただ夢を見ただけだと思ってるようだ。違うんだ、ママン! ママンにはちゃんと使える魔法があるんだ!

 俺はそれを何とか伝えようかと思ったのだが、いかんせんまだ七歳の幼児と言っていい年齢である。信じて貰えそうにない……

 そこで俺は子供である事を逆手に取ってお強請ねだりをしてみた。


「そうですね、僕が夢を見ただけかも知れません。でも、母上、試してみては貰えませんか? 夢では神様は母上には結界魔法が使えると仰っておられました。ですので、小さな結界でも良いので試してみて下さい、お願いします」


 俺がそう頭を下げて頼むとママンは困ったような顔をしながらも微笑んで了承してくれた。


「分かったわ、テツ。出来なくても泣かないでね」


 そう言うとママンは両手を少し広げて、


「結界」


 と呟いた。すると、ママンの両手から魔力が出てきて四角の結界が確かに出来上がったのである。良し! これでママンも自分が結界魔法を使えると信じただろう!


「母上! 出来てますよ!?」


 俺は多少芝居がかっているが大きな声を出した。すると、ママンも自分の両手の間にある結界を驚愕の目で見ている。やがて、それに魔力を注ぐのを止めて呆然とするママン。


「は、はじめて、魔法が…… 私にも魔法が……」


 そう呟くと俺の手を取り抱き寄せ、ママンは俺を抱き締めて静かに声を殺して泣き始めた。

 嬉し泣きだろう。劣等感を持っていたママンがコレで少しは自信を持ってくれればと俺は思う。


 この日からママンは魔法の熟練度を上げる為に必死に訓練をした。今のママンが使える結界魔法は、【物理防御】【低級魔法防御】【遮音結界】の三つだ。範囲はママンを中心に半径二メートルぐらい。

 ママンは更に広い範囲、他の結界魔法を身に着けるべく今日も頑張って訓練している。


 今世では魔力を増やすのに年齢は関係ないとウェバーが言っていた。なので、魔法訓練を始める前のママンの魔力は26だったそうだが、現在は訓練によって89になったそうだ。


 メリエルの話では一流と呼ばれる魔法使いで魔力が150~250ぐらいらしいので、ママンもそれを目指しているらしい。


 ちなみにだけど、俺の魔力は既に500に近くなっている。誰にも言ってないけどね。


 いつ追放宣言が出されてもいいように着々と準備を進めているけど、ベン曰く「テツ様が八歳になるまでは大丈夫でしょう」との事だ。

 一度口に出した物事を急に変更したりはしない(出来ない)のが大王一族らしい。何でも神々との約定があるそうだよ。その約定って俺にも適用されるのだろうか? ウェバーは何も言ってなかったけど。


 ベンは産まれたサートにメロメロだが仕事は決して疎かにしない執事だ。俺とママンに支給されている金貨を利用して、俺と話合いを重ねて着実に魔境へとみんなが安全に行けるように手配をしてくれている。

 邪魔してくるであろうメリエルの兄ロドスの思惑を読み解き、その裏をかく為に派手に動くベンはマナミとトゥリに頼んで静かに裏で準備をしていた。


 俺は俺で魔境についてからみんなを守れるように自分自身を更に鍛えている。カナも一緒に鍛えているが、さすがは武術全般に通じているカナだ。またたく間に合戦武闘術を吸収していく。

 正直な俺の感想だけど、今の大王国にカナに勝てる者は居ないと思う。

 

 ロドスもかなりの強者だと聞いているけれども、カナが言うには合戦武闘術を学ぶ前でもロドスには負けない自信があったそうだ。

 但し、そんなカナでも大王家武術指南役のソウチイロウには勝つ自信が無いそうだ。

 何者なんだ? 名前といいカナに勝てないと言わしめる強さといい、転移もしくは転生者か?


 まあ、出会った時に分かるだろうけど表に出てくる事はまず無いらしいので、このまま出会わずに済むなら有り難いと思ってる。



名前:テツ・オウバイ

年齢:七歳(数え年年齢)

性別:男

称号:大王国オウバイの第五王子

位階レベル:0

体質:耐性体質

技能スキル:便利箱・生活魔法・初級、低級、中級属性魔法・合戦武闘術

【身体能力】

体力:89

気力:789

腕力:69

脚力:59

魔力:489

器用:49

【攻・防】

攻撃力:35

防御力:35

武器:無し

防具:無し



【耐性体質】

 羞恥無効(カンスト) 魅惑無効(カンスト) 水治癒魔法無効(カンスト) 光治癒魔法無効(カンスト) 熱無効(カンスト) 薬耐性9 騒音耐性9 病耐性8 火魔法耐性4 風魔法耐性3 光魔法耐性1 闇魔法耐性8 火遁耐性2 水遁耐性5 雷遁耐性3

【便利箱】

 時間停止機能付・容量百立方メートル

【生活魔法】

 着火・飲水・微風・土盛・灯火・黒眼鏡

【初級六属性魔法】

 (火・水・風・土・光・闇)

【低級六・五属性魔法・複合魔法】

 (火・水・風・土・光・闇)

 (氷・雷・影・聖・邪)

【中級六・五属性魔法】

 (火・水・風・土・光・闇)

 (氷・雷・影・聖・邪)

合戦武闘術かっせんぶとうじゅつ

 初伝・中伝・皆伝

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