第5話 魔法だそうです

 俺はまた一つレベルアップした!! それも俺自身が待ち望んでいたレベルアップだっ!!



名前:テツ・オウバイ

年齢:四歳(数え年年齢)

性別:男

称号:大王国オウバイの第五王子

位階レベル:0

体質:耐性体質

技能スキル:便利箱・【生活魔法】

【身体能力】

体力:33

気力:412

腕力:18

脚力:19

魔力:282

器用:13

【攻・防】

攻撃力:5

防御力:6

武器:無し

防具:無し



【耐性体質】

 羞恥無効(カンスト) 魅惑無効(カンスト) 熱耐性5 薬耐性4 騒音耐性4 病耐性3 火魔法耐性1

【便利箱】

 時間停止機能付・容量二十三立方メートル

【生活魔法】

 着火・飲水・微風・土盛


 そう! 魔法だ! 魔法を遂に我が手にしたのだっ!!

 【生活魔法】と侮るなかれ! 着火は魔力の込め方によって、マッチの火から高圧ガスバーナーまでいける(俺だけ)し、飲水は温度調整可能【マイナス五度(何故か凍らない)〜八十五度】な上に水量も魔力の限界までだと凡そ千五百リットルも出せる(俺だけ)のだ。微風もホントのそよ風から台風とはいかないが、スカートをめくるぐらいの強さには出来る優れもの(俺だけ)! 土盛は高さ十センチ〜三十センチほどだが、固さを変えられる(俺だけ)んだ! ホントの土の固さから最高硬度だと多分だけど前世のダイヤモンドクラスだろうと思う。

 コレを魔法と言わずして何を魔法と言おうか!?


 遂に、遂に俺は前世で夢だった魔法使いになれたのだった!! 


 主にメリエルのお陰で。メリエルは三歳の俺が魔力を体中に流せるようになったのを知って、驚きながらも先ずはコレからと生活魔法を教えてくれたのだ。


 その時に俺はメリエルの出した着火にワザと触れて火魔法耐性を身につけたりもした。かなり泣きながら怒られたが……


 前世では三十歳まで童貞じゃないとなれなかった(実際にはなれないのだが……)魔法使いに三歳の後半でなれた俺は有頂天でメリエルからの指導を受けて生活魔法を身につけたのだ。


「テツ様! 天才ですか!? もう四属性の生活魔法を完璧に使いこなせるなんて!!」


 つい昨日に四歳になった俺が、今までに教わった生活魔法をちゃんと使えるようになったとメリエルに言ったら確認しますと言われて住んでる離れ屋敷の庭に来たのだが、そこにはママンも一緒に来ていた。


「すごい! テツ、すごいわっ!?」


 ママンも驚きながら笑顔で俺の頭を撫で撫でしてくれる。メリエルはそれを見て少しだけ嫉妬しているようだが…… 違う恨みを持つんじゃないぞ〜……


 最近はママンとも仲良くなってくれたメリエルは俺を間に挟んで取り合いという事も少なくない。何故こうなった…… 


「さあ、テツ様。それでは今日は光と闇の生活魔法をお教えいたしますね」


 メリエルはママンを見ながらそう言う。そのドヤ顔は止めておくんだ、メリエル。ママンが悲しむ。


「うっ、私には魔法の適性が無いから…… テツ、メリエルの言う事を聞いて頑張ってね。私は邪魔にならないように屋敷に戻っているから」


 ママンはそう言って屋敷に戻っていった。だが、俺は知っている。ママンに魔法の適性がある事を。一般的に知られている属性魔法の適性じゃないってだけで、ちゃんとした指導をすればママンも魔法を使えるようになるのだ。


 だけどまだその時期じゃない…… と夢に出てきたウェバーに言われたから我慢してるけどな。それにしてもウェバーの奴め! 俺を呼んだ時には属性魔法の事しか言わなかったのに、他の魔法があるだとーっ!! 隠していたのは何故だと問い詰めたかったが、ママンの為に我慢したのだ。


 俺が怒ってる雰囲気なのを察して『そんな状態なら教えるの止めようかな〜』なんて脅してきやがったからな……

 だがいつかリベンジしてやる。


「はい、それじゃテツ様、先ずは光の生活魔法の灯火を覚えましょう」


 そう言ってメリエルは実際に灯火を使用してくれた。昼間だからそれほど明るい訳じゃないがメリエルは灯火の色を変えられるみたいで、青い光を出してくれたので俺にもよく見えた。


「メリー、凄い!」


 素直に光の色を変えて出せるのは凄いと思ったのでそう言うと、


「ああ〜、その驚いたお顔もまた…… ジュルリっ…… お褒めいただきまして有難うございます。でも、テツ様なら直ぐに出来ますよ!」


 と前半はムニャムニャ口元で言ってたので聞き取れなかったが、後半は俺への励ましだったので俺は張り切った。

 …… …… …… 張り切りすぎた……


「テツ様!! ま、眩しいです! 早くその灯火を消して下さい! 目、目が〜……!?」


 俺は慌てて魔力を遮断して前世のLEDを見本にした灯火を消した。


「ごめんなさい、メリー……」


 俺はメリエルに素直に謝罪したのだが、メリエルから返ってきたのは、


「テ・ン・サ・イッ!!!? この方を天才と言わずして誰を天才と言うのでしょうっ!! 私などは大王国でも五本の指に入るなどと言われてましたが、テツ様に比べたら赤子同然!? 上には上がいる事を、本日、まさに思い至りましたっ!! 今まで自惚れててスミマセンでしたーっ!!」


 という言葉と共に俺に土下座している姿だった…… いや、ちょっと待って、まだ片手で目を抑えてるし、土下座するのは俺の方だと思うのだが。


「メリー、メリー、大丈夫? 目、痛い? 痛いの痛いの飛んでけーっ!?」


 俺は魔力に治れという気持ちを込めてメリエルの目に流した。すると、


「ハッ! 失明した筈なのに、治ってる!? まだ治癒魔法はお教えしてませんよね? テッ! 天才どころじゃないわっ!! テツ様は神です! ゴッドオブゴッドですっ!!」


 何故か俺を神呼ばわりするメリエル。えっ!? し、失明してたのかっ!? 治って良かったけど、その状態で俺を褒め称えてたのはどうかと思うのだが。


「こうしてはいられません! テツ様には闇の生活魔法もお見せいたしますね!」


 ゴッドオブゴッドとか大層な二つ名を俺につけながらメリエルは闇の生活魔法を見せてくれた。

 で、何かと思うと前世のサングラスだったのには笑いそうになったのだが……


「テツ様の灯火を肉眼で見る前にこの闇の生活魔法を使用していれば良かったのですが…… けれどもソレでテツ様の神のような魔法の才を知る事が出来たので結果オーライですね!!」


 いや、オーライじゃないから。


「メリー、痛いのゴメンね。もうしないから」


 俺は再度謝ったのだが、メリエルはハウッ! と叫ぶと後ろを向いてしまった。


 やっぱり内心で怒ってたんだろうなぁ…… 俺はそう思っていたのだが……


【後ろを向いたメリエルの内心】

『ダメよ〜、テツ様〜、そんな上目遣いで謝られるなんてっ!! ついに鼻血が出てきてしまったわ!! 私も淑女の端くれですからそんな姿をテツ様にお見せする訳にはいかないわ! 根性よ、根性で今すぐ鼻血を止めるのよ、私!!』


 

 そう内心で語ったメリエルは根性を入れる為に力を込めてしまい、いつまでも鼻血が止まらないという悪循環に陥っていたのだった……


 十五分後、やっと内心の怒りと折り合いをつけたのだろう。メリエルは俺の方を向いて蒼白い顔で言った。


「テツ様…… 本当は本日の内に初級属性魔法をお教えしたかったのですが、ちょっと体調を崩してしまいました…… 今から少し休息を頂いてもよろしいでしょうか?」


 そう言いながらフラッとよろけたメリエルに俺は慌てて駆け寄った。


「メリー、大丈夫? 休んで、休んでね! ねっ!」


 俺の拙い力では支える事も出来ないが、それでも頭から倒れるのを何とか防ぐ事に成功した。その様子を見ていたのだろう、侍女の一人であるカナが駆け寄ってきて、メリエルの様子を見て


「テツ様、大丈夫ですよ。私が侍女長をお部屋に連れて行きます。テツ様も一緒にお屋敷に入りましょう」


 そう言いながらメリエルを抱きかかえて立ち上がった。

 カナって細身なのに力持ちなんだなと思って目を点にしてしまったよ。


「フフ、テツ様。八歳になられましたら私とも訓練をしましょうね」


 ポカーンと見上げていた俺にカナはそう言ってきたので俺は頷いたよ。


 こうして、その日の魔法訓練は終わった。後日に聞いた話である。カナともう一人の侍女であるトゥーリが話していたのだが、


「ねぇ、トゥーリ、侍女長ったらテツ様に上目遣いで謝罪されて、そのあまりのお可愛らしい様子に鼻血が止まらなくなったんですって!」


「えっ! あのときの貧血ってソレが理由だったの…… 全く、メリエルったら! 私から一言物申しておくわ!」


 という会話が寝ているフリをしていた俺の耳に届いて、俺は怒ってた訳じゃないんだとホッとしたのだった。

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