第24話 〇〇にあらずんば人にあらず
華音と遊びに行く約束をして、なら負けて行くより勝って行きたいよなと臨んだ準決勝。
相手も勝てば全国大会となると気合の入り方が違うようで、それなりに手こずったが勝利の女神の応援の賜か普通に競り勝つ事が出来た。
「これで全国へのキップは手に入れたな。お前のおかげだ羅怜央」
「バーカここからが本番なんだ、全国取ったときに今の言葉言ってくれ。なんにせよ次のアルファポリス戦が良い試金石になるな」
「まあ今の調子なら勝っちゃうかもな!」
「バッカ勝っちゃうかもじゃなくて勝つんだよ」
「「ワッハッハッハ」」
「馬鹿野郎、相手の方が格上なんだ!浮かれてたらあっさりやられちまうぞ!」
刈り上げゴリラが浮かれる俺たちを窘める。
「でもコーチ、今の羅怜央は絶好調です。今のこいつを止められるのは名路羽の山田くらいのものです」
「アルファポリスももちろん強いですけど、個として見たら羅怜央の方が数段上です。勝てますって!」
「ワッハッハ仁くん、もっと言い給え。もっとだ!」
「「ワーッハッハッハッハー」」
「駄目だこいつら……口で言っても聴かないな……一度痛い目を見たほうがいいだろう。幸い今回は負けても全国には行ける。いい機会だ……好きにやれ」
刈り上げゴリラも心配性だな胃薬要るか?
「まあ見てなって、じゃあお先に帰りますねー。仁、帰ろーぜ」
「りょうかーい、ではコーチお先に失礼します」
「ふぅ……おう気を付けて帰れよ……」
「お疲れ様でーす!!」
駅までの道を仁とふたりで歩きながら、
「しかし地区大会決勝までトントン拍子で来すぎて拍子抜けだな。去年は大苦戦して準決勝まで行ったのに」
「まあその前に地獄の練習メニューを組んで追い込んだ俺とコーチのおかげだね!」
「馬鹿野郎!アレのせいで俺は酷い目にあったんだからな!」
「安里さんの件ね」
「うるせーよ……」
くそ……嫌なこと思い出させる……
「そういえば、聞いたか?」
「何をだよ……」
「安里さん、カレシが出来たってさ」
「そうか……」
まあ、あいつは客観的に見て可愛いから男が放っておかないよな。
「それは……良かったんじゃないの?あいつは誰かが支えてないと駄目なやつだから」
「おっ今は「氷姫」がいるから未練ないって?」
「なんでここで華音の名前が出るんだよ!」
「まだそんなこと言ってんの?広宮さんの気持ちは分かってるよね?」
「ぐっ……何のことだよ……」
こいつ答え難いことズバズバ突いてきやがって……
「まっ、人さまの恋愛だから?あんまり言いたくないんだけど、広宮さんが余りに健気だからさ」
「あれは……健気とかじゃなくて……バイトだよ」
「本気で言ってんの?」
「悪い、今は勘弁してくれ。いろいろ俺なりに思うところがあるんだ……」
「たくっ、どうせなんだかんだ言っても、安里さんのときの事を気にしてんだろ?」
「いよなのことは気にしてねーよ」
何言ってんだ……さっきの話聞いてないのか?
「安里さんのことはね、でも安里さんのした事は気にしてるんだろ?」
「……何のことだよ」
「浮気……されたことまだ気にしてるんだろ?」
「チッ」
くそっ今日のこいつはホントにズバズバ来んな。
「安里さんがしたように広宮さんもするかもって?」
分かってるよ、華音はそんな事するようなやつじゃないって、でもいよなだってそんな事するやつとは思わなかった。
華音の気持ちは流石に俺だって察せられる。けどいよなも浮気をしたんだから、という思いがどうしても出てきてしまう。
こないだの遊びの誘いだって、華音は期待してるかもしれないが、こっちは下心が全く無いから誘えたまである。
「頭では分かってるんだがな……勘弁してくれ」
「まあ、羅怜央がちゃんと認識してるなら俺からはこれ以上は言わないさ。でも、いい子だよ広宮さんは」
「ああ、そうだな……」
ああ……「呪い」は根深いな……
仁と別れてひとり家路につく。いらん話をしたから帰り着く前に平常心に戻らないと……
とりあえずこないだ仁から肉の対価に徴収した、ムフフ本の事でも考えるか……うんあれは良いものだ。
仁のセンスに脱帽しながら何とか平常心を取り戻す。
そうなると自然次の決勝戦の事を考える。
去年はチームとしては手も足も出ない負け方をしたが、個人としては全然負けてないと今でも思ってる。
そして今年の俺は絶好調だ、必ずリベンジを果たす。
相手は、チームとしては名路羽高校を上回るかも知れない相手だ。いつもみたいに簡単には掌握出来ないだろう。
だけど俺なら出来る、そう思えるだけの練習はしてきたつもりだし自信はある。しかもなんたって今絶好調だし?
よし完全に平常心を取り戻した。華音だろうがいよなだろうがどっからでも来やがれ……ウソです。勘弁してください。
などとウダウダしてたら知らないうちにお家に到着。
……入りづれぇ。くそ、仁のせいだどうしてくれる。
今の御時世に家の前で右往左往なんかしてたら、通報されてしまうので早く入らなきゃいけないん……だけどね?えーい儘よ!
「ただいまー!」
「あら羅怜央くん?おかえりなさい。決勝進出と全国大会出場おめでとうございます」
「おう、ありがとうございます?」
「なぜ疑問形です?」
「ごめん、なんとなくな……メシまだだよな?コーヒー淹れてくるわ。華音も飲むか?」
「?ええ、いただきます……」
「じゃあ荷物を片したらすぐ淹れるわ」
逃げるように自室へ向かう。
なにやってんだ俺は……
〜 広宮 華音 Side 〜
淹れて頂いたコーヒーを飲みながら思案にくれます。
なんだか羅怜央くんの様子が変ですね?帰宅していきなり大声出しますし、会話もなんだか変ですし、微妙に目を逸らされます。
まるで何かやましいことが有るようです。……はっ!まさか浮気?……いえ安里さんの浮気で破局した羅怜央くんに限ってそれは有り得ません。
というかそもそも悲しいことに、まだ私達はお付き合いをしてるわけではありません。ですので浮気が成立しません。
調査の結果、安里さんは新しいカレシさんが出来たと分かりました、なので復縁の可能性は除外してもいいかと思います。
あと残る可能性は……まさかここに来て新しい女の人の出現ですか?
くっさすが世界に羽ばたく才能を有してる羅怜央くんです、次から次へと女の人が出てきますね。
ここはさりげない会話で探りを入れるべきですね。
「羅怜央くん?」
「なんだ?」
「何か私に隠し事がありませんか?」
うん、あまりにも自然な会話の入りですね。
「うっ!そんなものないっないし!」
うわぁ、分かりやすいくらいの不自然さです。これは何かありますね。
続いて巧みな話術で情報を引き出しましょう。
「私には全部分かっていますから、今なら怒らないので言って下さい」
怖いくらいの言葉の巧みさです、これなら会話を誘導されているとは気づかないでしょう。
「ななな何のことだよ?俺はしらっ知らないぞ?」
ほう?しらを切りますか、いいでしょう……
「新しい女のことです!私には分かっているんですよ!しらばっくれず白状して下さい!!」
あれ?なんで私はこんな直接的な事を言っているのでしょう?
「新しい女?え?何のことだよ」
「しらばっくれんないで下さい!私にはまるっとお見通しなんですから!」
「いや、ごめん、ホントに意味わかんない」
「またそうやって誤魔化しますか、さっきから様子が変だったのは新しい女の人が出来たからですよね?分かってるんですから!」
「あーそれかー変な誤解をさせたのは謝るわ。けど、生憎というか幸いというか、新しいカノジョなんて居ねーよ。てかなんで華音が怒るよ?」
「怒っていません!私を怒らせたら大したものです」
私は怒っていません!ただ真実を追究してるだけです。
「さぁ怒っていませんから。ホントに怒っていませんからホントのことを言ってください」
「いやだから本当に新しいカノジョなんて居ねーから……」
「ホントにですか?」
「マジマジ」
「……ほんとに?」
「ホントだって」
「分かりました……信じてあげます」
「ありがとう……ってなんだこの会話?」
私は最初から信じていましたよ?信じていましたがただただ真実を追究するために問い質しただけです。
「ではお夕飯の用意をやっちゃいますから待っててくださいね♪」
「ああ、はい……何だったんだいったい……」
〜 根都 羅怜央 Side 〜
一連の意味不明なやり取りのあとから、何故か華音の機嫌がすこぶる良くなった。
「羅怜央くん、おかわりは要りますか♪」
「いやもう腹いっぱいだから!何杯食わせんだ!」
「そうですか?それは残念ですね……」
「では羅怜央くん食後のコーヒーをお願い出来ますか♫」
なんか会話に音符が付いてるし……
「それで、決勝戦の相手は難敵ですけど、対策などは考えてますか?」
「うんにゃなにも考えてない」
俺の返事に驚いた顔をし眉をしかめながら、
「相手はアルファポリス学園ですよね?」
「ああ、大丈夫だ。今俺絶好調だし」
「差し出がましいようですが、もう少し警戒したほうがいいと思いますよ?相手は腐っても全国二位です」
「まぁまぁ、何とかするから見てなって」
「そう……ですか」
「それよりも俺も考えるけど、決勝が終わったらどこに行きたいか考えときな?」
「はい、考えておきますね……」
何故か今日の華音は終始浮かない顔だった。
◇◆◇◆
お読みいただきありがとうございます。
決勝戦直前です。
さすがに五行では終わらないと思います。
しかし羅怜央くんが自信満々で心強いですね。
近頃ラブコメさんってどんなものだったか思い出せないんです。私ラブコメさんを書けてます?
次回も読んでいただけると嬉しいです。
良ければ☆や❤、フォローもいただけるとさらに嬉しいです。
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