第29話 これが夢なら醒めないで…… ラブコメ注意
また不穏な話題が飛び出したが、概ね和やかに昼食を終え。華音たっての希望で「ニバンセンジ」再搭乗、あの恐怖が再登場、降りたときにはこの惨状……なんか韻を踏んでみた。イャァ!チェケラ!
現実逃避してるうちに「ニバンセンジ」を終わらせて地上へ帰還……
「生きてるって素晴らしい……」
「大袈裟ですね、楽しくないですか?」
「いやあ絶叫マシン嫌いじゃないよ?嫌いじゃないけど一日二回も乗りたいとは思わないかなーって思うんだ」
「もう一回だめですか?」
「今の話聞いてた?一日三回も乗りたいとは思わないかなーって思うんだわ!」
何とか恐怖の連チャン地獄を回避して、別の場所に行こうと促す。華音も渋々ながらついてきてくれる。
そして、偶然通りかかった(ように見せた)お化け屋敷の前で華音が分かりやすく動揺を示した。
「おおお化け屋敷ですか、なかなか趣がありますねー。ささあ次に行ってみましょう」
あからさまにこの場を離れようとしている華音の肩をつかみ、歩みを止めさせる。
「これは華音さん、確かに趣がある建物ですねー。入ってみましょうか?」
「ホントに趣がある建物ですねー、そういう建物は外から鑑賞したほうが良いと思うんですよ?羅怜央さん……」
漫画のような冷や汗をかきながら目線を俺から逸らそうとしている。
「いえいえ、華音さんそんなこと仰らずに……入るぞ華音」
「いーやーでーすー」
「まあまあ華音さん、入るだけだからまあまあまあ」
嫌がる華音をなだめすかして、お化け屋敷ヘレッツゴー。
このお化け屋敷も遊園地の売りのひとつで、病院をモチーフにした結構長めのウォークスルー型になっていてかなり怖いと評判のものだ。
以前いよなと来た時は改装中で体験出来なかったので、今回はとても楽しみにしていたのである。
「おーすげぇーほら華音あれ」
「きゃあああああー!いやいやいやー!!むりむりむり!!な゙、なんですか!見ませんよ私は見ませんからね!?」
噂に違わずの怖さに華音も珍しく大声をあげて喜んでくれている。さっきの「ニバンセンジ」の仕返しではない、ないったらない。
「きゃあああああー!今なんか居ました!羅怜央くんも見ましたよね!?いやーーー」
「いやいや、何もなかったよ?」
「うそうそうそうそ!嘘です居ました、居ましたーー!」
「そういや噂ではここって出るってさ」
「いやーーー!嘘ですうそーー」
うわぁー怖いなー楽しいなー。あっ泣き出した……
「生きてるって素晴らしい……ぐすん」
「大袈裟だな、楽しくないか?」
「羅怜央くんのイジワル……」
いやー、堪能したわー怖かったー。
あとまさか華音がここまで怖いもの苦手とは……悪いとは思っても可愛いからついついイジメてしまった。反省、反省。
「悪い悪い、ジュース奢るから許せって」
「知りません!ふんです」
拗ねてしまったか……なんだこの可愛いの?
「ヒョイ……てい」
「あぅ」
脈絡なくベレー帽を除けて頭を撫でる、
「なーでなーで」
「あうぅ」
やっぱり撫で心地良いな……
「知りません……」
うーん機嫌直してくんないかな?ついでだからもうちょい撫でとこ。
「なーでなーでなーで」
「あうぅ、やーめーてーくーだーさーいー」
やめてくれって言ってる割には頭を擦り付けてくるんだよなぁ。
「うん分かった、ヒョイッと」
「あっ……羅怜央くんイケずです……」
「ごめんて、許してくれるか?」
「もう……羅怜央くんのバカ」
「…………」
「…………」
なんかラブコメチックに見つめ合っていると、背後から舌打ちが聞こえてくる。
振り返ってみると、さっきの昭和テンプレくんを初めとした男性陣が、刺すような視線を寄越してくれてる。ドヤ顔で煽っとこ。
あと、家族連れの奥さま方が「若いって良いわー」とあらあらまあまあして、カップルのお姉さん達からの生暖かい眼差しも頂いてます。あざす!
「あうあう……」
華音が恥ずかしさの上限を突破してしまって顔を真っ赤にしてフリーズしてしまってる。
俺はいよなとのラブラブバカップルで、これらの視線には慣れてんだよね。普通のメンタルであいつとバカップルやってられなかったからね!
「さてこのまま放置でも面白いけど……華音」
「あうぅぅ……ハッ、はい!」
よし、再起動したな?では、
「行くぞ!」
華音の手を握って包囲を脱出。その際に家族連れの旦那さんとカップルのお兄さんから、サムズアップを頂きました。あざーす
〜 広宮 華音 Side 〜
あうぅ周りから見られてましたぁ恥ずかしいです。
しかしそれはそれとして、今日の羅怜央くんはなんと言いますかいつもより距離を感じないというか、いつもある心の壁が無いと言いますか、端的に言って大変積極的です。
どうしたのでしょう?何か心境の変化でもあったのでしょうか。
まあそのせいでとても怖い思いもしましたけどね。でもそのおかげで、羅怜央くんに存分にくっつけましたから痛し痒しです。
そして今現在もなんと……手を繋ぎながら歩いてます!ホントにどうしたのでしょう?今から槍が降ってくるのですか?全部受け止めますよ?どんと来いです!
真面目に考えるに、今まで羅怜央くんに感じていたカベや距離は、安里さんに裏切られた羅怜央くんの防衛本能が働いたのではないかと愚考します。
それが何かを切っ掛けにして、その防衛本能を鎮静化させたのが今の羅怜央くんなのでは?
心の壁を取っ払ったのが今の羅怜央くんなら、とんだ天然ジゴロです!私をドキドキさせて(恐怖です)はらはらさせて(恐怖です)泣かせるんですもの(恐怖です)
そんなことされたら、いつも以上に意識しちゃいます(吊り橋効果です)
いいでしょうそういう事なら私も女です!受けて立ちましょう。やってやりますよ、何をするかはまだ具体的には決めてませんがやりますとも!
とりあえず手を繋いでることはもうしばらく黙っていましょう……
〜 根都 羅怜央 Side 〜
さて勢いで手を繋いだがいつ離そうか……華音は繋いだ手をブンブン振って嬉しそうにしてるので、多分こいつからは言ってこないよなぁ。
「さて、次のリクエストあるか?さっき怖がらせたから絶叫系でも甘んじて受けるぞ?」
「怖がってないです。怖がってないですけど次はフリーフォールに乗りたいです!」
強がるなぁ。それなら今この遊園地に有る、もう一個のお化け屋敷に連れて行ったやろうか?
実は季節外れのホラー企画をやっててもう一個期間限定でお化け屋敷があるんだよね。
こっちはさっきの分かりやすい「ウォークスルー型」とは違って「サウンド&シアター型」のお化け屋敷になっているから黙ってたらワンチャンバレないかも?無理か?……まあ今回はこれくらいで許してやろう。
「はいはい承りましたよお姫さま」
「くすくす、エスコートよろしくお願いしますね、王さま?」
その後もフリーフォールの二回目に乗る乗らないでひと悶着あったり、ゴーカートでレースして係員さんに怒られたり、昭和テンプレくんと再度の接触があったりとドタバタしたものとなった……しかし、あいつどこまで昭和なんだ?侮れないやつ……
大分空も赤くなってきて、遊園地の締めに乗るのならやっぱり観覧車でしょ?と見解が一致し平和裏に観覧車の列に並ぶ。同じ事を考えている人は多いみたいで結構長めの列になっている。
乗り込んでちょっと無言、居心地悪かったのか華音が話を切り出す、
「今日は楽しかったです、連れてきてくれてありがとうございます」
「いや、いつものお礼だから。華音が楽しんてくれてこっちも嬉しいよ」
「怖い思いもしましたけどね」
「大袈裟だなー。ジェットコースターよりマシじゃん……」
「えー楽しくなかったですか?ジェットコースター」
「いやいや、楽しかったよ?一回で十分だったけどな!」
「ジェットコースターは回数こなしてこそでしょう?」
「なんだ?そのなぞ理論?」
「くすくすくす」
「…………」
「…………」
また沈黙……ちょっと外の景色を眺めていたら、
「今日の羅怜央くんいつもとちょっと違ってました」
「ん?どうした急に?」
「あっ別に悪い意味とか怒ってるとかではないんですよ?ただ、ちょっとイジワルだったり、積極的だったりしていつもと違うなーと思いまして……」
ありゃま、自分じゃ気づかなかったな、
「あー……そんなに表に出てたか……嫌だったか?」
「いいえ、そんな事はなかったですよ?ただ不思議だっただけです」
まあ華音も無関係ってわけでもないし、ちと恥ずかしいが言ってもいいかもな……
「ちょっと……話をしてもいいかな?」
「はい、お聞きします」
「こないだ、ちょっとした用でいよなが俺に会いに来たんだ」
「それは」
「ああ、別に復縁を迫ってとかそんなんじゃないから。ただ、下司野……いよなの浮気相手な?のことでちょっとな……内容はまあ今の話とは関係ないから割愛するけど」
「まあその時にあいつすげーいい笑顔……付き合ってて仲良かった頃によく見た顔を見せたんだわ」
「お前も見たと思うけど、最後にあいつに会ったとき、俺との話をあんな顔でしてたあいつがさ、すげぇいい笑顔で話すんだ……その時思ったんだ、ああ、これで全部終わったんだってさ」
「羅怜央くん……」
「もうあいつにとって俺も下司野も過ぎ去った過去なんだ……踏ん切りつけたんだって思ったら、フッと心が軽くなった。心の重荷が取れたような?」
「実はいよなって俺の初恋なんだわ……だから俺の恋愛事の殆どにあいつが絡んでる。つまり恋愛関係で何かを思い出すたびあいつが出てくる……俺はそれを「呪い」だとあの日から思ってた……」
「でも、あいつの笑顔を見たときそれじゃあ駄目だと思ったんだ。俺もあいつのことを「呪い」じゃなくて「想い出」に変えなきゃ、踏ん切りつけなきゃってな」
「んー、言葉にするのは難しいけどそういう想いが働いて素の感情が出たんだろうな……って話してみると失礼な話だな、華音に対してもいよなのフィルターを通して話したり接したりしていたわけだからな。ごめんな?」
「それは……お気になさらず。あんなことがあった後です、いろいろ思うところもあって当然です」
「ん、ありがとうな。まあそんなわけであれが俺の素に近い性格になるわけだ、幻滅しなかったか?」
「くすくす、ちょっとイジワルで困りましたけど、とても素敵でしたよ?」
とても素敵と来ましたか……こいつも結構明け透けだよなぁ。
「私も……お話ししてもいいですか?」
〜 広宮 華音 Side 〜
羅怜央くんの想いが……溢れて見えます……
思った通り安里さんが羅怜央くんの初恋の人で、その事は多分ずっと羅怜央くんの胸に残り続けるのでしょう。
私もこの想いは、たとえこの恋が破れても残り続けるだろうからよく分かります。
そのうえで羅怜央くんが前向きになってくれたのがとてもうれしいです。
そして今です!今このタイミングで行くべきです!なんか行ける気がします!
「私も……お話ししてもいいですか?」
「私が羅怜央くんを初めて知「ごめんちょっといいか?」なんです?」
話しの出鼻を挫かれました。
「華音の言おうとしている事、多分俺も分かっている……と思う。その想いは俺にはとても嬉しいことで幸せなことなんだろうと思う……でも踏ん切りを付けたと言っても、まだ割り切れないところもあるんだ」
「だからその話の続きは少しだけ待ってくれないか?」
羅怜央くん……気づいて……いたんですね。
待ちます……待ちますから、これが夢なら醒めないで下さい……こんなに嬉しいことはないんです……私の想いが幸せなことと言ってくれた……嬉しいことと言ってくれた。
私の頬を一筋の涙が伝って落ちました……
だからお願いします、これが夢なら醒めないで……
◇◆◇◆
お読みいただきありがとうございます。
ある意味告白回です。
この話だけ読めば恋愛小説ぽくって、
私の作品とは思えないくらいです(笑)
ラブコメさんが今までの鬱憤を晴らすため大ハッスルしてしまいました。なのでラブコメ注意の注意喚起をしました。
次回も読んでいただけると嬉しいです。
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