第30話 羞恥とは大体後からやって来る

 

 勢いでなんかすげぇこっ恥ずかしい事を言ったような気がする……


『華音の言おうとしている事、多分俺も分かっている……と思う。その想いは俺にはとても嬉しいことで幸せなことなんだろうと思う───』


うきゃー!恥ずか死ぬー!!


『だからその話の続きは少しだけ待ってくれないか?』


 なにイケメンムーブかましてんだこいつ!キモッ!キモいわっ!うがー!

 ハァハァハァハァ……やばいこれはやばすぎる……

もし仁のやつにでも知られたらあいつが笑い死ぬ……


 遊園地からの帰り道、冷静になってみると大変恥ずかしくなってお互いの顔がまともに見れなかった。

 俺は恥ずか死ぬ状態だし、華音は華音で乙女の顔でこっちをチラチラ見て、目が合うと真っ赤になって慌てて逸らす。

 これを華音の家まで続けるんだぜ?会話がまばらなのも手伝って普通なら気まずい空気になるはずが、やたら空気が甘いし沈黙が生温いしで胸やけしそう……


「あーと……着いたな……」


「……はい、着きましたね……」


「えーと……自分で言っといて何だけど……出来れば普段通りに接したいし接してほしいんだが……」


「そうですよね。私もなにも話してませんし、羅怜央くんもなにも言ってません!」


「うんその通りなんだけど、だけどぉ、言い方ぁ」


 しかし、 こっちの言いたい事は理解してくれたようだから、もう逃げよう……逃げ帰ろう。


「じゃあ今日はありがとうな?楽しかったよ」


「こちらこそありがとうございます。色んな意味で」


「勘弁してくれ!頼むから!」


「くすくす、では今日の件はここまでということで。私も楽しかったです、また行きましょう」


「はぁー、ああまた行こうな。そうだな機会があったら仁たちと一緒に行くのも良いかもな」


俺の提案を受けて胸の前でポンと手を叩き、


「まあ!それは素敵ですね。沙織ちゃんたちとお出かけするなら、お弁当を持っていける所にも行きたいです」


「ああ屋外で食べられる所かぁ。それなら暖かくなってからかな?」


「そうですね、暖かくなってからも行きたいですね。でもその前にただのお出かけもしたいです」


おぉグイグイ来るなぁ。


「そだな、どっか探してみるわ」


「はい!」


「じゃあ帰るな、おやすみ」


「はい、おやすみなさい。気を付けて帰ってくださいね」


 華音が門の中に入るのを見送って踵を返す。


「はぁー大分寒くなってきたな……まあ顔が冷えて丁度良いかもな」


 もう冬に片足突っ込んだ寒さを感じ、独り言ちながら家路につく。

 さて、今日は久し振りに独りの夕食だ。このまま真っ直ぐ家に帰るのも芸が無い、もう一回駅前に戻ってラーメンでも食って帰るか。


 駅前の以前までよく行ってたラーメン屋で、豚骨ラーメンを堪能した。久し振りだからかメチャ美味い……たまにはこういうジャンクなものを食べるのもいいな。

 近頃は華音の作る食事に胃袋を掴まれて、外食をしたいなんて思わなくなっていた。

 だってあいつの作るメシ美味いんだもんさ。レパートリーも豊富でバラエティに富んでるし。


 そういえば……考えてみたら、最近は華音と一緒に食事をしない日のほうが珍しくなってきてるな。

 あいつが根都家に居るのがいつのまにか自然になってきて、たまにある華音が居ない日とか違和感感じるまであるしな。

 華音にある意味で分かりやすく好意を示されて、それをのらりくらりはぐらかすっていうぬるま湯みたいな関係が心地良い。こういうのも絆されるって言うのかね?


「あー何気にあいつのこと考えてるわー。これはやっぱりなんかねー?」


 観覧車であんな事言ったばっかりの今日の今日だから、そりゃあまあ華音の事を考えるよねって誰に言い訳してんだ俺は……


はぁ帰ろ……





〜 広宮 華音 Side 〜



「ブクブクブクブクー!ブクブクブクーぷはぁっ!」


 あまりの嬉し恥ずかしさについつい大きな声が出てしまうのを、お風呂の湯船に潜って誤魔化してます。


 今日のデートの事を、特に観覧車の中の事を思い出すと……あっだめ、またにやけちゃうキャー!


『華音の言おうとしている事、多分俺も分かっている……と思う。その想いは俺にはとても嬉しいことで幸せなことなんだろうと思う────────』


 これは取り様によっては告白と受け取ってもよいのでは?と言うか実質告白ですよね?告白だと受け取りましょう。

キャーキャー!ついについにつ・い・に、羅怜央くんに告白されました(されてません)!!


『だからその話の続きは少しだけ待ってくれないか?』


 まあ、待ったが掛かったんですけどね……でもそれも仕方ないことです。

 付き合ってるカノジョさんが他の方と浮気する、そんな経験をして何も思わない人なんていません。もしかしたら女性不信を起こすまで有り得ました。

 そうはならず羅怜央くんからしたらいきなり現れた私に対して、誠意ある紳士的な対応をしてくれるくらい心が強く優しい人です。

 その人が待って欲しいと言うのですから、それはそれ相応の理由があっての事なのです。


 そして私はカノジョ持ちの男性に、半年以上も恋をした諦めの悪い女です。

 つまり私はいつでもどんと来いということです!



 しかしそれはそれとして私としましては、クリスマスを好きな人とステディな関係で迎えたいという乙女心もあるわけでして……

 羅怜央くんの心情を考慮しつつ、私の乙女心を成就させるために暗躍しましょう。フフフフフッ


 なのでこれからの行動指針としては今まで通り外堀を埋めながら、どうせ私の気持ちもバレているので積極的にアプローチを掛けることにいたしましょう。そうしましょう!


 行動指針が決まったのなら、明日から実行しますよ!イケイケドンドンです!



羅怜央くん覚悟してくださいね?





◇◆◇◆


お読みいただきありがとうございます。


すみません、なんか短いです。

これ以上続けても羅怜央くんが恥ずか死ぬか、華音さんがキャーキャー言ってるだけになりそうなので……


次回までには多分落ち着いてると思いますのでご勘弁ください。



次回も読んでいただけると嬉しいです。




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